それからトントン拍子で引っ越しが決まって、1週間後には私はお父さんとお兄ちゃん達の住むお家に移った。
2人とも忙しいらしくって中々ご挨拶出来なかったんで、その日の夜にお父さんが2人を居間に呼んでくれた。
いよいよお兄ちゃん達と会えるんだ…なんか緊張してきちゃったよ…
お父さんに連れられて居間に行くけど…ドキドキが凄くって、足が竦んで動かないよ…
「どうしたんじゃ〜?パチ恵、やっぱり怖いがか?」
「ううん、そんな事無いよ?…でも…お父さん、お兄ちゃん達…私なんかがこのお家に来たら困らないかな…?」
私が勝手に決めちゃったけど…よく考えたら、お兄ちゃん達の都合は全然考えてない私の我儘なんだよな…
それに気付いたら…凄く申し訳なくなってきて…
「そんな事有る訳無いじゃろうが、考えすぎじゃよ?パチ恵はこんなに可愛いんじゃ〜、喜び過ぎて鼻血噴くぜよ。」
そう言って笑って、ぎゅーって抱きしめてくれる。変な冗談まで言って…
それだけで、凄く落ち着いたよ…えへへ、お父さん大好き…
「鼻血は無いよー!それじゃ、ヘンタイさんだもん。」
「あっはっはっはっ〜そうじゃの〜それじゃぁ変態じゃき。」
もう一回ぎゅーと抱きしめてくれて、頭を撫でてくれる。
「んじゃぁ行くぜよ?」
「うんっ!」
居間に入ると、予想よりも遥かに怖そうな男の人が、2人居た。
…優しい…んだよね…?
「今日からこの子もここで一緒に住むぜよ〜?間違い無くワシの子供じゃきに、変な気は起こすなや〜?」
お父さんが私を紹介してくれると、その2人がジロリと私を睨む。
…ちょっと怖いよ…
でもでも、おとーさんが太鼓判押してたし…お父さんも優しいって言ってたし…
「ほら、パチ恵、お兄ちゃん達に挨拶せぇ?」
うん、そうだよね!まず挨拶だよね!!
お父さんの後ろから抜け出て、お兄ちゃん達の前に走って行く。
えへへ、笑顔笑顔っ!
「こんにちわ、近藤八恵です。えっと…」
「坂本晋助…」
「坂本十四郎だ…」
あ…ちゃんと挨拶返してくれた…!
えっと、前髪で片目が隠れてるのが晋助お兄ちゃんで…瞳孔が開いてるのが十四郎お兄ちゃんか!
うん、やっぱり優しいお兄ちゃん達なんだ!!
嬉しくなって2人の腕にぎゅーと抱きつくと、突然2人が顔を背けて手で鼻を押さえる。
え…?…やっぱり………嫌だったのかな………?
私が悲しい気分になって俯くと、お父さんが後ろにやって来て、私の耳元で囁く。
「…すまんのう、パチ恵…2人とも変態だったみたいじゃ…」
「えっ!?」
へんたい…?
2人の腕を離して後ろに下がって良く見ると、2人とも鼻を押さえてて…指の間から血が出てる…!?
「あぁっ!ティッシュティッシュ!!」
箱ティッシュを取って来て、2人の鼻に取り出したティッシュを当てると真っ赤になってる…
なんか、可愛いかも…
「晋助お兄ちゃん、十四郎お兄ちゃん、よろしくお願いします!」
私が嬉しくなってへらっと笑って言うと、2人とも、おう…とか言ってくれる。
そっか、お兄ちゃん達って恥ずかしがり屋さんなんだ!
その後、晋助お兄ちゃんにキッチンの使い方を教えてもらって私が晩ご飯を作った。
お父さんが美味しい美味しいって食べてくれたのがすっごく嬉しかったよ!
お兄ちゃん達も残さないで食べてくれたから…不味くは無かったのかな…?
後片付けをしていると、晋助お兄ちゃんがお手伝いしてくれた。
顔は怖いけど…やっぱり優しいお兄ちゃんなんだ!
「…パチ恵…メシ…美味かった…誰かの作ったメシなんて…久し振りに食った…」
「良かったです!私、それぐらいしか出来る事無いから…」
「…十分…」
ポスポスと頭を撫でてくれて、ほっぺたにちゅう、とキスをくれる…って…えーっ!!??
きっ…きす…きすゥゥゥゥゥゥゥゥっ!?
「おっ…おにっ…お兄ちゃん…きす…」
「…どうした…?兄妹なら…普通だぞ…?」
そっ…そうなのか…私一人っ子だから知らなかった…
そうだよね、ほっぺちゅーなら家族なら普通にするんだ…ドラマとかでやってるもんね…
「私一人っ子だから知らなかったです!有難う御座います、晋助お兄ちゃん。」
私からもお兄ちゃんのほっぺたにキスを贈ると、にっこり笑ってくれる。
わ…笑うとカッコいい…
えへへ、自慢のお兄ちゃんになっちゃうね!
2人で後片付けをして居間に戻ると、お父さんと十四郎お兄ちゃんがテレビを見ていた。
私もテレビ見たいけど…今日は疲れちゃったから、早く寝よう。
「お父さん、お兄ちゃん、私もう寝ますね。おやすみなさい。」
さっき晋助お兄ちゃんに教えてもらったように、十四郎お兄ちゃんとお父さんのほっぺたにキスを贈る。
お父さんはキスを返してくれたけど、十四郎お兄ちゃんは固まってしまった…私…嫌われてるのかな…?
支度をしてベットに潜り込むと、すぐに目蓋が落ちてくる。
明日から、きっと楽しい毎日になるよね?
新しい生活と新しい家族…
とってもとっても楽しみです!
続く
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