「あの…貴方は…?」
「俺ァ総悟…沖田総悟って言いまさァ。悪い魔女に呪いで眠らされた美姫の噂を聞いて、はるばる東の国から助けに来たんでさァ。」
新八様の手を取りにっこりと微笑む王子に、しかし新八様は寂しそうな顔を見せるのです。
その顔も王子の好みで、激しく心臓を撃ち抜きます。
「そうですか…頑張って下さいね!お姫様、起きると良いですね。」
泣きそうで、それでも微笑む新八様の表情に、王子の理性は焼き切れてしまい、再び新八様の唇を奪ってしまいました。
十分に新八様を堪能した王子は、今度は安心させるように微笑みかけます。
「姫さんはもう起きやした。俺がはるばる起こしに来たのはお前さんですからねィ。なぁ…名前教えてくれやせんか…?」
真っ赤になりながらも、それでもうっとりと微笑んだ新八様に、王子は更にハートを撃ち抜かれます。
もうどうしていいか解りません。
「僕は新八と言います、沖田様…」
「総悟と呼んで下せェ、新八姫。」
「総悟様…」
うっとりと見つめ合う二人はもうお互いに夢中です。
「新八姫、俺ァ今までそういうのに興味はなかったんでさァ。だからこんな事想うなんて自分でも信じらんねェんですがねィ…きっとそれはお前さんに逢ってなかったからなんだって思うんでさァ。なぁ…俺と結婚してくれやすかィ?」
「はい…!はい!もちろんです!!あ…でも本当に僕で良いんですか…?」
「もちろんでィ。お前さん以外にはこんな事言いやせん。」
幸せそうに手を取り合って、頬を染めて口付けを交わした二人は、そのままシーツの海へ………
「新八ィ―――――!無事かァァァ―――!?」
「クソ天パ邪魔すんな!新八無事かァァァ!?」
しかし、そこに怒涛の勢いで駆け込んできた者達がおりました。
新八様溺愛の近衛副隊長の坂田と土方です。
新八様が目を覚ました為妖精の魔法は解け、城の皆も順次目を覚ましていたのです。
そう、順次。
「新ちゃん無事なのー!?」
「お妙さーん!俺達の子供がこれぐらいでへこたれたりなんかしませんよ!!」
「目覚めたならメール欲しいんだにゃん(^_-)-☆」
「新八様ー!」
「新八様ご無事で!?」
………続々と人が集まる中、ベッドに倒れ込んだ二人はそのままの体勢で固まっておりました。
そして、その現場を目撃した城の者達も皆、固まっておりました。
「…あー…新八君、その野良犬はどこで拾ってきたんだ?銀さん怒らないからもう一回捨ててきなさい。」
「イヤ、新八は優しいから迷いこんで来たのを保護してただけだろ。餌でもやったら帰るよな?」
鬼神の如き笑顔で筋という筋を立てた近衛副隊長二人が、いち早く我に返ってそーっと二人に近付きます。
しかし、そんな場面を皆に目撃された新八様は、羞恥のあまり気絶しそうになりながらも愛しい沖田王子に縋りついて、ますます二人を逆撫でしておりました。
「…なんでィオッサン達、新八が怯えてんじゃねェか…」
新八様に縋りつかれて我に帰った沖田王子は、当初の目的だった強者二人を目の当たりにして、ギラリと笑いました。
ですが、新八様が怯えないように優しく額に口付けを落とし、庇うように前に出て前面にだけ全開の殺気を振りまきます。
「おいおい、この野良犬、ウチの箱入り娘にマーキングしやがったよ?」
「躾のなってねぇ犬は、何するか解んねぇからなァ…叩き出さなきゃいけねぇよなぁ…」
ひゅっ、と吐き出された呼気をきっかけに、三人が刀を交えます。
強者との闘いを求めていた沖田王子も、数百年の眠りについていた坂田と土方も、とても楽しそうです。
達人達の闘いは誰も入り込める余地が無く、止める事は出来ません。
しかし、新八様は大切な誰かが怪我をしてしまうのではないかと気が気ではありません。
「そっ…総悟様、この方達はお城の近衛兵です!敵ではありません!!」
