MONSTER・6
俺としては不本意だが、チャイナと旦那に後押しされて、大江戸ストアまで走った。
でも、タイムセールの場所を初めとして、店内くまなく探したのに新八は居なかった。
…何処…行ったんでィ…
まだ着いてなかったのかと大江戸ストアと万事屋の間を捜しながら走って行くと、いつもの公園のベンチにちょこんと座って顔を覆っている新八を見付けた。
アレは…泣いてる…?
まさか、まだ俺の事を想って泣いてくれてんのかィ…?
だったら…スゲェ嬉しい。
ここまできて逃げられちゃいけないんで、気配を消してそっと新八の後ろに移動すると、グスグスと鼻をすする音がする。
「…沖田さん…」
ボソリと呟いて、袖で顔を拭いて…
やっぱり俺の事、まだ想ってくれてんじゃねェか…!
逃げられないように、後ろから肩を掴んでから声を掛ける。
「新八くん…捜しやした…」
「沖田さん!?」
振り向いた新八くんの瞳から、ポロリと涙が零れる。
そんなモン見せられたら…
俺はぎゅうと新八くんを抱きしめた。
◆
万事屋で2人と話をして少し元気が出てきたっていうのに…
いつも沖田さんを見かける公園に差し掛かって、いつもサボって昼寝しているベンチを見てしまったら、涙が止まらなくなってしまった。
昨夜…と言うより今朝方心に灯った想いだっていうのに、こんなに深く僕の中に入り込んでしまっただなんて…
もしかしたら…僕が気付いていなかっただけで、本当はもっと前から沖田さんの事が好きだったのかもしれない。
このままじゃ、まともになんか歩けないんで、僕はそのベンチに座り込むと、そこはとても暖かくて…
まるでさっきまでそこに沖田さんが居たみたいで…
沖田さんに触れているような気がして…
又、涙が溢れてくる。
こんなんじゃいけないのに…
こんなんじゃ、どこに行ったって涙が出てきてしまうよ…
溢れ出る涙をグイッと袖で拭いて、そのまま掌で顔を覆う。
自分から諦めたっていうのに…女々しいぞ!僕っ…!!
でも…やっぱり好きだ…沖田さんの事、好きなんだ!!
でも…きっともう嫌われてしまった…土方さんから僕らの事聞いて、きっと嫌だって思ってる…
きらわれて…しまってる…
そう思うと、又涙が溢れてくる。
「…沖田さん…」
好きです…
ちゃんと言えなかった言葉を心の中で呟いて、又グイッと袖で涙を拭う。
と、誰かが後ろから僕の肩を押さえこむ。
…誰っ!?
「新八くん…捜しやした…」
この声は…!
「沖田さん!?」
信じられない…
慌てて振り向くと、そこには優しく微笑む沖田さんの姿があって…
やっと抑えた筈の涙が、ボロリと零れ落ちる。
ふわりと微笑んだ沖田さんの顔が見えなくなって…
僕はぎゅうっと沖田さんに抱きしめられていた…
◆
「沖田さん…何で…?もう僕の事なんか嫌いになったでしょう…?」
なんとかその優しい腕から逃れようとするけど、僕が身じろぐたびに、ぎゅうぎゅうと強く抱きしめられる。
「何でそんな事言うんでィ…俺ァまだ、新八くんを諦めてなんかいやせん。」
腕に力を込められると、僕も沖田さんを抱き返したくなる。
でも…でも…っ…
「ダメですっ…僕は…貴方達の未来を奪うなんて事…出来ませんっ…!!」
好きだけど…沖田さんの事が大好きだけどっ…!
もう話は2人だけの問題じゃ無いんだから…っ…
「あれァ近藤さん達が吐いた嘘でィ!2人が新八くんの気持ちを試したんでィ!!」
「え…?試…す…?」
「そうでィ!本当は皆、子供作れるんでさァ!」
「…そんな…」
頭が混乱して…
でも、触れている腕の温かさは確かなもので…
僕の頬を、又涙が零れ落ちる…
「なァ…俺を諦めないで下せェ…好きなんでさァ…新八君が居ねェと、俺ァ…おかしくなっちまう…」
「…良いんですか…?僕…沖田さんを諦めなくても…良いんですか…?」
「勿論でィ!俺らを邪魔するモンは、何もねェや!!」
「イヤ、性別が有りますけどね…?」
僕がすかさず突っ込みを入れると沖田さんがガックリと項垂れて、僕に体重をかけてくる。
「…そりゃぁ…気にすんねィ…」
くすくすと笑い合うと、幸せだって気持ちが溢れてくる。
肩の上で震える沖田さんの細い顎がこそばゆい。
どうしても顔が見たくなってぐるりと振り向くと、近い所に赤く染まった沖田さんの笑顔。
ひどく愛おしくなって、僕の方からぎゅうと抱きついた。
「もう、誰が何と言っても絶対離しませんから。」
「望む所でィ。」
少し身体を離して微笑み合って、僕らはそっとキスをした。
続く
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