「新八!マジか!?マジで俺と結婚…」

土方さんが立ち上がって、僕の腕を掴む。
何がどうなって…?僕は…そんなつもり無いのに…何で沖田さんは僕と土方さんを結婚させたがるの…?
僕の事…嫌いなのかな…?でも…寂しそうな顔しか見てないよ…土方さんを見たのだって、切ないような………

あ…分かっちゃった…沖田さん…土方さんの事が…好きなんだ…
そうだよね…仲良いもん、2人…
駄目だ…何か悲しくなってきた…涙出そう…何で…?
…でも…このままで良い訳無いよね…!

「…土方さん、離して下さい…ごめんなさい、僕貴方と結婚は出来ません。…大好きな人を不幸になんて出来ません、沖田さんは…土方さんの事が好きなんですよっ!」

僕の手を離してくれた土方さんに一礼して、沖田さんを追いかける。
あはは…気付いちゃった…僕、沖田さんが好きだったんだ…
失恋して気付くなんて…酷いなぁ…

走って追いかけようと玄関に急ぐと、そこには沖田さんが呆然と座っていた。

「沖田さんっ!」

僕が叫ぶと、沖田さんがびくりと跳ねる。
くるりと振り向いた顔はひどく悲しそうで…そんな顔、見たくないよ…

大丈夫、すぐに誤解を解くから…

「沖田さん、僕、土方さんと結婚なんてしませんからっ!大丈夫です、土方さん取ったりしませんっ!」

僕が一息でそう言うと、沖田さんがぽかん、とする。
…あ…可愛い…

「…は…?何…言ってんでィ?新八君…?」

「僕、気付いちゃったんです…沖田さん…土方さんの事…好きなんですよね…?」

「はぁ!?俺が?土方を?好きぃー!?」

更にぽかん、とした沖田さんが、瞬時にものっすごく嫌そうな顔になる。

「え…?だって…」

「冗談でも止めて下せぇ…何で俺が土方なんぞを好きにならねぇといけないんで?」

「だって…土方さんが結婚する、って思ってショックだったんですよね?」

僕が恐る恐るそう言うと、沖田さんがうっ、と詰まって赤くなる。
やっぱり…誤魔化そうとしてたんだ…やばい…泣きそう…

「…結婚するのかと思ってショックだったのは確かでさぁ…でもな、結婚するには2人居るだろ。何で土方の方だと思ったんでィ…」

「…だって…沖田さんと土方さん仲良いし…土方さんの為に諦めた、って感じだったし…」

「…オメェだとは思わなかったんで…?」

沖田さんが頬を染めて、ぷいっ、と横を向く。
えっ…えぇーっ!?ぼっ…僕…なんて…無いもの…

「や…だってっ…僕はそんな…だって僕男だしっ!沖田さんと土方さんほど仲良くないし…」

やっ…僕…すっ…凄く赤くなっちゃってるよぅ…

「土方だって男だろィ…大体、俺と土方のどこが仲良く見えるんでィ…」

「だって…喧嘩する程仲が良い、って言うし…2人喧嘩してるの楽しそうだし…」

「楽しくなんてねぇよ…俺ァ、新八君と一緒に居る方が楽しいんですぜ?」

僕が下を向いてもじもじしていると、沖田さんが僕の前に立って顔を覗き込んでくる。

「はっきり言わねぇと判ってもらえねぇか。俺ァな、新八君。オメェが好きだ。土方なんか止めて、俺と結婚しねぇか?」

なっ…!?いっ…今…プロポーズされた…?
えっ…?僕…?

「あのっ…あの、僕男ですし…付き合ってもいないのに結婚なんて…」

ビックリして顔を上げると優しい笑顔。
そっ…そんな顔、見た事ないし…っ…

「じゃぁ、お付き合いからやりやしょう?嫌じゃぁないんでしょう?俺の事は。」

「あのっ…えっと…嫌じゃ無いです…あの…むしろ…すき…です…」

「じゃぁ決まりでィ!新八君、俺の恋人になって下せぇ!」

凄く優しくて、嬉しそうな笑顔…
本当に…?からかってないよね…?

「…はい…」

僕が、沖田さんの目を見てちゃんと応えると、ぎゅうと抱きしめられる。
うわっ…!ちょっ…心臓爆発する…

「あー…良かった…新八君のおかげで寿命が縮んだ思いでぃ…」

あ、凄い…沖田さんの心臓、ドキドキいってる…

「僕だって…寿命縮むかと思いました…」

ちらりと見上げると、満面の笑顔。
その笑顔がどんどん近付いてきて…えっ…きっ…きすされる…!?
僕が慌てて眼をつぶると、ふっ、と笑った息が至近距離でかかる。

「総悟ぉぉぉぉぉ!悪いが俺はやっぱり新…ってテメエら何やってやがるっ!」

えっ!?僕が目を開けると沖田さんのドアップ。
ちょんっ、と唇に柔らかいモノが当たって、

「続きは後でな。」

って声を残して沖田さんが離れる。
ニヤリと笑った顔が遠ざかるのと同時に、今迄沖田さんの顔が有った所に刀が落ちてくる…

「えぇ―――――っ!?ちょっ…何っ!?」

そこには、瞳孔全開の土方さんが居て…刀を振り下ろしてた…

「総悟ぉぉぉぉぉ!?オメェ俺が好きだったんじゃ…」

「んな訳有るかィ。俺はとっくに新八のモノでィ。あ、新八も俺のモノだから、手ェ出さねぇで下せぇよ?」

「あぁぁ…ちょっとでも断りの言葉考えた俺が馬鹿だったァー!」

土方さん…真面目な人なんだなぁ…
そのままの体勢でぎろり、と僕の方を向いた土方さんが、頬を染めて僕を見つめる。

「新八、俺は結構諦めが悪い方だからな。まだ諦めないぞ?」

「えっ、僕沖田さんの事好きなんで、無理です。」

僕が言うと、土方さんがしゃがみ込む。
あ、しまった…もう少しソフトに言うんだった…
僕がそろりと近付こうとすると、沖田さんが僕を抱き込んで近寄らせない。
いつの間に僕の近くに戻ってきたの!?

「沖田さん、土方さんが…」

「大丈夫でさぁ、土方さんは強い子でさァ。それより、さっきの続きしますぜィ?」

ニヤリと笑って、僕の眼鏡を外す。そのままぐんっ、と僕に近付いてくる顔は、やっぱり綺麗で…
ちょっ…こんな…だって、土方さんが居るのにっ…!?

「諦めないと言った筈だァァァァ!総悟ォォォォォォ!!!死ねェェェェェェェ!!」

僕のすぐ横を刀が通って行って、沖田さんがひょいひょいと走って逃げる。
いつの間にか僕の顔には眼鏡が戻されてた。

「新八ィー!次はもっとすげぇ事しやしょうぜ〜!」

そう叫びながら、沖田さんが走って逃げてく。

「させるかァァァァ!新八は俺が嫁にする!!!」

そう叫びながら、土方さんが沖田さんを追いかける。


…僕の周りは、今迄以上に騒がしくなりそうです………はぁ………


END