02・賄いさん
「新八ィ、万事屋なんか辞めて俺の所に嫁に来なせぇ。」
「…イキナリ何言ってんですか、アンタ。大体僕は男ですから。嫁には行けませんから。」
今日も今日とて買い物帰りの新八を待ち伏せて甘味屋に誘う。いわゆるでぇと、ってヤツでさぁ。
それにしても、新八が買い物に出る確率、高すぎやしませんかぃ?…こちとらぁ好都合ですがねィ…
万事屋の旦那もチャイナも、新八の事を賄いさんか何かだとでも思ってんじゃぁねぇのかい?食事も当番制とか言いつつ新八率が高いみたいじゃぁねぇかぃ。
…羨ましいぜぃ…
俺がブゥブゥと文句を言うと、それまでジト目で俺を見ていた新八の顔が綻ぶ。
「沖田さんが僕の事心配してくれるのは凄く嬉しいんですけど、僕が居なくなるとアノ2人、ダメダメだから。多分ご飯もちゃんと食べらんないですよ?部屋もグチャグチャになるだろうし、起きてすらこないんじゃぁないかなぁ、きっと。」
「チャイナはまだしも、銀の旦那は一人前の大人じゃぁねぇかぃ。メシぐらい、1人で食えまさぁ…」
なんでぃ、幸せそうな顔しやがって…
俺が少し肩を落とすと、新八はちょっと慌てて言い募る。
「や、ちょっとっ!そんなしょげなくても良いじゃないですかっ!!僕が2人にご飯作ったぐらいでなんですかっ!!僕にとってアノ2人は大きな子供なんですからねっ!!あっちだって『お母さん』ぐらいにしか思ってないでしょうよ!…あ、何か言っててハラ立ってきた。」
新八は、わたわたしながらも力説を始める。顔、真っ赤にしてやがる…相変わらず可愛いねぃ…
俺は、しょげたフリをしながら新八を見る。新八の顔が、更に赤くなる。
「本当に母親で?嫁じゃぁなくて?」
「はぁ!?アンタ、何言ってんですか!!何で僕があんなマダオの嫁ですか!!ついでに言うなら神楽ちゃんは女の子ですから!!嫁って言うなら神楽ちゃんが、ですから!!………それに………僕の彼氏は沖田さんじゃないですか…嫁になるなら、沖田さんのが良いです…って、何言ってるんだ、僕…」
新八が頬を染めつつ上目遣いで見上げてくる。
…そんな顔されちゃぁ、しょげたフリなんざぁ出来ねぇでさぁ…
俺はニッコリと新八に笑いかけ、荷物を持っていない方の手を繋いで甘味屋に急ぐ。
「じゃぁ、子離れしたら嫁に来ておくんなせぇ。」
「…はい………」
新八が小さく頷いて、きゅう、と手を握ってくる。
ひどく幸せな気分になって、走り出す。
突然走り出した俺に新八が文句を言ってくるが、気にしねぇ。
じっとなんてしてらんないぜィ。青い春だねぃ。
END
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