『気になるヒトの周辺でモノを落としてみる』



神楽ちゃんに教わったサイトで言ってる、気になるヒトへのアプローチを実践してみる事にした僕。
廊下で2人でまず初めにどれをやってみようかと相談した結果、授業中に消しゴムを落としてみる事にした。
あの人と僕は、席が前と後ろだから、コレは丁度良い。
…普段は後ろを向いてお話しするなんて事は無いから、ちょっと緊張するけど…
頑張るって決めたから、偶然を装ってお話するにはこれぐらいがハードル高くなくて良いよね!

えいっ!と心の中で気合を入れて後ろの方に消しゴムを転がすと、上手い具合に彼の足元に転がった。
よし!やったね僕っ!

「あ…」

小さくつぶやいて後ろを振り返る。
…ちょっとわざとらしかったかな…?そんな事無いよね…

じっと僕を見て、足元の消しゴムを見た彼が、にっこりと笑う。
うわ…可愛い…

とん、と消しゴムを前に蹴ってくれたのは良いけど…

「わぁーっ!?」

何処まで蹴り飛ばしやがったこの人ぉぉぉぉぉぉぉっ!!!

あぁ、そう言えばこの人ドSだった。

僕の消しゴムは、教壇の台に当たって跳ね返って教室の後ろまで飛んで行った…
わぁ、消しゴムって跳ねるんだ…

「ちょっ!沖田君っ!!アンタ加減ってものが…」

「ワリーワリー強過ぎたー」

「ものっすげぇ棒読みじゃねぇか!悪いとか思って無いだろ!僕の消しゴムっ!!」

思わず習性で突っ込んでしまうと、僕の頭の上にバサッと何かが落ちてくる。

「志村〜、授業中〜」

僕の頭の上に落ちてきたのは、教科書で…
やる気の無い声だけど、その声はちょっと怒ってる…
いくら銀八先生だからって、授業中に突っ込みはヤバいよね…
そろりと見上げると、死んだ魚の目がジトリと睨んでる…

「…すみません…消しゴム落としちゃって…」

僕が素直にぺこりと頭を下げると、後ろの席の人が消しゴムを拾ってくれて、それを銀八先生が持ってきてくれた。

「…有難う御座います…」

立ち上がって、銀八先生と、後ろのコに頭を下げる。
ついでにジロリと沖田君を睨むと、ニヤニヤと笑ってる…

ちくしょう…カッコいい…

僕が座ると何も無かったように授業が再開される。

「眼鏡くーん、静かにして下さーい」

又棒読みで後ろから囁かれるんで、振り返ってジトリと睨むとニヤニヤ笑いの沖田君と目が合ってしまった!
うわ、ダメだっ!顔に血が上ってきたっ!!
慌てて前を向いて教科書を見るフリをするけど、頭になんか入ってこない。
初めて沖田君から話しかけてくれたっ…!

先生に怒られたり、消しゴムを遠くまで飛ばされたりしたけど…
コレはコレで成功だったんじゃないかな…?
だって、話しかけてもらえたんだから!

このまま、もっと頑張って…せめて名前を覚えてもらえるようになろう…


続く