※血の飛び散る表現が出てきます。苦手な方は気を付けて下さい!!
17.痛いはずの傷
ここ数日攘夷浪士の動きが激しかったらしくて、流石の沖田さんも真面目に仕事していたそうで…
今日は久し振りに待ち合わせて茶屋に行く事になりました。
沖田さんの事だから又遅刻してくるんだろうけど、僕は楽しみで1時間も前に着いてしまいました。
僕の姿が見えたら、又全速力で走ってくるんだろうなぁ…
そんな姿を見るのも、なんだか楽しみで…僕はニヤニヤ笑いながら、待ち合わせの場所に立っている。道行く人が変に思うかもしれないけど…顔が緩みっぱなしで元に戻らないよ…えへへっ…どっちから来るかなっ…どっちにしても、僕の前に着いた時には、いっぱい汗をかいてるだろうから、流れる汗を拭いてあげよう。
きっと…テレたような嬉しそうな笑顔を浮かべてくれるから…
僕はその顔が大好きだから…
幸せな気分でキョロキョロと辺りを見回していると、前から来た人が、いきなり抜刀する。
何!?
「真撰組一番隊隊長、沖田総悟の連れの者だな!?貴殿に恨みは無いが、死んでもらう!!」
いきなり口上を述べて、僕に斬りかかってくる。
一太刀目は上手くかわせたけど…しつこく二太刀目、三太刀目と斬り込んでくる。
なんとかかわしつつ逃げていると、恐怖で竦んでしまって逃げられない子供が目の前に現れる。
あぁっ!しくじった!!こんな小さな子供を巻き込んでしまった…
暴漢が、大きく刀を振り上げる…あぁ、もう間に合わない…僕は少し斬られる覚悟を決めて、子供の前に立って後ろへ子供を押しやる。
ちくしょう…久し振りのデートだったのに台無しだよっ…
僕が目を見開いたまま最小限斬られるぐらいまで後ろに下がると、目の前に何か黒いモノが飛び込んでくる。
暴漢の太刀がその黒いモノを斬ったと思った瞬間、ソレが恐ろしい殺気を帯びる。
「テメェ、新八に何しやがる…」
「沖田ァァァァァァ!仲間の敵ィィィィィィィ!!!!!」
一瞬、銀色に光る何かが暴漢に向かって飛ぶ。
と、思った瞬間、暴漢の胸から血しぶきが上る。
僕は慌てて後ろに居た子供を抱きかかえる。
子供は転んだままうずくまっていたので、何も見ていなかった…
…良かった………
「新八ィ…怪我は無いですかィ…?」
「沖田さんっ!!!!!」
僕の方に振り返った沖田さんは、胸から腹までザックリと斬られていた…僕が負う筈だった傷を負っている…
「びょっ…病院っ…!病院に行かなくちゃっ…!!」
僕が抱えていた子供を解放して、安全な所まで連れて行ってから沖田さんに駆け寄ると、沖田さんは膝からガックリと崩れ落ちる。
「新八が無事で、良かった…」
「ちょっ…何言ってんですかっ!あぁっ!血がっ…」
「こんなの掠り傷でさぁ。新八を守って出来た、名誉の負傷ってヤツですからねぃ。」
沖田さんが、いつもの優しい笑顔で僕を見る。
こんな大怪我…痛いはずの傷を掠り傷と言って優しく笑うなんて…
「アンタ…バカですよ…僕を庇って…」
「そうですねぃ…俺ァ大概、新八バカでさぁ…」
「…バカ…」
僕の頬をポロポロと涙がこぼれていく。止まらない…止められないよ…
遠くに救急車の音が聞こえる。
…誰か呼んでくれたのかな…
「もう…僕のせいで怪我しないで下さい…」
「新八はワガママでさぁ…」
すぐにやってきた救急車に乗せられて病院へ行くと、沖田さんは奇跡的に命に係わる怪我ではなく、暫く入院する程度で済んだ。
「すいやせんねぇ、折角のでぇとが台無しだ…」
「…分かってんならもうあんな無茶はしないで下さいねっ!沖田さんなら、斬られないで何とか出来るでしょ!?」
「…自分だって斬られようとしてたくせに…」
ブツブツと言い訳をする沖田さんを僕がジロリ、と睨むと、そろりと目を逸らす。
「…新八が泣くからねぃ…善処しまさぁ…」
沖田さんが、意地悪な顔で、ニヤリと笑う。
いつも通りの沖田さんだ…ドS顔なのに、なんか安心する…
「退院したら、いっぱいデートしましょうね?だから…早く良くなって下さい…」
僕が沖田さんの頬に、ちゅ、とキスをすると、沖田さんの顔が真っ赤になった。
END
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