「沖田様は僕のピンチを救って下さいました!参拝に来ていた方達の願いもちゃんと叶えていたし…そんな試験…」

「試験官はお前だ。その後の奴等はお前の目前に顕れなかっただろ?すぐに落とされんのが判ってたからだ。」

…僕…?
僕が…何を…?
僕が沖田様を…どうしたって…?

「…総悟が何言ってたか考えろ。俺がやれるヒントはそんだけだ。」

土方様が、業務用マヨネーズを大事そうに抱えて社に帰って行こうとする。
そんな…!
これだけじゃ…僕は…

「そんな…僕…僕が沖田様に何かしたんですか…?そりゃ…喧嘩とかしましたけど…でも…でも僕は…!」

僕は諦めきれない!
僕は…

「僕は沖田様に逢いたいんです!これからも、ずっと…毎日!!」

『なんで…ですかィ…?』

沖田様…っ!?
きょろきょろと辺りを見回しても、目立つ色の髪は見えない…
土方様を見ると、苦笑いしている…

「僕は…僕は…」

『…って言えよ、新八ィ…』

懐かしい気配…
ふわりと暖かい…これは…

「沖田様…沖田様…っ…」

『そりゃ、残念…』

あ…

「僕はっ!沖田様の事が…好きですっ!あいして…っ…ます!!ずっと…一生っ…一緒に居たいですっ!!」

空に向かって思いっきりそう吐き出すと、ふわりと揺れる栗色の髪…
大きく手を広げると、安心したような微笑みが目の前に一杯になる。

「おっせーよ、新八ィ…」

「煩い…っ…説明ぐらいしろ…ばか………逢いたかった…です…」

ぎゅうっと抱きしめあうと、その暖かさに安心して全身の力が抜ける。
畜生…なんか負けた気分だ…

「新八が俺に勝てる訳ねェだろィ。俺ァ神様だぜ?」

「違います!惚れた弱みです!」

「…そんなん言うなら俺ァ新八には一生勝てねェや…すんげー惚れてやすから。」

「僕のが勝てないですっ!」

お互い言い合って、おかしくなって笑い合う。
そっと優しい唇が降りてくるんで、僕らは深いキスをした。



それからは、毎日沖田様が一緒で。
参拝の方々はやっぱり女性の方が多くって…

「…流石、恋愛成就の神様…」

「凄ェだろィ?これからは縁結びの神社にしてやらァ。」

「そうですね。神主が身をもってご利益知っちゃってますからね…説得力有りますよ。」

「違いねェ。」

あはは、と笑い合ってると、今日も銀さんと神楽ちゃんがやってくる。

「新八ぃー!おはようネー!!…ドSまだ死んでなかったアルか…」

「煩ェエセチャイナ。新八が泣いちまうからねェ、俺は死ねねェよ。」

沖田様は普通に皆の前に姿を顕わすようになった…あれ…?神主以外には見えないんじゃ…?

「…ちょいとズルしやしたからねィ…修行なんだそうでさァ。」

ちゅ、と音を立てて、きっ…キスしていきやがった!?

「ドS!?テメー殺す!!」

「出来るもんならやってみなぁー」

…ここ最近で、すっかり見慣れた光景になった追いかけっこが始まる。
あー…何も壊さないでくれると良いんだけど…無理だろうな…

「新ちゃん大変だね〜…ま、頑張れ。」

ニヤリ、と笑って銀さんが勝手にウチのご飯を食べ始める。
…あぁ…色んな意味で、大変だよ…

大騒ぎな家を出て、そっと業務用マヨネーズを社に奉納すると、土方様の苦笑いが見えた気がした。

『お前が選んだんだろ?』

はい、そうです。
でも後悔はしてませんから。

『あの馬鹿宜しくな』

任せて下さい、世界一幸せにしてみせますから。

そう誓うと、宜しくな、と沢山の手に頭を撫でられた気がした。

「おめーら馬鹿言うねィ、俺が、新八を幸せにしてやりまさァ」

どこからともなく顕れた沖田様が、僕を抱き上げて走りだす…え…?
くるりと振り返ると、後ろからは鬼の形相の神楽ちゃん…

「ちょっ!まだやってたんですかアンタらっ!?神楽ちゃんも!ちゃんと働かないとご飯あげまないよ!!」

「すっ…すぐ用意するネ!」

僕が怒ると、すぐに神楽ちゃんが社務所に向かう。
ご飯が関わると素直なんだけどな…

「…沖田様は…?」

「へいへい、じゃぁ今日も可愛い嫁さんの為に働くとしやすかね。」

「はい、頑張って下さいね。」

ちゅ、とほっぺたにキスすると、にっこりと笑った沖田様が僕を持ったまま社に向かう。
…あれ…?この顔は…なにか企んで…

「そんな可愛い事されちゃぁ、このまま仕事なんざ出来やせん。その前にいっぱ…」

「怒りますよ?」

僕の拳固がクリーンヒットした頭を撫でながら、しぶしぶ沖田様が境内の掃除に向かう。

『…なんか…悪ぃ…』

「…いいえ…」

色々有るけれど、惚れた弱みですから…
毎日一緒に居られるのが、凄く幸せですから。
だから、安心して下さい。

青く澄み渡った空を見上げて、僕も沖田様を追いかけた。


END