私の部屋で2つのお布団に並んで寝転ぶと、ふわりと良い匂いがする。
音女さんの…香水の匂い…?
「良い匂い…音女さんの香水の匂いですか?」
「うん、そう。八恵ちゃんならもうちょっと甘い匂いが良いかな?」
「そっ…そんな!私には香水なんか早いですっ!それに、沖田君あんまり香水好きじゃないみたいだし…あっ…!」
いきなり音女さんの雰囲気が変わった。
怖い…
「『沖田君』って、誰かしら…?」
「あっ…あのっ…こいびと…です…」
ふえ…凄い怖い顔になっちゃったよ…
音女さんなら話聞いてくれるかと思ってたのに…
反対…されちゃうのかな…
「あのっ…あの…沖田君は凄く優しくて、真面目な人なんです!たまに授業サボったりするけど、でも…」
私が言い募ると、音女さんが俯いていってしまう。
そんなぁ…やっぱり反対されちゃうよ…
「でもあのっ!意地悪な所も有るけど…あぁっ…ええと…大切に…してくれるんです…私は…大好きで…大好きで…」
どうしよう、言葉が出てこない…泣きそうだよぅ…
こんなんじゃ、沖田君の良い所なんか伝えられないよ…
「うん、分かったから泣かないで?八恵ちゃんはその子の事、凄く好きなのね?」
「はい…苦しくなるくらい…だいすき…です…」
「そう。優しくしてもらってる?」
「凄く…凄く優しいですっ!お兄ちゃん達が意地悪するのに、私に笑ってくれるんです…」
音女さんが顔を上げて、優しく笑ってくれる。
「お弁当失敗しても、全部美味しいって食べてくれるし、買い物も付き合ってくれるし…」
ぽんぽん、と頭を撫でてくれる。
「ちょっとの時間でも逢いに来てくれるし…笑うと凄く可愛くて…でも普段はすっごくカッコ良くて…」
きゅうっ、と抱きしめてくれたら…
「ぎゅう、ってされたら心臓爆発しそうで…」
そこまで言ったら、そっと指で口を塞がれる。
「うん、大事にはされてるみたいだけど…まだ清いお付き合いにしてね…?」
「ふぁい、らいじょおぶれす。」
沖田君は可愛い人だから…ちゅうでも真っ赤になっちゃうんです。
手だって、そんなに繋いだ事ないんですよ?
ぎゅうとかなんて、もう、本当に、ぐるぐるするんです!!
今迄言えなかった事を思いっきり話すと、凄くスッキリした。
音女さんは、ずっとニコニコしながら黙って私の話を聞いてくれた。
「今度、でーとするんです!遊園地に行くんですよ?」
「あら、じゃぁ私のプレゼント役に立つわね?」
「はい!すっごく嬉しかったです!!」
「遊園地ならね…」
音女さんが、服を選んでくれる。
こーで、ってヤツかな?
でも確かに可愛いし動きやすそうだなぁ…私じゃこうはいかなかったよ!
「有難う御座います!沖田君可愛い、って思ってくれるかなぁ…」
「大丈夫!八恵ちゃんはそのままでも可愛いんだから。」
音女さんがそう言ってくれると、本当にそんな気になってくるから不思議…
「デート頑張ってね?」
「はい!あ…でもお父さんとお兄ちゃん達にはナイショにして下さいね?邪魔…されちゃうんで…」
私が慌てて言うと、音女さんが苦笑いする。
「ほんに仕方なかね…言わないから安心するぜよ。」
あ…お父さんと同じ言葉…
やっぱりお姉さんなんだな…
今迄誰にも話せなかった事をいっぱいお話して、凄く嬉しかった!
音女さんが味方になってくれたなら、百人力だよね!
綺麗で優しくて、頼りになって…
あ!音女さんって沖田くんみたい…
私が好きにならない訳無いよね!
「音女さん、だいすきです…」
音女さんにおやすみのちゅうをすると、ちょっとビックリしてたけどにっこり笑って私にも返してくれた。
ぎゅうっと抱きついて眠ると、凄く安心する。
ずっと家に居てくれれば良いのにな…でも、お仕事とか有るから…そんな訳にはいかないよね…寂しいな…
次の朝起きると、お父さんとお兄ちゃん達が何故か顔を腫らしていた。
…喧嘩でもしたのかな…?
朝ご飯は音女さんが作ってくれて、それは今迄食べた中で一番美味しかった。
凄い!お料理も上手いなんて、音女さん無敵だよね!
仕事が有るから、って言って音女さんはすぐに帰ってしまったけど…
今度は私が音女さんの所に遊びに行こうと思いました。
又、沖田君の話聞いてもらうんだ!
まずは、今度のデートの話から…
続く
…あんな事言ったけど、大事な大事な可愛い子を、変な男には任せられんきに。
私自ら、確かめちゃる。
変な男じゃったら…
八恵ちゃんば泣かせても、私が許さん!!
覚悟しいや…沖田総悟…
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