「桜っ!飛び蹴りしちゃ駄目でしょっ!」

僕が怒って桜を掴もうとすると、横から手が伸びてきて桜を抱きとめる。

「よーし、良くやったィ桜!山崎はなぁ、まだ新八を狙ってんだぜぃ?気ィ付けなきゃなぁ。」

「おとーさん!」

「あっ、ばかおやじ!」

総悟さんを見た風樹がとたとたと駆け寄ってぎゅうと足に掴まる。
桜は振り返ってぎゅうと抱き付く。
ははは、と笑った総悟さんが、桜を抱きしめて風樹の頭をゆっくり撫でる。

「ばかおやじがたよりないからさくらがやまざきをやっつけたんだぜぃ?なのにしんぱちおこった!」

桜がむぅっ、と怒って総悟さんに言う。

「俺ァ褒めただろうが。俺が居ない間はオメェらがお母さん守ってやるんだもんな?」

「おう!さくらはつよいんだぜぃ!!」

得意気な顔の桜と、しょんぼりした風樹。

「おと−さんごめんなさい…ぼくさくらちゃんみたいにとびげりできなかった…」

総悟さんがにっこり笑ってしゃがみ込む。
風樹もぎゅうっと抱き込んで、2人の頭を撫でる。

「そんな事ねぇよ?風樹もちゃんとお母さん守ってたぜ?山崎の気を新八から逸らしただろが。」

「おー!ふーきかしこい!!

桜が感心して風樹の頭を撫でる。

「ぼく、おかあさんまもった?」

「おう、守った!」

2人が笑うと風樹も笑う。
あー…悪い事なんだけど…良いお父さんだし…
怒るのは後にしよう…
僕は、いつの間にか復活して隣で複雑な笑いを浮かべてる山崎さんに、慌てて謝る。

「やっ…山崎さんすみません!ウチの子達が失礼しましたっ!!」

「やー、良いよ良いよ。2人とも元気でなによりだよ。」

あはは、と笑って流してくれる。良い人だなぁ…

「ところで山崎さん、総悟さんに何か用が有ったんじゃないですか?」

「あ、そうだ!副長に沖田隊長連れて来い、って言われてたんだった!…って痛っ!」

「やまざきー!しんぱちにさわるなー!」

「痛っ!触ってないよ、桜ちゃん…」

桜が又、山崎さんに蹴りを入れてる…
もぅ…いい加減に…

「やまざきさんておとうさんよりおにいさんなのに、がくしゅうのうりょくないですね。」

風樹が、凄い笑顔で山崎さんに言い放つ。
ふっ…風樹が黒いぃぃぃぃぃ!?すっごい厭味だよっ!

「うわっ…風樹君、ほんっと新八君に似てきたねー…」

引き攣った笑顔で、山崎さんが蹴りを入れてた桜を抱きあげて、風樹の頭を撫でる。

「山崎さん…?それ、どういう意味ですか…?」

「わっ!すみませんっ!!そういう所が似て…って何でもありません…!」

失礼だな。僕はちゃんと笑顔で言ってるよ?
慌てて桜を降ろした山崎さんが、後ずさりながら玄関のほうに向かう。

「たっ…隊長!早く屯所に戻って下さいね!副長が呼んでますよ!!じゃあね、風樹君桜ちゃん。」

後ずさりながら手を振って、凄いスピードで帰って行く。
忙しい人だなぁ。

「総悟さん、土方さんが呼んでるそうですよ?ちゃんとお仕事行って下さいね?」

「おう、コレ食ったら戻りまさぁ。」

いつの間にか総悟さんが台所でドーナツを食べてた。
お茶を入れてあげると、グイッと飲む。
総悟さんが凄い勢いでドーナツを平らげて、ぱんっ、と手を合わせて

「ごちそーさまでした!」

と言うと、子供達も真似してぱんっ、と手を合わせて

「「ごちそーさまでしたっ!」」

と言う。
あははっ、可愛い!
そういうトコはどんどん真似して欲しいのにね。

「じゃぁ行ってくらぁ。おめぇら新八頼むぞ?」

「まかせろぃ!」

「ぼくがんばる!」

2人が胸を張ると、総悟さんが2人の頭を撫でる。

「新八も2人を頼むな。行ってきやす。」

僕にちゅっ、と軽くキスして、さっさと出て行ってしまう。
もぉっ!子供の前なのにっ!
僕が赤くなってほっぺたを押さえてると、桜と風樹がえへへっ、と笑う。

「おとーさんとおかーさんらぶらぶだねっ!」

「えろおやじでぃ!でもしんぱちぃ…うれしいの?」

桜と風樹がとてとてと走ってきて、きゃー、って言って僕の足にしがみ付く。

「うん、お母さんはお父さんの事大好きだから嬉しいよ?」

僕がしゃがみこんで2人を抱きしめると、2人もぎゅうって抱き付いてくる。

色々不安も有るけれど、すっごく幸せです!僕ら。


END