観覧車の上から見たパレードは、キラキラしていて凄く綺麗だった。
総悟君は暖かくて…凄くドキドキした。
途中から景色は見れなかったけど、でも…凄く嬉しかった…

「…そろそろ暗くなってきやしたね…」

「…うん…」

「晩飯…付き合ってくれやすか…?」

「………」

夜ご飯は…流石に私が作らないと駄目だよね…
でも…もう少しだけ…総悟君と一緒に居たい…よ…

「…やっぱり…無理…ですかィ…?」

俯いてしまっていた耳に飛び込んできたのがあんまり頼りない声で、ビックリして顔を上げると凄く寂しそうな総悟君の顔が飛び込んでくる。
どうしよう…私は…もっとずっと一緒に居たいけど…でも…

「総悟君と…もっと…ずっと一緒に居たいよ…」

ぎゅうっと手を握ると、もっと強く握り返してくれる。
今日だけなら…今日だけ…なら…でも…

顔を上げられないでいると、バッグの中からメール着信音。
…お父さん…?帰ってこい、って…時間かな…
メールを確認すると、それは…

『行方不明のパチ恵へ
今日は豪勢に高級レストランで晩飯じゃー!
朝から居なくなっとるパチ恵は連れてってやらんからのー
自分の飯は自分で食う事』

え…?
すぐに又メールが…お兄ちゃん達…?

『親父と晋助と高級レストランに行ってくる。
晩飯はいらねぇ 十四郎』

『今日わゴチソウだよー(^◇^)でもパチ恵がいなくてザンネン(=_=)
ドーナツ(^_-)-☆オミヤゲにするネ(^O^)つ
晋にぃデシタ(はーと)』

…お兄ちゃん達…
もしかして、全部分かってて…

「…八恵…もう少しだけ一緒に居てェ…俺も一緒に怒られるから…だから…まだ帰んな。」

凄く真剣な顔で、そんな事言ってくれるんだ…
皆の気持ちに…甘えちゃって…良いよね…?

「ホントに一緒に怒られてくれる…?」

「当たり前でさァ。八恵と一緒に居られんなら、そんぐれぇ気になんねェよ!」

いつもよりずっと優しいなんてズルイ…
そんな顔されたら…クラクラしちゃうよ…?

ちょっとだけ背伸びして…唇…奪っちゃった。

「は…ちえ…?」

「いちばんだいすき!」

私が笑うと、そうご君は横を向いてしまった。
…可愛い…
私から腕に掴まると、ゆっくり歩きだして夢の国を出てしまう。
そのまま近くのファミレスに入って美味しく晩ご飯を食べた。

「…デートだってェのに、しょっぺぇ所ですいやせん…レストランとか…あんまり知らねェんでさァ…」

「そんな!いつも来る所だと安心するよ!緊張しないから、いっぱい食べられるよね!」

そう言って、えへへ、と笑ったら総悟君がぽかんと私を見た。
あれ…?呆れられたかな…
嫌われ…ちゃうかな…?
私が泣きそうになってきた頃、総悟君が照れたように笑う。
その表情が凄く綺麗で、又好きだな、って思ってしまう。

「やっぱり俺は八恵じゃなきゃ駄目でさァ。」

そんな事言われたら…心臓壊れちゃうよ…

「私も!総悟君じゃなきゃ…イヤ…」



「…まぁ、高校生なんかこんなもんよね…」
「2人とも楽しそうだし、充分よね。」
「そーちゃん頑張ったわね。」
「…高級レストラン…」
「ん?久し振りに行くかのぅ?」
「辰馬!俺も俺も!!」
「…銀八っつあん…親父にたかんなよ…」



食事が終わって、総悟君が家まで送ってくれる、って又一緒に歩きだす。
…本当に一緒に怒られてくれるのかな…?
凄く…嬉しい…

でも…今になって足が痛くなってきた…
サンダルが靴擦れした…んだよね…
総悟君はゆっくり歩いてくれてるけど…でもまだ早いよ…

「…八恵、ちょいストップ。」

「え…?」

コンビニ前で総悟君が立ち止まる。
あ…助かった…

「ちょい待ってて下せェ。」

総悟君が走って店の中に入っていく。
なんだろ…?私が一緒に居ちゃ買い辛い物なのかな…?
すぐにお店を出てきた総悟君は、袋をガサガサいわせて何かを取り出す…あ…絆創膏…

「八恵、ソコ座んなせェ。」

とん、と押されてガードレールに腰掛けさせられる。
総悟君はしゃがみ込んで、私のサンダルを脱がせた。

あ…気付いて…くれたの…?

「総悟君…私…足…」

「靴擦れか?あー…ヒデェな…早く気付いてやんなくてすまねェ。」

「…有難う…」

すぐに擦れた所に絆創膏を貼ってくれて、サンダルを履かせて立たせられる。

「立ってみ?…痛ェ?」

足踏みをしてみると、やっぱりちょっと痛いや…でもこれぐらいなら…

「うん、大丈夫!」

「嘘吐いてんじゃねェや。ホレ、乗りなせェ。」

くるりと後ろを向いて、ぴょこぴょこと手を振る。
おんぶ…って事かな…

「私…重いよ…」

「乗りなせェ。」

…総悟君、ちょっと怒ってる…
私がダメだから…怒らせちゃったよ…

そーっと背中に乗ると、総悟君がスタスタと歩きだす。

「…ごめんなさい…」

「謝んな。」

…どうしよう…凄く怒ってるよぅ…
もう嫌われたかもしれない…そんなのヤダよぅ…

「…俺が…調子に乗って連れまわし過ぎたから…悪ィ…」

総悟君…怒ってるんじゃないの…?

「そんな事無いよ!遊園地だって言ってたのに、私がもっと動きやすい格好にしてたら…」

「イヤ。俺の為に頑張ってくれたんだろィ?凄ェ可愛いから…八恵は悪く無ェ!…次は…もーちっと考えるから…又…デートしてくれやすか…?」

耳が…凄く赤い…背中から伝わる体温が熱い…心臓の音が…ドキドキ聞こえる…
総悟君も…緊張してくれてるのかな…?

「うん…楽しみに…してるね…?」

ぎゅう、と抱きつくと、聞こえてくる心臓の音が早くなる。
私のドキドキも…伝わると良いな…

「んじゃ、次はどうしやすか?」

「うーん…動物園!」

「…それじゃぁ、今日よりも歩くんじゃねェですかィ?」

「それでも良いよ、総悟君と一緒だったら…」

この話は、そう遠く無い未来の話だよね…?
又次も、2人っきりでデートしようね、総悟君。

「次は、2人っきりですぜ。」

「…え…?」



「うん、まぁ合格…かな…」
「まぁまぁね、イケメン君。勲さんに免じて合格よ。」
「本当ですか妙さん!良かったなぁ総悟!」
「そーちゃんはやれば出来る子だから。パチ恵ちゃんなら安心だわ。」
「子供らしいお付き合いなら、まだ付け入る隙は有るって事だね。」

「「「「…先生…?」」」」


続く