24・男の嫉妬



町で沖田さんを見かけた。
可愛い女の子と楽しそうに話してて…ちょっとイラっとした。
何だよ…鼻の下伸ばしちゃってさっ!確かにちょっと可愛いけどさ…
イモいおさげじゃん。眼鏡かけてるし、髪だって真黒だしさぁ!
沖田さんにはぜんっぜん似合ってないよっ…!
何?巨乳なの?
そりゃぁ僕は胸なんか無いですよ?…やっぱり…有る方が良いのかなぁ…?
雑誌には、揉んだら大きくなる、って書いてあったなぁ…揉んでみようかなぁ…

これ以上そんな所を見ていたくなくて、ぐるっと振り返って足早にその場から立ち去る。
なんだよ…僕ばっかりヤキモチやいてさ…どーせ沖田さんは涼しい顔で、何かカッコ良い事言ってんだぜ?きっと。

あー、もうやってらんない!





見廻りの最中、新八を見かけた。
なんだか美人系の女と楽しそうに話してやがる!
何でィ、俺と言うものが有りながら、浮気は良くないぜ!
…顔、赤くしちまって…んな可愛い顔を、俺以外に見せてんじゃねぇよ…

速攻踵を返してその場から立ち去る。

…新八も男だしねぇ…本当は女の方が良いんじゃねぇのか…?
話してたのは、結構な美人だったしな…栗毛のショートカットで色白で…乳だって結構有ったしよー…
ツッコまれるよりツッコみたいのかねぇ…本当は…

あー、畜生!何かイラッとすらぁ。
暫く新八に逢うのはよそうかねぇ…苛めちまいそうでさぁ…





「あ。」

それから数日経ったある日、町でばったり新八に逢っちまった。
暫く逢わねぇようにしようと思ってたのに…

「あ。」

それから数日経ったある日、町でばったり沖田さんに逢ってしまった。
あんな後だから、逢いたくなかったのに…

「…見廻りご苦労様です…」

「…新八は買い物ですかィ…?」

「はい、晩御飯のおかずを買いに。」

「そうですかィ」

…沖田さん目を逸らしてる…いつもならここで、今日は何ですかィ?俺も食いたいでさぁ!とか言うくせにっ!

「今日はまだ何にするか決めてないんですよ。沖田さん何が良いと思います?」

何でィ新八ィ…いっつもはそんな事聞かねぇクセに!やっぱり何か疾しい事したのかよ!?

「さぁねぇ。俺が喰う訳じゃねぇし。生卵で良いんじゃねぇか?」

あ、やっぱり変…何!?アノ娘が作ってくれるから、僕の料理なんかもういらない、って言うの!?

「そうですねー、どうせ今日は僕が作る訳じゃないし。沖田さんに作る訳でもないですしね。」

何でィ、アノ女が作んのかよ!?じゃぁ2人で買い物に来れば良いじゃねぇか…

「新八ィ…俺に何か報告する事ァ有りやせんかィ?」

本当は聞きたかァねぇけど…

「沖田さんこそ…僕に何か言う事はないんですか…?」

あ、ヤバ…泣きそう…

「…しらばっくれるんですかィ…?俺ァ見ちまったんですぜ…?」

キレイな女と楽しそうにしてた所…

「僕だって…見ちゃったんです…よ…」

可愛い女の子と楽しそうにしてた所…



………あれ…………?



「「何を…?」」

「新八が…キレイ系の女と仲良く話して真っ赤になってる所を…アノ女と付き合うんだろィ…?」

あんな顔して話してたんだ、そうだろィ…?
邪魔してやるけどな。

「はぁ!?そんな女の子…あぁ、道を聞かれたのは有りましたけど…すっごい綺麗な女の人で、沖田さんが女の人だったら、こんな感じかなぁ…なんて…って!誤魔化さないで下さいっ!!僕、見たんですよ?沖田さんが可愛らしいおさげの女の子に言い寄られて、満更でもない顔で鼻の下伸ばしてるのっ!!」

「はぁ?おさげ?…あぁ、何か前に解決した事件の被害者、ってのがそんなんだったなぁ…礼を言われただけですぜ?パチ恵ちゃんに似てたんでねぇ、色々妄想しちまったィ。」

「パチ恵…って、僕に似てたから…?」

僕に似てたから…でれっとしてたの…?妄想って…

「アノ女、俺に似てたのかィ…」

俺…ねぇ…

「何でィ、新八は俺にベタ惚れなんだねぇ…」

ニヤリと笑って手を繋ぐ。
こんな誤解をするなんざ、俺はホントに新八が好きなんだねぇ!

「沖田さんこそ。僕しか見えてないでしょ?」

にっこり笑って繋がれた手をぎゅっと握る。
ほんのちょっとした事で男の嫉妬を炸裂させるなんて、僕はホントに沖田さんが大好きなんだ!

あぁ、でも誤解で良かった!
本当だったら何するかわからない。
女の嫉妬は怖いけど、男の嫉妬だって結構怖いんですよ…?



END