「俺だお…ぐえっ…」

「とっしー何新八苛めてるアルか!」

神楽ちゃんが包帯男の包帯をグイッと引っ張って首を閉める。
あぁ、土方君か…ミイラ男…?

「苛めてんのはオマエだろうが!泣くぞコラ!!」

うわっ…土方君マジ涙目だ…イヤ、苦しいよね…

「神楽ちゃん止めてあげて〜!土方君の首締まってるよぅっ!!」

僕が叫ぶと神楽ちゃんが包帯を離して僕の隣にに走ってくる。

「テメーメガネ!チャイナ娘ちゃんと面倒みろ!!」

土方君が首をさすりながら怒鳴るけど…

「だって最近神楽ちゃん土方君の方に懐いてるし…僕まだ料理並べたりお菓子並べたりしなきゃいけないし…宜しくお願いします!」

僕がえへへ、と笑って又料理とかを並べ始めると、神楽ちゃんが土方君の包帯を又引っ張る。

「新八のジャマするのやめるヨロシ。行くヨ、とっしー。」

土方君の、離せー!と言う声が遠ざかっていく…頑張れ土方君…

「アレも沖田君の選んだ衣装だよ?」

山崎君があははー、と笑う。
自分河童じゃん…

「土方に似合いだろィ?」

総悟君がやって来て、つまみ食いしながらニヤリと笑う。
…選択に悪意を感じるよ…

「もう少し何か…って!ダメだよ!まだ食べちゃ!!」

僕がぺしっと総悟君の手を叩くと、へいへい、と言って肩を竦めてる。
そう言えば、近藤君は…?
近藤君を探すと、姉上の隣でにこにこ笑ってる…頭にネジが刺さってる…って、フランケンシュタインかな…?

なんとか料理を並べ終わると、パーティが始まる。

近藤君が張り切って司会して、風紀委員の皆が出し物したりして…
何でお通ちゃんの振り真似なんだよっ!
後は、皆でゲームとかしながらお料理とかお菓子とか食べた。
総悟君と神楽ちゃんが又奪い合いしてるけど、そんなに慌てなくてもいっぱい有るのにもぅ…
皆と色々お話もして、いっぱい笑った。
山崎君が河童になりきったり、土方君がそうマヨ、とかマヨネーズ星人になったり…すっごい楽しかった!

料理も大体無くなって、そろそろ皆で片付けに入った頃、教室に銀八先生がやって来ておーい、と声を掛ける。

「おまえら〜、そろそろ解散しろ〜。流石にこれ以上は俺も怒られるわ。」

銀八先生はさっちゃんさんにかぼちゃの帽子をかぶせられて迫力はないけど、確かにそろそろ家に帰らないとね…
皆でお皿を洗ったり教室を元に戻したりしてから、着替えて教室に戻る。
途中でどこから出てきたのか、さっきまでいなかった筈の総悟君が隣に現れてトイレに行こうと僕を誘う。

「…そうだね、僕も行くよ。」

2人で連れだってトイレに行って、用を足して教室に戻ろうとすると、いきなり総悟君が僕の手を引いて走り出す。
何も言わないでクスクス笑うだけの総悟君…何か…おかしい…

「総悟君、何処行くの?そろそろ教室に戻らないと…」

僕がそう言っても、クスクスと笑うだけで何も言ってくれない…
学校の筈なのに、何だか暗くて寒くて、引かれている総悟君の手だけが暖かい…
総悟君がやっと立ち止まると、そこは屋上に続く扉の前で…何でこんな所…?

「総悟君、屋上には行けないよ?ねぇ、もう教室に戻ろうよ…」

「TRICK OR TREAT ?」

「へっ?」

何か言ってるけど良く聞こえない…
僕が首を傾げると、スッとそばに寄って来て、耳元で囁く。

「TRICK OR TREAT ?」

「あ…お菓子…?さっきあげたじゃない…うーんと…さっき貰ったチロルしか無いよ?」

はい、と僕がチョコを渡すと、にっこりと笑った総悟君が、すっと消えた。

………消えたァァァァァァァァァァァ!?

「ちょっ!総悟君!?冗談でしょ!?何のトリック使ったか知らないけど、こんなトコで…ちょっ…総悟君っ!総悟君っ!!」

僕が暗いのと不安なのと、突然総悟君が居なくなったので軽くパニックを起こしてひたすら総悟君を呼んでいると、声が響く筈なのに音が籠ってしまっている…おかしい…おかしいよ…ココ、こんなに暗かったっけ?こんなに寒かったっけ?こんなに…広かったっけ…?

「そっ…総悟君!総悟君!総悟君!総悟君っ!!」

声の限り、総悟君の名前を呼ぶ。
だって絶対…どんな事があっても総悟君は僕を助けてくれるもん!
声が掠れてきて、ぽろぽろと涙がこぼれて来た…

「…んぱちィ!……新八ィ!!」

暗闇からぬぅっ、と腕が現れて、僕の腕を掴む。
ビクリとすると、ぱぁっと視界が晴れて、いきなり周りが明るくなる。

…あ………何………?…

「オメェっ!何処行ってたんでィ!?着替えに行ってたと思ったらいつまでも帰ってこねェし!!何でこんなトコに…」

「…総悟君…?本物の総悟君…?消えない…?ちゃんと…居る…?」

「はぁ?俺ァココに居らァ!オメェが…」

不思議そうな顔で僕を見ていた総悟君に安心して、ぎゅうと抱きつくと、凄く暖かい…
そっと抱き返してくれるのが嬉しくて、もっとぎゅっと抱きつくと、訳も分からずぽんぽんと頭を撫でてくれる。

さっき有った事を総悟君に話すと、怪訝な顔をされるけど…

「それって…ヤバかったんじゃねェんですかィ?菓子渡さなかったら悪戯されたんだろィ…?」

そんな事を言われる。
あの暗かった場所を思い出すと、ぶるりと震える…
あのチョコが無かったら…僕はどうなってたんだろ…
ふと目を上げると、心配そうな顔の総悟君…
どんな時でも…どこに居ても…僕を守ってくれるのはいつも総悟君なんだ…そう思うと凄く愛しくなって、覗き込んでる顔にちゅっとキスをした。

「総悟君、チロル…ありがと。」

ビックリしてる総悟君の手を引いて教室に向かって走る。
ちょっと怖い事もあったけど、凄く楽しかった。
いつもは気付かない事にも気付けたしね…

子供のお祭りも、悪くない。
そんな事を思ってしまった僕は都合の良いヤツかな?
来年からはちゃんとするから…許してね…?

そう思ったら、さっきの総悟君のクスクス笑いが聞こえた気がする…


END