MONSTER・5



新八くんは、泣いてた。
アレは絶対ェ、泣いてた。
そんなに俺の事想ってくれてんのに、何でだ!?
何で諦められるんだ!?

大体、俺らがそんな事になってるなんて、俺も知らなかった。
それでも…俺は新八くんを諦めきれねェ。
近藤さんには悪ィけど…この先は…諦めてもらう。

そう言うつもりで近藤さんの部屋に戻ると、そこには山崎も増えてて…
3人で呑気に茶ァなんざ啜ってやがった。
…あれ…?
さっきまでの緊迫した雰囲気は何処行ったんでィ…
アレァ本当だったんですかィ…?

「…近藤さん…アレは…本当なんですかィ…?」

「は?アレ?」

心底不思議そうな顔で俺を見る近藤さんに、じれったくなってくる…

「アレったらアレでィ!アンタらが…その…もう子供作れねェって…」

スゲェ言い辛ェけど…でもソコはきちんと確かめとかなきゃいけねェ。
もし本当なら…子供だけでもどこぞの女と作らなきゃ…な…

「そんな訳無ェだろが。俺らナメんなよ?ガキが。」

俺の決心を知らねェで、土方が憎ったらしいツラで睨んでくる。
…は…?

「なっ…さっき新八にそう言ったじゃねェか!?」

「スマンな総悟。それぐらい乗り越えられないとお前の相手は務まらんと思ってな。」

近藤さんが、さらっとこんな事言いやがったけど…そんな…

「残念だが、新八君にはそんな覚悟は無かったんだろう。その程度なら、近いうちに駄目になるさ。そうなるなら早い方が良いだろう?」

「新八はっ…!優しいから…っ…泣いてたんですぜ!?」

俺が近藤さんに詰め寄ると、いつもならオロオロする筈なのに、今日に限っては平然と茶を啜る。

「近藤さんに当たるな。お前の事なんざ、その程度にしか想ってなかったんだろ、アイツは。良かったじゃねぇか、早いうちに本性が判って。お前は知らねぇだろうが、大体吸血鬼ってぇのは…」

土方がしたり顔でダラダラと何かほざいてると、外がやたらと騒がしくなる。
…何だ…?
外の様子を伺ってると、スパーン!と勢いよく襖が開いて、万事屋の旦那とチャイナとオッサンみたいな恰好をしたデカイ犬がなだれ込んでくる。

「ドS王子居るか〜!?」

「ツラ貸せヨ!!」

大声で叫びながら3人(?)が俺の方に飛びかかってくるんで、さらりとかわすと倒れ込んだ2人が俺を睨む。

「なんなんでィ、お揃いで…」

「テメー!ドS!!よくも新八泣かせやがったな!!!」

「…は…?」

俺に掴みかかってこようとするチャイナを抑えて、旦那が俺を射殺しそうに睨む。
…スゲェ殺気…

「沖田く〜ん、君、ウチの新ちゃんに何したの?事と次第によっちゃ…」

「何って、プロポーズでさァ。」

「「ぷろぽぉずぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!?」」

俺が言い放つと、2人がアホ面になる。
なんでィ、その面ァ…何がおかしいんでィ!?

「新八くんも了承してくれて、先に組に挨拶に来たってェのに…土方の野郎が新八くんに酷ェ事言いやがって…」

「お前かマヨラー!?」

3人(?)が今度は土方に詰め寄ると、呑気に煙草を吸ってた土方が、やたらビビってやがる…ざまぁねェや。

「俺達ぁアイツの覚悟を聞いただけだ。大体、吸血鬼と人狼が上手くいく訳ねェだろ…」

「そうだな。獣臭ぇ犬っコロと、俺ら吸血鬼が仲良くなんざ出来ね〜よな。」

「あぁ?やんのかテメェ…」

土方と旦那がガン飛ばしあってっけど…話がズレてねェか…?
俺が割って入ろうとする前に、チャイナが2人の間に入って土方を睨みつける。

「うるさいネ!新八凄く泣いてたヨ…きっと今も泣いてるネ!!アイツ泣かせるヤツはゆるさないアル!ぶっ飛ばすネ!!」

「…新八くん…やっぱり泣いてたんですかィ!?」

「ボロボロアル!あんな新八、初めて見たネ…」

チャイナが悔しそうに俯く。
そんな状態の新八を想うと、嬉しくて顔がニヤけてきちまう。
新八くんは…俺の事そんなに想ってくれてるのかィ…

「何笑ってるネ!?原因はオマエダロ!?」

「それが嬉しいんでィ。絶対ェ連れあいになって…一生離してやんねェから覚悟しろィ!」

「…本気カ…?」

「あったり前だろィ!」

「じゃぁ、とっとと行くネ!新八買い物に行ったヨ。」

「…すまねェな…」

俺がそう言って走り出すと、万事屋達が近藤さん達に飛びかかった…
まぁ…俺らがそう簡単に殺られる事ァねェか…

何よりも、今は新八だ。
邪魔するモノは何も無くなったんだ…もう逃がさねェ…
待ってろよ…


続く