「そいつはどうでしょうねェ?新八は苛め甲斐がありそうですからねィ…白髪の方はドSなツラしてやすぜ?黒い方はなんかムカつく。」
沖田王子が刀を引く事は有りません。
「銀さん!土方さん!この方はなんでか眠っていた僕を起こしてくれた恩人です!それに、けっ…結婚の約束をしました!!刀を納めて下さい!!!」
頬を染めて、嬉しそうに恥ずかしそうにそう叫んだ新八様をチラリと見た近衛副隊長達の殺気が更に膨らみます。
「新ちゃん、俺だってこんな事したくね〜よ。でも、コイツがちゃんと新ちゃんを守れるかどうか確かめね〜と。」
「そうだぞ新八。これは近衛副隊長の俺達の仕事だ。」
更に激しくなった闘いに、新八様の瞳から涙が流れます。
それに気付いた沖田王子が一瞬動きを止めたその時、副長達の刀が王子を襲いました。
「「双方、刀を納めよ!」」
三人の間に割り入ったのは、王様とお妃様でした。
素手でやすやすと達人達の刀を受けた二人は、にっこりと王子に笑いかけた後、全開の殺気を叩きつけました。
ちょっとチビりそうになりましたが、それでも王子はなんとか持ちこたえました。
「…あら、倒れないのね…」
「君凄いなぁ!これならウチの子を任せても大丈夫じゃないですか?お妙さん!」
「…そうね…そこそこイケてるし…新ちゃんが良いなら仕方ないわね…」
「有難うございます!父上母上!!」
そっと新八様が沖田王子に並んで二人が王様とお妃様に頭を下げると、お城の皆は口々に祝いの言葉を二人に投げかけました。
しかし、祝福ムードがその場を包んだ時、窓から何者かが飛び込んできました。
「新八ィー!やっと起きたアルー!!」
「新八さん、おはようございます!」
「やっと起きた。」
「神楽ちゃん!そよちゃん!信女さん!」
それは、そっと中の様子を見守っていた妖精達でした。
「新八くーん!良かったよー!!」
「山崎さんも…!…って、皆の前に出てきても大丈夫なんですか…?」
「え…?…あ!」
思わず一緒に飛び込んできた魔女が我にかえると、お城の皆が周りを取り囲んでおりました。
一際にっこりと人の良さそうな笑顔を浮かべた王様が、その笑顔のまま言い放ちます。
「殺れ。」
隣では、菩薩のような笑顔を浮かべたお妃様が親指を立てて、下におろしました。
それを合図に、魔女を囲んだ輪がだんだん狭まってゆきます。
しかし、殺気立つ皆を恐れず魔女の前に何者かが立ちはだかりました。
「やっ…やめて下さい!」
それは、新八様でした。
「山崎さんは僕が小さい頃からいつも一緒に居てくれました!皆はメガネを置いておいたら僕が居なくても気付かなかったくせに!!山崎さんだけはいつだって僕に気付いてくれました!!」
「新八君…」
その言葉に魔女は感動して涙目です。
城の皆はそっと目を逸らしました。
しかし、沖田王子だけはその光景が気に入りませんでした。
ツカツカと二人に近付き、新八様を奪い去って魔女に刀を向けました。
「新八ィ、俺以外のヤツに優しくしてんじゃねェよ。モヒカン女が居なくなったら俺だけのモンになるのかィ…?」
「モヒカンってなんですかァァァ!?山崎さんに何かしたら、僕貴方を嫌いになります!」
沖田王子の手を振り払って魔女の前に立った新八様に、光より早く王子は土下座していました。
「ごめんなさい新八ィィィ!」
「…皆と仲良くして下さいね?僕、ずっと総悟様と一緒に居たいんですから。」
「えっ…それって仲良く出来なかったら俺捨てられるって事ですかィ…?」
「…さぁ、どうでしょう?」
酷いでさァ!酷いでさァ!!と新八様に縋りつく沖田王子を見た城の皆は、なんだか安心して心から二人の結婚を祝福してしまいました。
そしてそれから、なんやかんや全てを魔女の魔法でなんとかして、王様もお妃様も近衛兵達も妖精も魔女も、もちろん新八様と沖田王子も。
皆揃ってお城で仲良く暮らしました。
めでたしめでたし
→