MONSTER・2



朝日が僕の顔を照らして、意識が覚醒する。

僕を包むコレは何だろう…
あったかくて、気持ち良くて、安心して…

ここ数百年感じた事が無いほどの、幸せな気分…
僕は…どうしたんだろう…?

まぁ、深くなんか考えないでもう少し眠ろう。
だってこんなに気持ち良いんだもの。

ふかふかの布団にくるまって、もう少しだけ寝ようと寝返りをうつと、何かにぽすりと顔が当たる。

…おいしそうなにおい…

………あれ…?きのう…処女でもコマして………

そこまで考えて、昨夜の事を全部思い出す。
うわっ!違うっ!!ヤバい!!!昨夜は僕、沖田さんと…!!!!

バッと目を開けると、目の前には幸せそうに涎を垂らして眠りこける沖田さん。

…わ…こんな無防備な顔…初めて見た…
すごく…可愛い…
どうしよう…その寝顔を見てたら、心臓がドキドキいって、物凄く愛おしくなってくる…

そっと近付いて、柔らかそうな唇にキスをしようとすると、もぞもぞと動いた沖田さんが力の限り僕を抱きしめる…

「ぎゃぁぁぁぁぁーっ!!!」

折れる!砕ける!!背骨がぁっ!!!
ってか今僕何しようとしてた!?
正気に戻してくれて有難う沖田さんっ!!!

「おはよーごぜーやす…寝起きに一口…」

ふにゃりと笑ってそう言って、僕の首筋に噛みついてこようとする…
その顔が可愛くて…思わずそろりと腕を背中に回してしまう…

「ダメですっ!太陽が昇ってるうちはそんなに簡単には回復しないんですっ!!」

かぷりと甘噛してきた顔を、なんとか押しのけながら叫ぶと、ソコをぺろりと舐められる。

「んあっ…!」

「そりゃ残念。俺ァ大丈夫なんですがねィ…飲みやす?」

ニヤリと笑って首を差し出されるけど…

「いっ…いらないです。」

僕だけなんて、そんな事出来ないよ…
美味しそうだけど…すっごく美味しそうだけど…

ちらちらと見てしまってすぐに目を逸らす。
すると、クスリ、と笑った沖田さんが僕を抱きよせて、首筋に僕の顔を持っていく。

「ほい。」

「そんなっ…僕だけ貰うなんて、そんな事出来ません!後で何要求されるか分かんないですし…」

「そんな事しねェよ。昨夜あんだけヤったんだ、俺らァもう連れあいだろィ?」

…つれあい…?
って!?

「はぁっ!?だって僕男ですよ!?沖田さんだって男じゃないですかっ!!」

僕がそう叫ぶと、沖田さんがそおっと離れていく。
なんだかそれが、凄く寂しい…

「新八くんは…遊びだったんですかィ…?あんなに激しく愛してくれたってェのに…」

捨てられそうな子犬みたいな瞳でじっと見上げてこられると、物凄く悪い事を言った気になるけど!でも本当の事だし!!

「遊びとかじゃなくて!僕は血を吸っただけでしょうが!!」

「吸血鬼の吸血行為は性行為だって聞きやした…」

「だから!それは美女限定ィィィィィィィィ!男相手にそんな意味はありませんっ!!」

僕が力の限り叫んでも、沖田さんは怯む事無く小芝居を続ける。

「そんな事ねぇよ!すっげーきもちかったもん。一瞬で完勃ちだったもん。」

「もん、って言うなーっ!」

「そうやって怒鳴ってうやむやにするつもりなんですねィ…ヒデェや!俺を弄んだんですかィ!?」

ぎゅっと自分の身体を抱きしめて、責める様な瞳で僕を見る…
いやあのだから…

「弄ばれたのむしろ僕ですからね!?いくらドSだからって、満月の晩の僕じゃなきゃ死んじゃいますからね?あんなの…」

昨日の行為を想いだしてしまって、顔に血が上る。
僕を攻める恍惚とした表情が壮絶に色っぽくて…それだけで僕は1回…

「俺ァ誰にでもこんな事してる訳じゃねェんですぜ…?新八くんだから…」

すっと近付いてくると、そのままちゅうっと唇を吸われる。
すぐに離れて、切なげな瞳で見つめられたら…僕は…

「好きなんでさァ…本当はずっとずっとこうしたかった…」

今度はそっと、壊れものにでも触れるように、柔らかく抱きしめられる。
そんな優しくされたら…ぐらりと傾いてしまいそうになる…沖田さんの方に…
でも…そんな事は…

「でも…僕らは同族だし…男同士だし…」

「そんなん関係有りやせん!俺の血…不味かったですかィ…?」

「…今まででいちばん美味しかったです…」

…本当は分かってる…
何よりも、僕にとってはソレが1番で…

「子作りだって、俺達ァしなくたって良いじゃねェですかィ…」

…あ…

「そういえばそうですね…あんまり人間生活が長かったんで、忘れてました…」

「だろィ?それに俺ァお前さんと同じくらい長く生きるんでさァ、これからの人生、新八くんを1人にはしやせん。」

あぁ、そうだった…
今までどんなに愛しても…必ず皆僕より先に逝ってしまった…
でも…この人なら…

「やくそく…してくれますか…?絶対僕を1人にしないって…」

「当たり前でィ!新八くんが嫌だって言ったって1人になんかさせやせん!」

そう言って、深いキスをくれる。
だから僕は…恋人にしかしない吸血を沖田さんにしてしまう。

「…すげぇ…きもち…肉喰えないなら…新八くんを喰わせて下せェ…大丈夫…今度は優しくシやす…」

そう言い終わらないうちにベッドに押し倒されて…本当にベタベタに甘くてとろとろに優しくされてしまった…
そんな事されたら…僕はもう貴方から離れられなくなってしまうよ…?

「新八くん…好きでさ…連れあいに…なって下せェ…絶対1人にはしやせんから…だから…」

こんなにされてからそんな事言うなんてズルイ…

「僕も…僕も好きです…沖田さんの事…やくそく…ですからね…?絶対1人にはしないで下さい…」

ぎゅっと僕から抱きつくと、驚いた顔の沖田さんがとても幸せそうな顔で微笑む。

「やくそく…でさァ…」

「やくそく…です…」

ひどく甘くて、ひどく幸せで。
たった1日で、僕はこの人に心を奪われてしまった。
これからの長い時間を一緒に過ごしていくのは、些か不安が募るけど…

でも今は、この幸せに包まれて、もう少しだけまどろんでいたい…


続く