ゴツッ…
「大事な妹に何さらしとんじゃボケェ!」
…目の前には般若…もとい、妙姉ちゃん…
その隣には苦笑した、みー姉ちゃん…
「あらあら、そーちゃんてばケダモノ。」
みー姉ちゃん…妙姉ちゃんに殴られて、気絶して倒れ込んだそーちゃんを足蹴にするのは可哀想だよぅ…
「みー姉ちゃん!妙姉ちゃん!私ちゃんと『嫌い』って言ったのにそーちゃんもっとお酒飲んじゃったよー!」
私が泣きながら2人に言うと、よしよしと頭を撫でてくれる。
「それに、私嫌われちゃったよぅ…そーちゃん大好きなのに…」
ボロボロと涙が零れて止まらない。
気絶したまま床に転がされてるそーちゃんが心配で、そっと頭を膝に乗せると歪んでいた顔が穏やかになる。
あ…良かった…
そのまま何か考え込んでいた2人が、それを見て何か思いついたのかニヤリと笑う。
あ…何だか嫌な予感…
「そーちゃん、もう起きないみたいね。ベットまで運ぶから手伝ってくれる?」
「うん。」
3人で持ち上げても結構重い。
なんとかそーちゃんの部屋まで運んでベットに乗せると、みー姉ちゃんがそーちゃんの服を脱がせ始める…
「ひぇぇぇぇっ!?みー姉ちゃん何やって…?」
「あれだけじゃ懲りなかったみたいだから。」
「さ、八ちゃんもさっさと脱いでね?」
ニコニコと笑った妙姉ちゃんが私の服に手を掛ける…
「って…何で!?」
なんとか妙姉ちゃんの手を引き剥がして飛び退ると、きょとん、と私を見る。
「何で、って…そーがへこむから。今度こそお酒止めるわよ?きっと。」
うふふ、とか綺麗に笑ってるけど意味分からないよっ!
「だからって何で私まで服を脱がなきゃならないの!?恥ずかしいよ!」
「大丈夫。昔一緒にお風呂入ってたじゃない。」
「みー姉ちゃんそれ幼稚園の頃っ!」
2人ともうふふ、とか綺麗に笑ってるけどなんでそんなのでそーちゃんがお酒止めるの!?
全然分かんないよっ!!
「さ、早くお布団に入っちゃって。大丈夫、そーちゃん起きないから。」
「何が大丈夫なのか分かりませんっ!」
「八ちゃん…往生際が悪いわよ?」
うふふ、と笑ったお姉ちゃん達に服を全部剥ぎ取られて、ベットに押し込められる。
暖かい体温と、直に触る素肌が気持ち良くて、頭がぐるぐるする…
「ふぁっ!私後片付けして無くて…」
「私達でやっておくから大丈夫よ?じゃ、おやすみなさい。」
「大丈夫、助けて、って言ったら助けてあげるから。」
お姉ちゃん達が手を振って出て行ってしまうのを追おうとして起きあがると、布団が捲れて色んなモノが見えてしまって、すぐに布団に潜り込む。
どっ…どどどどうしよう…こんな…
そっとそーちゃんを見上げると、憎たらしいくらいにすやすやと寝てる。
すました顔を崩したくって、ぷにっ、とほっぺたを摘むともぞもぞと動いて私の手を払う。
…面白い、こんな事しても起きないんだ…
両方のほっぺたを摘んで伸ばすと、又もぞもぞと動いて手を払う。
それが面白くってぶにぶにとほっぺたを伸ばしていると、うーん、と唸ってうっすらと目を開けた。
あ…起きちゃった…ヤバい!
「…はちえ…すき…だ…」
にっこりと。
小さい頃みたいに笑ってぎゅうっ私を抱き込んだまま、そーちゃんは眠り込んでしまった。
心臓がどきどきと煩くて、顔が熱くて仕方ないけど、このままぴったりとくっついたまま離れたくない。
そっか、私、そーちゃんの事好きだったんだ…
兄妹とかじゃなくて、男の子、として好きになってたんだ…
「そうごくん…すき…だよ…」
私からもぎゅうっと抱きつくと、もっと距離が近くなって、暖かくて。
そのまますうっと眠ってしまった…
「…はっ…はちえぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
「…おはよー…そうごくん…」
「なっ…ばっ…オマエ…なんで…俺…俺ェェェェェェェ!?なっ…何…も…」
次の日の朝は大騒ぎで。
私はそーちゃんの叫び声で目が覚めた。
ばっ!と飛び起きたそーちゃんが、真っ赤になってすぐに又私に布団を被せてくれて、その後ずっとうんうん唸ってた。
「そーちゃん昨日いっぱいお酒飲んで…私駄目だって言ったのに…」
お酒飲み過ぎ…って言おうと思ったのに、いきなりそーちゃんが土下座した。
え…?
「すまねェ八恵!俺…俺責任取るから…オマエの事好き過ぎて…酒飲んで暴走…しちまった…」
責任…って…何だろう…?
でも、好き…って…そーちゃんも私の事女の子って想ってくれてるのかな…?
だったら…嬉しいのに…
思わずふにゃふにゃと笑ってしまうと、土下座のままずりずりと近寄って来ていたそーちゃんがベットの端から顔を出す。
「私も、総悟くんの事が、好きです。」
ちゃんと私の気持ちを伝えると、そーちゃんもふにゃりと笑う。
「俺、酒止めるから。折角の八恵のハジメテ…覚えてねェなんて信じらんねェ…」
「ふぇ?初めてって…」
何?って聞く前に言葉ごと飲みこまれる。
うん、ファーストキスの事…か…
そう言えば昨日、お姉ちゃん達が帰って来た時に…された気がする…
あの時凄くお酒飲んでたもんね。
でも、ちゃんとしたのは今が初めてだよ…?
段々気持ち良くなってきて、なんだか分からなくなってきた頃、さわさわとそーちゃんの手があちこちを這いまわる…え…?
「そっ…そーちゃん…?」
「今度はちゃんと覚えとくから、もっかい…」
「…………!!!」
「な?大人だろィ?」
…お姉ちゃん達の嘘吐き…助けてくれるって言ったのに…
凄いご機嫌なそーちゃんに手を引かれて居間に行くと、お姉ちゃん達がにこにこ笑ってた。
全部分かってるみたいで…凄く…恥ずかしくて、ちゃんと顔見れないよぅ…
「俺、酒止めやすんで。後、パチ恵嫁に貰いやすから。」
「へぇっ!?」
責任って…そういう…責任…?
「ね?上手くいったでしょ?」
にっこりと笑うお姉ちゃん達が私にウィンクする。
…どこまでが2人の計算の内だったんだろ…?
まさか、私の気持ちとかそーちゃんの気持ちとか、全部分かってたのかなぁ…?
だとしたら、凄過ぎるよ…
ハイタッチしてワイワイと盛り上がってる3人を見ていると、楽しそうで。
皆の笑顔を見てると幸せで。
私だけに向けられた、そーちゃんの柔らかい笑顔が嬉しくて。
1人で照れているのがバカらしくなって、全部これで良かった、って私は大好きな人達に駆け寄った。
END
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