俺が教室に着いた頃にはHRは終わってて、近藤さんに、コラっ!と怒られた。
でも、何にも頭に入ってこねぇ…
歩いてる間も、今この瞬間も、アノ女の顔が頭から離れねェ…

何だ、コレ…?

俺ァどうしたんでィ…
ふわりと笑ったあの顔も、真っ白いパンツも、でっかくて柔らかいおっぱいも、全部俺の腕で囲って閉じ込めてぇなんて…
他の誰にも見せたくないなんて…

「あれ?沖田君、顔赤いよ?風邪でもひいた?」

隣の席の山崎が、俺の顔を覗き込む。
…コイツなら判っかねぇ…常に悩んでそうだもんな。

「ザキィ…オメェ、気が付いたら誰かの事考えちまってて、他の事考えられなくなった事なんて有るかィ…」

俺がそう聞くと、山崎が固まった。

「えっ…?沖田君判んないの?それは…イヤ、でも沖田君だし…」

何でィ、何か失礼な事考えてやがんな…

「あのね?その人の事思ったら胸が暖かくなったりとか、心臓がどきどきしたりとか…しない…?」

そう言いながら、おそるおそる、って感じで山崎が俺の顔を覗き込む。

アイツの事考えると…?
おっ、ドキドキってのは、すらぁ。
胸が暖かく…?
ふわりと笑った顔を思い出すと、何だか幸せな気分にならぁ。

「…なるな…」

俺の顔を覗き込んでいた山崎がにへらっ、と笑って、肩をぽんと叩く。

何かムカつくなぁ…

「沖田君、それは恋だよ!そのヒトの事好きになっちゃったんだよ!!へぇ〜っ、アノ沖田君がねぇ…皆の王子様なのに…大変じゃない?その娘。」

「知るか。何が王子でィ。」

「ねっ、ねっ、誰?誰なの?そのお姫様!」

山崎が意気込んで聞いてくるけど…そう言えば…

「知らねぇ…」

「…へっ…?」

「どこの誰だか知らねぇ。」

山崎が、ぽかん、とする。

「えぇぇぇぇっっ!?誰だか分んなかったら告白できないじゃんっ!!」

「そーですね。」

俺が某お昼の番組の客みたいに受け応えても、山崎は全く無視だ。

「沖田君はその娘とお付き合いしたくないの?一緒に居て、手を繋いだりキスしたり…えっちしたりしたくないの!?したいよね!?」

…したいかも…
俺がコクリと頷くと、山崎がはぁーっ、と溜息をつく。

「じゃぁ、告白しようよ…で?誰?」

「えーと、パンツが白くておっぱいがでっかい。」

「アンタその娘に何したのォォォォォォォォォ!?」

山崎が、怖い顔で叫ぶ。
何でィ、俺は何もしてねぇよ。アイツが勝手に転んだんじゃねぇか…
俺がぷいっ、と横を向くと、又溜息をつきやがる。
山崎のクセに生意気だな…

「それ以外は?」

「黒髪でメガネ。」

「へぇ…えーと、黒髪でメガネで巨乳…もしかして、おさげにしてなかった?」

山崎が鞄から黒い手帳を取り出して、ぱらぱらめくりながらとある1ページで手を止める。

「おー、三つ編みだった。」

「じゃぁパチ恵ちゃんだ。2年C組志村パチ恵ちゃん。あ、チャイナさんのお友達だよ?」

…すげぇな山崎…その手帳には何が書いてあるんでィ…
しっかし…チャイナの友達かよ…
俺が嫌な顔をすると、山崎があはは、と笑う。

「パチ恵ちゃんは、大人しくて良い娘らしいよ?」

「そりゃぁ判ってる…」

自分の方がすっ転んでるってェのに、俺の心配しやがったし…あ、またドキドキしてきた…

「でもねぇ、パチ恵ちゃんは難しいよ?チャイナさんが付いてるし、坂田先生も結構ガードしてくるんだよねー。何より…アノ、志村妙さんの妹さんだしねー…」

「え!?あのゴリラ女の妹…?」

志村妙は知ってる。
近藤さんが惚れて、常にストーキングしてボコられてる女だ…アレの妹か…

「意外だよねー、でも顔は似てるよね?胸は似てないけど。」

なにげに失礼だな、山崎。チクったらボコられるぞ?コイツも。

「そんな事ァ関係ねぇ。そっか、じゃぁさくさく告白とやらをして、アノやわっけーの揉み放題になるかィ。」

「だからアンタ何したの!?」

「別に何もしてねぇよアイツが勝手にぶつかってきて転んだんでィ。」

そう言うと、山崎がじとっ、と俺を見る。コイツ…信じてねェな…?

「まぁ、良いけど…精々頑張って下さいね?無理だと思いますけど。」

山崎が、にっこり笑う。
…何かムカツクなぁ…ま、良いか。
さて、C組にでも行ってきやすかね。

じわりじわりと近付いて、必ずアイツを手に入れてやる…


END


hiraiken/202020