でもその日から、待ってても待ってても姐さんからのれんらくは無かった。

何でだよ…新八、そんなに怒ったのか…?
俺…うそなんかついてないよ…
ちゃんと大人の新八に逢ったんだ!
大人の俺たちは結婚してたんだ!!
それに、新八もお嫁さんになってくれるって言ったのに!!!
新八の方がうそつきじゃないかよ!!!!!

そんなに…俺の事きらいになったのかなぁ…?

俺にあいたくないのかなぁ…?

俺は…あいたいな…


新八にあえなくて元気が出なくて、道場にも行かなくなった俺を心配して、近藤さんと姉上が新八のようすを見に江戸に行った。
本当にきらわれてたら、どうしよう…
もうくるな、って言われて帰ってきたらどうしよう…

心配でこわくて、布団の中で丸くなって2人を待ってると、帰ってきた2人はやさしく俺をなでてくれた。

「そーちゃん心配しないで?新ちゃんは凄く元気みたいよ?」

「そうだぞ総悟!毎日元気に寺子屋に通っているそうだ。」

「…でも…姐さんきげん直ったられんらくくれるって…」

そーっと布団から顔を出すと、近藤さんの大きい手が俺の頭をなでる。

「毎日友達と一杯遊んで、帰ったら疲れてすぐに寝てしまうそうだ。」

「新ちゃん楽しそうだったわよ?私達には気付かないくらい夢中で遊んでいたわ。」

姉上の事…大好きだったのに…
気付かないなんて、俺たちの事忘れちゃったのか…?

「もう怒ってないんじゃないか?今度の休みの日に遊びに行ったらどうだ?」

「そうね!そーちゃんの顔を見たらきっと新ちゃん喜ぶわよ?」

「…でも…もう新八俺の事忘れてるかも…」

「そんな事無いわよ。新ちゃんはそーちゃんのお嫁さんなんでしょ?」

「…うん…」

「じゃぁ大丈夫!逢いに行ってらっしゃい。」

「…うん…」



次の日曜日、俺は又新八にあいに行った。
姉上が姐さんに電話しといてくれたから、新八今日は遊びに行かないで家にいるはずだから…

なつかしい新八の家に着いて呼び鈴をならすと、とてとてと足音がする。
あ…新八…
ちょっとだけきんちょうして戸が開くのを待ってると、ガラガラと音がして新八が顔を出す。

「…新八…俺…」

そっと声をかけると、新八の顔がふくれる。

「そーくん何しにきたの?ぼくまだおこってるんだよ?」

腕を組んで俺をにらんでくる…やっぱりもうダメなんだ…

「…そっか…もう俺の事きらいになったんだな…」

もうダメなんだ…
もう新八は、俺に笑った顔なんか見せてくれないんだ…
きらいに…なったんだ…

「そんなこと言ってないよ!そーくんが…」

「…じゃあな…」

「え!?そーくん…」

振り返らないで、そのまま走る。
未来の俺は、ちゃんと結婚したのに、何で俺はうまくいかないんだろう…?
どこかダメだったのかなぁ…?
もう…あえないのかなぁ…?

カッコ悪いけど、ボロボロ涙が流れてくる。
侍が泣くなんて情けないけど、でも今日はしかたない。
新八しか好きじゃない。
新八しか好きになれない…

あーあ、もう人なんか好きにならないや…





「…なんだよ、そーくんのバカ!ちゃんとごめんなさいしたらゆるしてあげるのに…つぎにそーくんが来たら、ぜったいごめんなさいさせてぎゅーってしてあげるんだ。みんながいたらそーくんがへんなひと、って言われるから…ないしょでぎゅーしてあげるからね!」


「新ちゃん大変!父上が!父上が!!」


その日から数カ月後に、姉弟の父は亡くなる。