なんとか総悟君の家に着いて、昨日ミツバさんに預かった鍵で家に入る。
すぐに総悟君の部屋に行くと、白い顔をもっと白くした総悟君が静かにベットに横たわっていた。
いっ…息…してるよね…?
慌てて近寄って口元に耳を近付けると、すぅすぅと小さく寝息が聞こえる。
はぁ…良かった…生きてた…

「しんぱち…沖田死んじゃう…?」

「イエ!死にませんからっ!!」

先輩が泣きそうな顔で言うんで、思わず大声で否定してしまうと、総悟君がもぞり、と動く。
やば…起しちゃったかな…?

「う…しんぱち…?」

「ごめん総悟君、起しちゃった…?」

「…う…?せんぱい…?」

「おみまい…アイス持ってきた・・・」

先輩がそっと総悟君の額に手を当てる。

「あつい…!?」

そうだ!とりあえず冷やさなきゃ!
僕が慌てて洗面所に走って、洗面器に水を張って氷を入れてタオルを浸けて、部屋に戻る。

「先輩、タオル用意したんでこれを総悟君の額にのせて下さいっ!僕はお粥作ってきますんで!」

先輩に洗面器を渡して台所へ向かうと、

「づめだっ!」

という総悟君の悲鳴が聞こえる。
すぐに部屋に戻ると、びしゃびしゃなままのタオルを頭に被って総悟君が震えていた…

「せっ…先輩っ!タオルは絞って下さいぃぃぃぃぃ!」

「しんぱちィ…」

涙目で僕に抱きついてくる総悟君はなんだか可愛い…って!めちゃくち熱いよこの人ぉぉぉぉぉぉっ!!!

急いで隣にこないだ泊まった時に借りた布団を敷いて、パジャマを着替えさせる。
頭も拭いて、寝かしつけてから、ぎゅっとタオルを絞って額に乗せる。

「沖田…死んじゃう…?」

こっちも涙目の高杉先輩を宥めて、総悟君の手を握らせておいて急いでお粥を作る。
お盆に卵粥と水と薬を乗せて、総悟君の部屋に戻ると不安げな4つの瞳に見つめられる…

「しんぱちィ…」

「…しんぱち…」

あー…何か調子狂う…

「先輩、総悟君を座らせて下さい?総悟君はお粥食べようね?」

先輩に総悟君を支えて貰っておいて、レンゲにお粥をすくってちょっと冷ます。

「はい、食べて?」

いつもと違って大人しくお粥を口に含む。
何か…調子狂っちゃうよ…
半分ぐらい食べた所でイヤイヤと首を振るんで、そこで止めておく。

「アイスは?食べれる?」

「…へい…」

「先輩のお土産なんだよ?」

「ありがとう…ごぜぇやす…」

総悟君が先輩に向かってぺこりと頭を下げる…
先輩はにこり、と笑って首を振る。
冷凍庫から3つアイスを持って来て、皆で食べる。

「なんかしんぱちやさしい…」

アイスも食べさせてあげたら、総悟君がほにゃりと笑う。
なっ…そんな笑顔…反則だ…

「病人ですからね!早く良くなって下さいよっ?はい、薬も飲んで!」

薬を差し出すと、総悟君がイヤイヤと首を振る。

「アンタ子供ですかっ!?駄目です、飲まないと良くなりませんよ?」

「イヤでさァ…苦い…」

総悟君が言うと、先輩もうんうんと首を振る。

「苦いじゃないですっ!ほらっ!大人しく飲む!」

「口移し…」

「アホかぁっ!!!!!」

ぺしぃっ!と頭を叩くと、恨みがましい目で僕を見て、ゴクゴクと薬を飲む。

「俺ァ病人なのに、ヒデェや新八…」

「病人だから薬飲むんだろうがァァァァ!」

総悟君を布団に寝かせて先輩の方を見ると、口一杯に水を含んで薬を持ってた…

「や、先輩、総悟君薬飲んだんで…」

ごくりと水を飲み込んで、こくりと頷く。

あぁもぅボケばっかりでツッコミ疲れたよ…
僕ががっくりと座り込んでると、布団の中から総悟君が手を伸ばす。

「しんぱちィ…寝るまで…」

不安そうな瞳…僕もよく分かるよ…1人は…辛いよね…

「大丈夫ですよ?ミツバさんが帰ってくるまでちゃんと居ますから。」

「…俺も…居る…」

僕が総悟君の手を握ると、先輩も反対側の手を握る。
安心した総悟君が、ニッコリ笑ってすぐにスースーと寝息を立てる。
…やっぱり先輩は優しいなぁ…

総悟君を先輩に任せて、お粥の後片付けと夕飯の支度をしているとミツバさんが帰ってくる。

「新八君、色々有難う。助かったわ。」

「いえ!僕も総悟君心配でしたし…」

「…有難う。そーちゃんは良いお友達をもったわね…」

ミツバさんが、にっこりと笑う。
そんな…何か照れる…
ミツバさんにご飯を用意して、総悟君のお粥を作っていると、総悟君が起きたんで後はミツバさんに任せて僕と先輩は家に帰る事にした。
薬が効いたみたいでちょっと元気になったみたいだし…良かった…

分かれ道まで一緒に歩いていると、先輩がにこりと笑う。

「しんぱちのお粥…おいしそう…」

「え?普通の卵粥ですよ?…じゃぁ、先輩が風邪ひいたら作りに行きますね?」

「…やくそく…」

先輩が小指を差し出すんで、指切りをする。
嬉しそうにぎゅっと手をしまっているので、先輩が風邪をひいたら、約束は守ろうと思った。
そんなに卵粥好きなのか…



次の日から、お約束のように僕が風邪をひいた。
すっかり元気になった総悟君と、心配した高杉先輩がお見舞いに来てくれたけど、家中ぐちゃぐちゃにして姉上に叩き出された事は、又別のお話…


END