14・名前を呼んで、抱き締めて、キスをして
暗闇…どこまでも続く暗闇…
僕の腕の中には、大切な…大切な人が…ぴくりとも動く事無く静かに目を閉じている。
もお…動かないの…?
何もいってくれないの…?
僕がそっと口付けても、何も反応しない…
「ねぇ…なんで動かないの…?いつもみたいに、僕の名前を呼んで、抱き締めて、キスをして…?」
僕がぎゅうと抱き締めても、だらり、と落ちた両の腕は動く事は無い。
僕の頬を伝う涙が、その白い頬にぽたぽたと落ちる。
でも…動かない…動かないよ………
「おきたさん…おきたさん…ねぇ、おきて?そおご…?」
僕がひっくひっくとしゃくりあげても、その目は開く事は無い…
「…う―っ…そおごぉ―――――!!」
「…なんでぃ…まだ寝てねぇのかぃ新八ィ…俺ァ、今さっき寝入った所だぜ………?」
しぱしぱと薄目を開けて、そおごがもんくを言ってくる。
「だって…ねむれないんらもん…」
僕がぐすぐすと鼻をすすると、しぶしぶ起き上がって、僕の頭をぽんぽんと撫でる。
「あんだけ酒飲んでんのに寝れねぇのかぃ?新八ァ結構酒強いなぁ。」
「…ろきろきしてねれないよぅ…おふとんかぶりゅとあついんらもん………」
僕がぎゅう、と抱きつくと、ぽんぽん、と背中をたたいてくれる。
「ああもう、呂律がまわってねぇじゃねぇか。そんなに酔ってんなら、なお眠っちまった方が良いでさぁ。布団は暑いんなら腹にだけ掛けときゃァ良いから、ほら、横になりなせぇ。」
よしよし、ってしながら僕を寝かせようとする。なんら―?今日は優しいろ…?
「やら――!もっとぎゅってするぅ―――!!そおごつめたくてきもちいの。ぎゅ―――てして?」
「しっ…新八君…?やっぱり早く寝なせぇ…このままじゃ俺がもたねぇや…こんな酔った勢いなんざダメでさぁ…!!」
僕がそおごの顔を覗き込むと、顔がまっかになった。えへへ…かわいい…
でも…ちょっとヤダなっ………
「そおご、ちゃんと名前をよんで?新八君なんてやだよぅ…」
「…しんぱちぃ…?」
えへへ、よかった。
しんぱちぃ、って呼ばれるのすき。
「ね、ぎゅってして?」
そおごがぎゅってしてくれる。あったかい…えへへ、良かった―!
あったかい胸にすりすりしてると、えっちなきぶんになってきたよ…
「ね、そおごちゅうしよ?」
きゅっ、て目をつぶって、ん―――ってする。
「しっ…新八ィ…良いんですかぃ…?イヤイヤイヤ、酔ってる時にそんな事ァ出来ねぇよ。ダメだろ、そりゃぁ人として!…イヤ、でも新八に恥かかせんのは俺の主義に反するぜぃ…きっ…きっすだけなら良いですかねぇ………」
「……グ―――――…………」
「しっ…新八ィ…?…………寝ていやがる…イヤ、今度は俺が寝れねぇでさぁ!!ちょっ、新八ィ!!!!!………寝やすかねぇ……………」
しっかりつかまって幸せそうにすやすや眠る恋人を見つめたらなにも出来る訳も無く、ただ抱き締めて一緒に眠るしかなかった………
END
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