07・マッサージ
ここしばらく溜めに溜めて土方に押し付けてたデスクワークを一気に片付けさせられた。
仕方ねぇでさぁ、近藤さんが出て来て笑顔で
「総悟―、ココ最近お前のサインの入った書類を見かけてないんだが?あんまり溜めると後が辛いぞ―?お前はやれば出来る子なんだから、早いうちに提出してくれよ―?」
…なんて言われちゃぁ…やるしかねぇでしょう。笑顔の近藤さんにゃぁ逆らえませんぜ。
ちっ………土方のヤロー知恵付けやがって………近藤さんを出してきたら弱い事知ってやがるな…
そんなんで、ここ1週間ばかし屯所に篭りっきりで、見廻りにすら行ってねぇ。新八に会う所か、見かけてもいねぇ。もういい加減禁断症状が出まさぁ!!新八不足で死にそうでさぁ…
「うぃ―っス、新八居るかぃ?」
いつもなら、チャイナも旦那も居ない時間を見計らって行く万事屋だが、今日はどうでもいいやぃ。新八に合えれば外野は気にしねぇ!!…運良くそこには新八だけだった。やっぱり日頃の行いが良いせいですかねぇ!
「あ、沖田さん。お久し振りです。」
新八は、つらっといつもの笑顔で迎えてくれる。あ―、癒される…
でも、寂しくなかったんですかねぇ…俺ぁ寂しかったんですがねぃ…ちょっと落ち込みまさぁ…
「ここ暫らく見かけませんでしたけど、何か事件でもあったんですか?」
新八が軽―く聞いてくる。
…なんでぃ…
「溜まってたデスクワークをやってやした。近藤さんに頼まれちゃぁ、イヤとは言えやせんぜ。おかげで体が鈍っちまいやしたぜ。」
首を左右に動かすと、思った以上に、ごきり、と音がする。
「うわっ!凄い音しましたよっ!?メチャクチャ凝ってるじゃないですかっ!!僕、マッサージ得意なんでやりましょうか?」
いつに無く積極的な台詞を吐くじゃァないですか。やっぱり新八も寂しかったんだねぇ。
「そうなんですかぃ?じゃぁ頼みまさぁ。」
「はいっ!じゃぁそこのソファに寝て下さい。」
俺がゴロリ、と腹ばいになると、新八がどっかりと俺の上に乗ってくる。
オイオイ良いのかぃ?この展開…
「じゃぁいきますよ―?」
新八が、俺の足をぐいと持ち上げて、足の裏を掴む。…足の裏…?
ぐいっ
「しっ…んぱちぃっ…ちょっ…そこはっ………」
「沖田さん、暴れないで下さいねっ?足の裏はいろんなツボが有るんですよぉ?」
「やっ、ちょっ、いだっ!いだだだだだだだ!!!!」
なっ…なんだか新八の笑顔が怖い、ってえか、そのツボは関係無いんじゃぁ…?
俺があまりの痛さに動かなくなると、新八がポソリと呟く。
「…どんだけ忙しかったのか知りませんけどっ、電話の1本ぐらい出来なかったんですかっ…?」
ぐいっ、ぐいっ、と更にどこかのツボを押す。額から嫌な汗が出て来やがった…どんな力だ、新八…気ィが遠くなってきやがった…
すげぇ悔しいけど、しょうがねぇ。ぱんぱんぱん、とソファをタップする。
「すっ…すいやせんでした…ったっ…慣れない仕事なんでっ…風呂に入ったらすぐに寝ちまいやし…ってえっ!!」
新八は俺のタップを無視して、まだグイグイとツボを押し続けやがる。
やべぇ…怒ってる…相当怒ってる………
「…なんか悔しいなぁ…寂しかったのは、僕だけですかっ…?」
「そっ…そんな事ありやせんぜ!!俺だって会えなくてどんだけ…新八の事毎日夢に見やしたぜ!!」
なんとか振り向いて、新八を見る。
新八は怒ってなんざいなかった。ただひたすら寂しそうで哀しそうで…
「でも…電話も出来なかったんですよね…?」
新八が寂しそうにぽつり、と呟いて、一際強く、ぎゅぅ―――っ、と押す。
「いだだだだだだだだだっ!…すいやせんでした………」
「はい、終わりです。明日には楽になってるハズですよ?」
俺はあまりの痛さに動けなくなっちまった…ちっ…情けねぇ。
せめて、ぎゅうっとひと抱きしたかったんですがねぇ…それ所じゃぁなく、起き上がる事すら出来ねぇよ…
「お疲れ様でした。次からは声ぐらい聞かせて下さいね?」
ちゅっ…
ほっぺたに柔かい何かが当たる。
しっ…新八ィ…!?
俺がなんとか顔を上げると、柔かい笑顔で軽く頬を染めた新八と目が合う。
…たまには会わないでいるのも良いかも知れませんねぃ…でも、マッサージは2度と頼みやせんぜ…
END
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