文机に件の指輪を置いて、ぼんやりと眺める。
可愛い…指輪…
こんなの僕になんか似合わないよ…
試しに手に取ってはめてみたけど…やっぱり入らないし…
姉上は僕に似合う、って言ってたけど…入らないんじゃ似合うも似合わないも無いよ…

それに、沖田さんが僕に、選んでくれたとも言ってたけど…でも実際は姉上へのプレゼントだし…それも、近藤さんからの。
そうなのかなぁ…?

はぁ、と溜息をつきながら、指輪を目の前に持って来てじっと見つめる。

…やっぱり僕には似合わないよ…?

でも…あの時沖田さん、すっごく真剣な顔してた…
本当に、僕に選んでくれてたのかなぁ…?



「新八ィ、ソレ、はめねェで下せェ。」

「…沖田さんっ!?」

僕が慌てて窓の方を見ると、息を切らした沖田さんがそこに居た。

「…なんで…?」

「ソレは俺が選んだモンだけど、姐さんに似合うのを選んだんでさァ。新八には…」

ゴソゴソとポケットを探ってる…
僕は窓に駆け寄ると、小さなケースを取り出して僕の目の前に持ち上げる。

「コッチの方が似合いまさァ。」

小さなケースを開けて、指輪を取り出す。

「なっ…!」

「ほい、手ェ。」

沖田さんが右手を差し出すんで右手を出す。

「違いまさァ、反対。」

僕の左手をとって、薬指に指輪を差し込む。
あ…ぴったり…
可愛い…指輪…
デザインも色も違うけど…僕は、こっちの方が好き…

「…沖田さん…コレ…?」

「こんなモンで新八と気まずくなりたくねェや。もうちっと後で、ちゃんとぷろぽーずしてから渡したかったんですがねェ…」

沖田さんが、照れたように笑う…

「なっ…だってっ…僕…男だしっ…」

「そんなん知るかィ。俺ァ新八が良いんでィ。」

「…ばか…です…」

僕の目から、ぽろぽろと涙がこぼれる。
こんな…こんなに…

「泣くほど嬉しいんで?」

沖田さんが、窓越しに僕をぎゅっと抱きしめる。
そんなの…

「…当たり前ですっ…ばかっ…」

僕もぎゅっと抱き返すと、もっと強く抱きしめられる。
たとえ近藤さんの頼みだからって、それが姉上だからって、辛かったんだからなっ…!
他の人に指輪なんて…2度と選ばないで…

もうこんな事が無いように、さっきの話を沖田さんにも教える。
僕としては、非常に不本意だけど…でも、仕方ないよね…姉上にも幸せになった貰いたいし…

「へぇー、近藤さん意外と脈アリ?」

「…かもしれません。僕としては不本意ですけど…」

2人でくすくすと笑い合って、又ぎゅっと抱きあう。
僕は…本当にこの人が好きなんだなぁ…
しみじみ想ってしまった。


数日後、姉上がなんだか趣味の悪い指輪を部屋に飾っているのを目撃した。
つけないんですか?と聞いたら、真っ赤になって叩かれた…
つけてあげたら喜ぶのに…と思ったけど、あえて何も言わなかった。

…幸せな気分になれるのになぁ…
左手を持ち上げて、薬指に光る指輪を見つめる。
途端に、嬉しくなっちゃって、一気に顔が緩む。

指輪はちいさな手錠ですぜ?

って沖田さんが言ってたけど…
沖田さんになら、捕まっても良いんです。
沖田さんじゃなきゃ、嫌なんです。

だってこんなに幸せなんだもん。
捕まえて…一生離さないで下さいね?沖田さん…


END