「しんぱち君、剣のけいこしよう!ぼくがおしえてあげるよ!」

きゅうちゃんがはりきって言う。
おんなのこなのに強いのかな?

「ほんと?でも、そーくんもすごくつよいんだよ!このあいだもね、おとなのふりょうのひとたちがにげていったんだよ!」

しんぱちが、じぶんのことみたいにじまんする。
えへへ、てれるなぁ。

きゅうちゃんが、まじめな顔でおれを見る。

「そー君そんなに強いのか?じゃあ、ぼくと勝負だ!」

「いいけど…」

姐さんが道場から竹刀をかりてきて、おれ達がにわで立ち合いする。
きゅうちゃんがちょっと顔を赤くして、しんぱちにむかって言う。

「しんぱち君!ぼくが勝ったら、ぼくのおよめさんになってくれる?」

なっ!きゅうちゃんもしんぱちねらいかよ!しんぱちもてもてだな!!
なんだよしんぱち、ちょっと顔が赤いぞ!?こうなったらおんなのこ相手でもてかげんできないぞ!

おれがむぅ、としてると、こまった顔のしんぱちが、おれの後ろにはしってきて、せなかにしがみつく。

「だ…だめだよ、きゅうちゃん!ぼく、そーくんのおよめさんになるんだもん…」

しんぱちが、真っ赤な顔でおれにぎゅーってする。
かわいいなぁ!
おれがしんぱちを後ろにかくして、きゅうちゃんをにらむと、姐さんがおれをにらむ。

「だめよ、新ちゃん。新ちゃんは男の子なんだから、お嫁さんにはなれないの!九ちゃんが勝ったらあきらめなさい!」

「…じゃあ、おれが勝てばいいんだな?」

おれが姐さんに言うと、姐さんがふふん、とわらう。

「分かったわ。九ちゃんに勝てたら、うちのお婿さんにしてあげる。」

「やくそくだからな!姐さん!!」

おれがそう言ってふりむくと、しんぱいそうな顔のしんぱちが、おれのほっぺにちゅうしてくれる。

「がんばってね、そーくん!」

しんぱちが、たたっ、と姐さんの方にはしっていく。
よーし、力がわいてきたぞ!
姐さんときゅうちゃんのほうをむくと、なんかこわいくうきが2人の後ろにながれてた。

「そー君、しんぱち君に何させてるんだい…?」

「九ちゃん、ボコボコにしてやって頂戴。」

なんだかこわいけど…負けられないぞ!


試合が始まってすぐ、きゅうちゃんがおれに打ちかかってくる。
かるくよけて、後ろにまわろうとすると、きゅうちゃんのからだが消える。

はやい!!

きゅうちゃんは、ちいさいからだをいかして、すごく素早く動く。はやすぎて、なかなかとらえられないよ!
でも、おれもはやさなら負けない!!きゅうちゃんのスピードをかんがえて、もっとはやく動く。
きゅうちゃんがはっとした隙をついて、胴をきめる。

「…一本…」

姐さんんがくやしそうに手をあげると、うれしそうにわらったしんぱちが、おれにだきついてくる。

「そーくんすごい!きゅうちゃんはね、やぎゅうのおんぞうしなんだよ!」

きゃー!とうれしそうにわらうしんぱちをだきしめると、やわらかくてあったかい…よかった!勝ったよおれ!

「ぼっ…ぼくはもっと修行してまた強くなるからさいせんしてよ!まだまだけっこんは出来ないからじかんはいっぱいあるんだからな!」

きゅうちゃんがなみだ目で、おれをにらむ。

「おれだってまだまだ強くなるからな!いつでも相手するぜ!」

おれがふてきにわらうと、きゅうちゃんが手を差し出すんで、あくしゅする。

「そー君強いな!でも、ぼくだってもっと強くなって、しんぱち君をおよめさんにするんだ!」

「きゅうちゃんも強いな!でも、おれだってもっともっと強くなって、しんぱちをおよめさんにするんだ!」

にっこりとわらいあうと、なんだかともだちになった気がする。

「今日はあなたが勝ったから、新ちゃんはしばらくあずけてあげる。でも、男の子同士は結婚できないのよ?」

姐さんがくやしそうにおれを見る。でも…

「姐さん、おれ達みらいでちゃんとけっこんしてるよ?」

おれがそう言うと、姐さんがへんなかおをする。

「また変な事言ってる。それが無かったら、あなた良い子なのにね…」

はぁ、とためいきをついて、おれをじっと見る。

「まぁ、新ちゃんを守ってくれるんだから、しばらくは良いわ。大人になったら分かるわよね。」

なんだよ、そのかわいそうな子を見る目は!
おれがもんくを言おうとすると、くいくいとしんぱちがおれのそでをひっぱる。
ふりむくと、ぷうとふくれたしんぱちがおれをにらむ。

「そーくん、あねうえやきゅうちゃんとばっかりはなししてずるい!そーくんはぼくのおむこさんなんだから、ぼくとだけはなしてればいいの!」

わっ!かわいい!!しんぱちがやきもちやいてる!!
おれが、しんぱちのくちにちゅうしてわらうと、しんぱちもわらう。

「だいじょうぶ!おれがすきなのは、ずっとしんぱちだけだから!」

おれがそう言うと、しんぱちがぎゅーとだきついてくる。
えへへ、しあわせだな!

「…ちょっと…うちの新ちゃんに何してくれてんのよ…」

「そー君、今回は負けたけど、ぼくはまだしんぱち君をあきらめたわけじゃないよ…?」

おれ達の後ろから、すごいさっきがながれてくる。
そーっとふりむくと、きゅうちゃんと姐さんが、すごくおこった顔でおれを見てた。

「「ちゅうなんて、まだ早いわ(よ)!!」」

2人がさけんでおれに攻撃してくるんで、しんぱちの手をつないで、走ってにげた。
ちぇ、せっかくしあわせなきぶんだったのに!
しんぱちとらぶらぶになるのは、まだ先がながそうだぞ!!


END