「おーい!新八君と総悟が手伝ってくれるぞー!」

近藤さんが自慢げに僕らの背中を押す。

「あ、お邪魔します…」

僕が挨拶すると、みなさんがちょっとだけ笑ってくれた。
早速沖田さんが割烹着と三角巾を付けられて、まな板の前に立たされる。

「じゃぁ総悟、オメェは沢庵切れ。」

「へいへい…」

やる気の無い返事を土方さんにぶつけた沖田さんが、包丁を持ってたたたたんっ!と沢庵を切っていく。
うわ…上手いし速いっ!

「沖田さん凄いっ!」

僕が感心して見ていると、にへっ、と笑った沖田さんが顔だけ僕に向ける。

「姉上の手伝いしてたからねぇ。切るのは得意でさぁ。」

「へぇーっ…」

僕が感心してると、山崎さんがすまなそうな顔で僕の隣にやってくる。

「新八君、ごめん!割烹着もう無かったから、変わりにコレ着てくれるかな?」

山崎さんが渡してくれたのは…ピンクのふりふりエプロンだった…なんでこんなのココに有るの…?

「…はい…」

着るのはかなり抵抗あるけど…このままの格好で料理する訳にはいかないしね…
僕がしぶしぶ、ふりふりエプロンと三角巾を着けると、一瞬皆の動きが止まる。
…ごめんなさい…男の僕がこんなの着けちゃって…ホントは僕だってイヤなんですからね!!

「すみませんねぇ、僕がこんなの着けちゃって…僕だってこんなの好きで着けてる訳じゃ…」

僕が言うと、皆が動き出す。
そんな中するりと沖田さんが近付いてきて、こそっと耳打ちする。

「新八エプロン可愛いねィ。いつでも俺の嫁になれやすぜ?」

「なっ…!?」

僕が赤くなってぱたぱたしていると、山崎さんが走ってきて僕の手を引っぱる。

「新八君頼むよ!こっちで僕の手伝いして〜!!」

沖田さんがものっすごい殺気を山崎さんに叩きつけてるけど…今はそんな場合じゃないね…
山崎さんに連れられてコンロの前に行くと、大量の切られた野菜が置いてあった。
これって…

「今日のメニューは肉野菜炒めなんだ!皆切れるけど料理は出来なくって!!新八君助けてぇぇぇぇぇぇ!」

山崎さんが叫ぶんで、僕は慌てて沢山のうちの1つのコンロにフライパンをかけて肉野菜炒めを作っていく。
大量のお肉を炒めて、そこら辺に有った焼肉のタレを入れて、大量の野菜も入れて炒める。
それにしても…多いなぁ…

「山崎さん、コレ…何人分なんですか?」

「え?100人分ぐらい?」

「100人!?」

なんか…炒めても炒めても先が見えない…1度にそんなに沢山の料理なんて作った事無いよ…
僕がひたすら炒めていくと、遂に全部炒め終わる事ができました。
それを土方さんと伊東さんが大皿から中皿に移してトレーにガンガン乗せていく。
そこに近藤さんがご飯を、山崎さんがお味噌汁を、原田さんが沢庵の小皿を乗せていく。

「新八君ごめんっ!今度は沖田隊長の手伝いお願い!カウンターに隊士達が溢れてるから!!」

僕がカウンターに走って行くと、どんどん出てくるトレーを沖田さんが1人で隊士の皆さんに配っていた。
すっごい速い…その上皆綺麗に並んでる…沖田さんが配膳してるからかな…?

「沖田さんっ!僕手伝いに来ました!」

僕が声を掛けて沖田さんの隣に並ぶと、隊士の皆さんがざわっ、とざわめく…
あ、しまった!エプロン…仕方ないよね、気持ち悪いと思うけど忙しいんだ!我慢してもらおう。
僕が沖田さんの隣で皆さんにトレーを渡し始めると、沖田さんが不機嫌になる。
…なんだろ…?

「山崎のヤロー…何で新八コッチに回すんでィ…」

え…?沖田さん僕と仕事するの嫌なのかな…
ちょっと落ち込むけど、そんな事言ってらんないや!
ッて…何か僕の方が、沢山人並んでない?僕…仕事遅いのかな…

「テメェら新八の方にばっかり並んでんじゃねぇよ!つか俺の方に並べィ!」

おっ…沖田さんが何か怒ってる…?僕、何かしたかなぁ…
沖田さんの一喝で綺麗に2列に並んでくれたけど…渡してるトレーになんか違和感が…って!!肉野菜炒めにマヨネーズがぁっ!?

「土方さんっ!マヨはいりませんっ!!僕の味付けに文句でも有るんですかっ!?」

僕が叫ぶと、マヨ炒めは出なくなった。
もぅ…信じられない…
マヨ炒めになった皆さんに謝りながら渡すと、皆良いよ良いよと言ってくれた。
良い人達ばっかりだ…

食事が終って食器を返してくれる時には、皆さん一声掛けてくれた。
美味しかった、って言ってもらえると何だか嬉しいや!
隊士の皆さんの食事が終わって僕が厨房に戻ると、割烹着の集団が食事をしていた。

「お、総悟、新八君、ご苦労様。2人も食事にしてくれ!」

近藤さんが笑って手招きして、ご飯を大盛りよそってくれる。

「えっ?僕も良いんですか?」

「勿論だよ!あ、バイト代は後で渡すから。ご苦労様。」

「有難う御座います!」

「いやぁ、こっちこそ悪かったね。総悟の所に遊びに来てたんだろ?」

「あ、はい…「違いまさぁ、デートでさぁ。」

沖田さんがもりもりご飯を頬張りながら、僕の言葉を遮って言う。
なっ…何なのぉっ!?コノ人ォォォォォォォォ!!

「そっ…そうだったな…」

何を思い出したのか、近藤さんが真っ赤になって横を向く。
もぅ…こっちまで恥ずかしくなっちゃうよ…
僕らが近藤さんによそってもらったご飯を食べていると、割烹着の集団の皆さんが泣いていた。

…何か辛かったりしたのかな…?

「やっぱり新八の料理は美味いでさぁ!おかわり!!」

「有難う御座います。沖田さんいっつも美味しそうに食べてくれるんで、僕嬉しいです!…だいすき…」

僕が微笑んでおかわりでよそったご飯を差し出すと、沖田さんがにっこり笑ってぎゅっと手を握ってくれる。
えへへっ…幸せ…
あれっ?皆さんの涙が目の幅になってる…?
そんなに辛いものなんて無いのになぁ…どうしたんだろ…?

ご飯をお腹一杯御馳走になって、沖田さんの部屋に戻ってからお通ちゃんのDVDをちゃんと見る。
沖田さんが後ろからぎゅっと抱っこしてくれてたんで、もたれかかってずっと説明してあげた。
いつもと違って何か優しい…へー、とか言って僕の話を聞いてくれる。
おかげでお泊りしちゃったよ………

こんな幸せを貰ったのに、依頼料まで貰っちゃって良いのかなぁ…?
ちょっと考えるけど、依頼は依頼だもんね?

毎度有難う御座います!又のご利用お待ちしています!!


END