軽くそう言うと、土方さんが大きく溜息を吐く。
「万事屋の2人も…そうなんだな…?」
「はい…あの2人は…」
「やっぱりな…お前…白髪に襲われたのか…?」
僕の話を聞かないで、土方さんが怖い不雰囲気になるけど…
「いえ…僕が襲った方です…」
あはは、と笑いつつ僕が言うと、土方さんが酷く慌てる。
「なっ…!?オメェ…まさか…」
「はい…僕は真祖です。」
そう言うと、土方さんは頭を抱える。
うん…そうだよね…
「ウソだろ…?眼鏡が真祖!?イヤ、それはねぇだろ…」
…そっちかよっ!?
「土方さん失礼ですねィ。だからマヨラーは駄目なんでィ。」
ムッとした沖田さんが、僕を囲う腕に力を込めてぎゅっと抱きしめてくれる。
別に…落ち込んでないのに…優しい人…
「イヤ!だったら尚更駄目だろお前ら!真祖なら古の取り決め事を知らん訳じゃないだろ!」
ジロリと睨まれても…そんな事もう知らない。
「そんな事知ってます。でも…好きになってしまったんです、何よりも。」
僕が言うと、嬉しそうに笑った沖田さんの腕に力がこもる。
だから僕もギュッと抱きしめ返す。
「俺も好きでさァ…誰が何て言おうと絶対ェ離しやせん…」
「沖田さん…」
「総悟、でさァ…」
「そうご…」
僕らの顔がそっと近付いて、もう少しで唇が触れるかと言う時に、あわばばば!と変な声が2人を遮る。
何だよ煩いなぁ…
「おっ!おめぇらこんな所で何するつもりだ!!認めん!!吸血鬼なんか認めんぞ俺は!!大体…」
「土方さんに認めてなんざ貰わなくて結構でさァ。」
「そう言う訳にいくか!俺達はな…」
「おすわり。」
昨夜は上手くいかなかったけど…もう1回試してみると、近藤さんと土方さんががくりと傾ぐ。
あ…上手くいった…
やっぱり効かないのは沖田さんだけなのか…
「てめぇ、メガネ…」
悔しそうな土方さんの眼は僕を射ぬきそうに鋭いけど、別に怖くない。
跪く2人を上から見下ろして、にっこりと微笑む。
「やっぱり古の盟約はまだ効果が有るんですね…じゃぁ話は簡単です。僕が、決めたんです。意味分かりますよね?」
にっこりと笑うと、土方さんの表情が悔しそうな物に変わる。
本当はこんな手は使いたく無かったけど…でも…
「それは判る…判るが…」
今迄大人しかった近藤さんが、ジッと僕を見る。
何…?凄く真剣な顔…
「このままじゃ…俺達の代でこの血は途絶えてしまう…」
今迄怖かった土方さんが、項垂れてしまう。
え…?終わりって何…?
「でも…真祖じゃなくたって子孫は残せますよね…?」
「残念だが、俺達は長く生き過ぎててね。もう、総悟だけなんだ…」
近藤さんは、諦めたようにわらって言うけど。
それは…駄目だ…
僕らの我儘で、血を絶やすなんて…駄目だ…
「へー…なんか、めんどくさい…そんな重い事になってるなんて思いませんでした。そういうのはもういいです。止めます。止め止め。」
出来るだけ軽く言って、部屋を出ようと歩きだす。
昨日の今日だし…すぐに忘れられるよね…
「待てよ新八ィ!」
歩きだした僕の腕を、沖田さんがギシリと締め付ける。
痛い…
凄い力が、必死さを嫌というほど僕に知らしめる…離れたくなんかない…でもっ…!!
「…離して下さいよ、沖田さん…アンタがそんなに面倒な問題を抱えてるなんて知ってたら、関わって無かったですよ、僕。」
「そんな…!俺の連れあいになるって言ったじゃねェか!!」
「嫌ですよ。一族の血を絶やしてまでなんて、僕には重すぎます。美味しい血、有難う御座いました。」
微笑んで、すぐに冷たい目に変えて腕を振りほどく。
沖田さんの悲しそうな、必死な瞳を見ていると、何もかも捨てて縋りつきたくなる。
だから…もう見ない。
「俺は…こんな風にずっと一緒に居てェって思ったのは初めてなんでィ!だから…」
「…だから…面倒くさいって言ってるじゃないですか…しつこいですよ、気持ち悪い。」
ヤバい…涙出た…
こんなの見られる訳にはいかない…
振り向かないでそのまま走り出すと、沖田さんが追って来る気配は無い。
…もう…呆れられたのかな…
その方が良いか…
ぽろぽろと流れる涙もそのままに、僕は万事屋まで走った。
続く
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