そろそろ騎馬戦の時間だ。
これにも僕ら出るんだよね。
「総悟君、集合場所に………」
…ちょっとした隙にアイマスク付けて寝やがって…!
僕が総悟君を引っ張って集合場所まで行くと、山崎君と神楽ちゃんが待っていた。
そう、僕・総悟君・山崎君・神楽ちゃんで騎馬を組むんだ!
神楽ちゃんが乗ってたら無敵だよね…
ウチのクラスからは後、原田君・近藤君・土方君・姉上のチームが出る。
…勝ったな…
僕の思った通り、僕らのチームと姉上のチームの活躍で、騎馬戦は赤組の完全勝利だった。
姉上のチームはパワーで、僕らのチームは総悟君の姑息な作戦で、ハチマキに触れられる事もなく勝った。
…白組の皆、ごめん…
阿鼻叫喚の騎馬戦が終わると、部活対抗リレーだ…ヤダなぁ…
それぞれの部の出場選手が着替えて揃うと壮観だなぁ…
坂本先輩のメイドに高杉先輩のギャルソン。1年生の中でもゴツイ2人がよりによってレースクイーンだ…僕のウエディングドレス姿もイタイよな…
他の部にはナースとかラムちゃんも居る…セーラー服とかウェイトレスもいる…客室乗務員とか婦警さんとか…どうやって揃えたんだ?この衣装…
「あ、新八君!お揃いだね!」
「あ、山崎君もウエディングドレスなんだ…」
「うん…先輩命令でね…レースクイーンだけはなんとか避けたよ!!」
「…僕は姉上が…」
僕と山崎君がドレスでしょんぼりしていると、総悟君がタキシードでやってくる。
…ちくしょう、色男は良いよなっ!又女子が大騒ぎだよ、羨ましい!
…ちぇっ…カッコいいんだよ、ちくしょう…
「山崎ィ、テメェ何俺の花嫁ナンパしてんでぃ。」
ぶすっとした総悟君が、僕の腕を掴んでスタート地点に引っ張っていく。
「ちょ、何が俺の花嫁だよっ!?総悟君は良いよね!タキシードカッコいいし!僕なんてイタイだけだもん!」
「そうか?ドレス、似合ってて可愛いぜぃ?マジで俺の嫁に来てくれやせんかぃ…?」
総悟君が真剣な顔で言う。ちくしょう、嫌がらせかよ!?そっちがその気なら…
「わーいうれしー、パチ恵、そーちゃんのお嫁さんになるー」
僕が棒読みで言うと、
「やったぜパチ恵ちゃんはぼくのお嫁さんだー」
総悟君も棒読みで言う。
…ぷぷっ…
2人で顔を見合せて、ゲラゲラ笑う。
そのまま、スタートしたレースクイーンを応援しつつ、それぞれのスタート位置に分かれる。
「そんじゃパチ恵ー、俺の胸に飛び込んでくんの待ってるぜー?」
総悟君がゲラゲラ笑いながら歩いて行く。
「まだそのネタ引きずってんのかよ!」
僕もあはは、と笑いながら突っ込む。
もうすぐ走る順番だ。
1年生のゴツイレースクイーンからバトンを受け取って走り出すけど…
走りずらいよ、ドレスー!
裾をたくし上げて走ると少し走りやすかったんで、両側から裾を抱え込んでぐんぐん走る。
次の走者、総悟君が見えるとこまで来ると、両手を広げて待ってる。
「いつまでそのネタ引きずってるんだよー!!」
叫びながら、バトンを渡すんで持っていた裾を離すと、裾を踏んだ。
ギャー!忘れてた!!裾長いんだった!!
裾を踏んで倒れた先は総悟君の腕の中で…助かった…こんな所で転んだら、先輩達に怒られる所だった!!
「ありがと、総悟君!はい、バトン!!」
「おう、行ってくらぁ。」
ちゅっ…
へっ…?今何か…口に当たったような…気が…
ぜっ…全身が熱いんですけどっ!?じっ…事故だよね!?事故だよねっ!?
