首筋にキバをめり込ませて、体液を流し込む。
その分少しだけ血を口に含むと、目の前に光が飛ぶ。

な…んだコレ…
今迄口にしたどれよりも…
愛した女性のものよりも…美味しい…

ごくり、ごくりと喉を鳴らして、気が付けば僕は致死量を遥かに超えた量を僕の体に流し込んでいた。
…やってしまった…
如何な人狼といえども…殺してしまった…

抱き込んでいた身体をそっと離すと、ぱさり、と軽い音を立てて沖田さんであったモノが崩れ落ちる。
どうしよう…僕は…僕は…

ぽろり、と零れた涙がソレに落ちると、しゅるりと動いたソレが僕のお腹を喰い千切る…何っ!?
そのままするりと伸びてきた腕が、僕を捕らえて締め上げる。

「な…っ…・!?」

「さいっこーにキモチ良かった。お前さん、俺に惚れてるだろ?」

とろん、とした瞳で覗き込まれて…コレは抱き込まれてるのか…?
ってかソノ顔止めろっ!ドキドキするだろっ!?

「何をふざけた事を…!」

「俺ァ聞いた事有るんですぜ?吸血鬼が血を吸うのは性行為なんだろィ?」

「ソレは美女限定ィィィィィィィィィィィ!!!」

激しく否定する!
ソコは激しく否定するっ!!

「照れなさんな。夢中で俺の血ィ吸ってる時の表情、色っぽかったですぜィ?」

「んなっ…照れてなんか…っ…!」

大体、今のアンタの顔の方が色っぽいからなっ!
そんな事…言ってやらないけど…
って、ギャァァァァァァァァ!
何腰擦りつけてきやがるんだコイツっ!?ヤなモン当たってるっ!!

「はーなーれーろー!」

力の限り押しやるけど、何だこの馬鹿力っ!
ビクともしないよっ!!

「あんなに激しく吸ったくせにィ、俺ァ新八くんなら良いですぜ?」

「違ぇよ馬鹿!僕はアンタを下僕にしようと思ってだなぁ…」

「それなら大丈夫でィ。俺ァもうお前さんの肉にメロメロでィ!」

パタパタと尻尾を振りつつ、又僕の顔を舐めてくる。
頬の肉ぐらい持っていかれるかと思いきや、カクカクと腰を擦りつけられる…
ギャァァァァァ!色んな意味で食べられるぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!

「なっ!ちょっ!!アンタ人狼なんだろっ!?なら僕の従属じゃないかよっ!やーめーろーっ!!」

「過去はどうだったか知らねェが、今俺ァお前さんの下につく気はねェよ。むしろ新八くんが俺に従属しなせェ。性的な意味で。」

「嫌だねっ!太古の昔から人狼は吸血鬼の下僕だっ!」

「そんなん知らねェや。実力で屈服させてやりまさァ。」

何かうやむやになってるけど、僕の力が全然効いて無いのか…?この人…
もう一回瞳をさらしたままギラリと睨みつけると、沖田さんがニヤリと笑う。

「良いねェ、その瞳。Sを屈服させてこそのドSでさァ…んじゃ、目茶苦茶気持ち良くして屈服させてやりやしょうかねェ…」

ぺろり、と僕の首筋を舐めて、見つめる瞳が色を帯びる…ってまさか…まさか…

「ちょっ…まさかこんな所で…」

「新八くんは我儘だねェ…んじゃ仕方ないんで場所を移しやすか。」

クスリ、と苦笑して、僕を抱えて物凄いスピードで走りだす。
苦笑した顔はカッコいいけど!カッコいいけどっ!!

「イヤイヤイヤ!場所とかそんなんじゃ無くてっ!止めっ…止めろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」

「安心しなせェ、俺のテクでメロメロにしてやりまさァ。」

「安心出来るか馬鹿ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」



そのまま僕はどこぞのホテルに連れ込まれて、色んな意味で食べられた…
明け方まで続いた行為は如何な満月だろうと激し過ぎて、体力を根こそぎ持っていかれてもう指一本動かせない。
ぐったりと倒れ込んだまま、隣に寝転がる体力馬鹿をジロリと睨みつける。

「いくら再生するからって、食べられたら痛いんですよっ!」

「だって新八くん美味ェんだもん。お前さんだって散々俺の血吸ってんじゃねぇか…」

「…だって美味しいんだもん…」

何でそんなに美味しいのかなんて…薄々気付いてはいるけど認めたくない。
だって沖田さんは男の人だし、人狼だし…

「それって好きって事だろィ?」

嬉しそうな、自慢気な、なんともムカつく笑顔を僕に向けて小首を傾げる姿が可愛いなんて…
あぁ!確かに僕はすっかりアンタを好きになってしまっているよ!
でも、僕だけがそう想ってるなんて何だか癪じゃないか…

「俺ァ、新八くんにメロメロなんですけどねィ。新八くんは違うんで?」

…そんなに簡単に…言ってくれるなんてズルイじゃないか…
その上そんな不安げな顔されたら…

「…僕だってアンタにメロメロですよ…」

そう言ってあげたくなってしまうじゃないか…


嬉しそうな笑顔でぎゅうぎゅうと抱きしめられて…
幸せだなぁ、なんて思ってしまったら、これから起こるであろう色々な面倒事も、なんとか出来ると思ってしまった。

だから…

「恋人…になったんですか?僕達?」

「そうですねィ…本当は…」

気になる台詞を途中まではいて、僕に覆いかぶさるようにして沖田さんは眠ってしまった…
確かに疲れたよね…
起きたら夢だった、なんて僕はもう認めてやらないからなっ!覚悟しろよ?
目の前の身体を抱きしめて、僕も一時の眠りについた…



続く