どっ…どうしよう…とりあえず、応援だ!!
僕が口を押さえながら応援しようと顔を上げると、タキシードで颯爽と走る総悟君が目に飛び込んでくる。
…どくん…
わぁーっ!!何考えてんだ僕ぅぅぅぅぅ!!カッコいいじゃないよっ!!
総悟君は相変わらずすっごく速くて、あっという間に次の走者、坂本先輩にバトンを渡す。
坂本先輩めちゃくちゃ速い!!…けど…メイドさんのミニスカートが、ひらひら舞い上がるのは…勘弁して下さい…
そして、ギャルソン姿の高杉先輩にバトンが渡る。
うわ、先輩似合うなぁ!!いーなー、僕もあれ着たらカッコ良く見えるかなぁ…
高杉先輩もめっちゃ速くて、剣道部は1位でゴールした。
皆が高杉先輩の所に駆け寄る。当然僕も駆け寄ると、そこには当然総悟君が居て…
僕が顔を赤くしてちらりと盗み見ると、全くいつも通り普通の顔をした総悟君が先輩たちや1年生とハイタッチしてる…
なんだよ…僕は無視かよっ!
俺の花嫁、だったんじゃないのっ!?きっ…きすまでしたのにっ…
僕がむぅっとしてると、先輩達が僕にもハイタッチしてくる。
みんなとハイタッチしていくと、最後に総悟君も全開の笑顔で僕に手を出して来るんで、ハイタッチする。
ほっ…なんだ、無視してた訳じゃないんだ…
って、アレ?何?この気持ち…僕何考えてんの!?
アレは事故じゃん!それに、総悟君は男なのに…なんで僕…イヤじゃないんだ…?
「新八ィ?何百面相してんだ?着替えに行くぜぃ?」
すっごい間近で総悟君の声がする。
はっ、として前を向くと、至近距離で総悟君が僕の顔を覗き込んでる。
「ちょっ…ちっ…近いよっ!近いよっ!!」
僕が総悟君の顔を押しやると、ぐぐっと抵抗してくる。
「なんれぃ、恥ずかしがんらよ。」
ほっぺたを潰されたまんま、わっるい顔でぎゅー、と抱きついてくる。
嫌がらせだ!又嫌がらせしてきたよ!!もぅ!!
僕が嫌がるから、ワザと面白がってるんだよね!ちくしょう、僕だって…
僕は総悟君を抱きしめ返して、ワザと顔を近づけてやる。
「こんなトコじゃヤダ、総悟のいじわる。」
僕がそう言ってやると、真っ赤になって口を押さえてバッ!と離れる。
へんっ、ザマーミロ!僕だってこんぐらい出来るんだからな!
固まってる総悟君を置いて、さっさと体操服に着替える。
僕が出て行くと、最後の競技紅白リレーが始まっていた。
1年から3年までの代表が、男女1人ずつ出てのリレーは皆ものすごく速くて、抜きつ抜かれつの攻防は否が応でも白熱する。
最後のストレートでのデットヒートを経て、僅差で赤組が勝った!
総合得点も赤組が上で、今年は僕ら赤組の優勝で、体育祭は幕を閉じた。
その興奮のまま、クラスでは珍しく坂田先生がジュースを奢ってくれたんで、ジュースで乾杯した!
部活では、部活対抗リレーでの臨時の部費が入ったんで、ジュースとお菓子で打ち上げをした。
やっぱり優勝って嬉しいよね!
そんな嬉しい気持ちを一緒に喜びたいのに、さっき意地悪してから総悟君が僕に近寄ってこない…流石ドS…打たれ弱いよ…
もぅ、どうやって仲直りしようかな…?
僕は仲直りの方法を考えつつ、楽しかった今日1日を振り返る。
はっ…ハプニングもあったけど、とりあえず僕はもっと体を鍛えないといけないなぁ…がんばろ。
END
礼
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