そんな光景を見せ付けられた4人はすっかり魂がどこかに飛んで行ってしまった。

「…ダメネ…アレはもうラブラブバカップルネ…」

神楽がしょんぼりとうなだれる。

「そんなぁー!新八くぅーん!!なんで俺には笑ってくれたんだよぉー…」

山崎が色んな意味でしょんぼりする。

「馬鹿な…沖田君と恋人だと…っ!?」

伊東がぎりっと唇を噛む。

「い〜や、銀さんはまだ諦めないもんね〜!ぎゅ〜ぐらい、銀さんだって毎日してるからな!」

涙目になりながら、銀時が言う。
そして、茂みから飛び出て2人の邪魔をしようとそちらを見ると、今度は仲良くベンチに座ってお弁当を食べさせあっていた。

「…ダメだ…見た瞬間心が折れた…あ〜んって…あ〜ん…」

「何言ってんスかダンナ!頑張って下さいよっ!」

「そうネ!銀ちゃんならやれるネ!!」

「君が行かないなら僕が行くが?」

4人が未だ茂みの中に身を潜めてゴソゴソやっていると、遠くから土方の怒鳴り声が聞こえてくる。

「そォォごォォ〜…テメェサボって何処行きやがったァァ〜さっさと出て………そぉぉぉごォォォォォ!?おまっ…なっ…何して…志村っ…!?」

土方の不思議な叫び声を聞いた4人が2人の方を見ると、沖田が新八の膝枕ですやすやと眠っている光景が目に飛び込んできた。

「あ、土方さんこんにちわ。沖田さんまだお昼休みですよね?僕達逢ってからまだ1時間も経ってませんし。」

新八は笑っていたが、その笑顔はお妙によく似ていて…
邪魔すんじゃねーよオーラをこれでもかと土方に叩きつけていた。

「…あ…あぁ…昼休みは…まだ有るな…」

「副長が負けたァァァァ!?」

山崎が驚愕の叫びを上げる。
だが、そんな叫びは気にせず、土方が新八と会話を続ける。

「しっ…志村はなんで総悟に膝枕なんかしてんだ?」

そわそわチラチラと落ち着かない土方が、思いきって新八に尋ねる。
茂みの中の4人も、聞き耳を立てる。

「え?食後のお昼寝する、って言うんで…あ、でも僕がして貰う事も有るんですよ?」

「へっ…へー…何回も会ってんのか…」

「そうですね…ここ最近ですけど。」

ちょっとはにかんで、新八が微笑む。
その顔は幸せそうで…これ以上は聞きたいような聞いたら立ち直れないような…その場に居た全員が、落ち付かない気分になった。
これ以上はもうダメだと、茂みの中の4人がそろそろと後退を始めた時、普通なら流すところだが、勇者土方は、さり気なさを装いつつ思いきって新八に聞いてしまった。

「なっ…何?お前ら付き合ってんの?」

それには茂みの中の4人も固まった。
なんでいきなり確信つくんだよ!空気読めよ!!と。

ソレを聞いてきょとん、と固まった新八が、あははと笑って口を開く。

「そんな訳無いじゃないですか。僕も沖田さんも男ですよ?お友達…です!」

お友達、でちょっと詰まったのはなんなんだ!?突っ込め土方!!
茂みの中の4人がリアクションするが、土方はイッパイイッパイなのか、微動だにしない。

「新八ィ、土方さんは汚ねェ大人なんで、何でもソッチに持っていきたいんでさァ。」

「あ、沖田さん起きちゃった…土方さんが煩くするからですよ!?」

新八に怒られて、一瞬謝りかける土方だが、すぐに我に返る。

「イヤ、ソイツ仕事中だから!!」

土方が叫ぶが、2人は聞いちゃいない。

「新八新八ィ、おはよーのちゅー」

「あ、おはようございます。」

ちゅ、とキスを交わす2人に、思わず茂みの中の4人も飛び出す。
そんな中、土方は、真っ白に燃え尽きた。

「イヤ、ソレ友達じゃないだろォォォォォォォォォ!!」

いきなり飛び出してきた4人にぎょっとしつつも、2人は心底不思議そうな顔をする。

「でも、姐さん言ってやした。」

「友達ならちゅーぐらいするって。」

「違いまさァ、親友でさァ!」

「沖田さん…僕ら、親友…ですか…?」

「親友でさァ!」

「嬉しい…」

2人はぎゅうと手を握り合ってキラキラと見つめ合う。

「…アネゴ…何教えてるネ…」

「妙…アイツ…どこまでブラコンなんだ…女じゃなきゃ良いのか…?」

「親友は…それぐらいするものなのか…?では僕は…近藤さんと…?」

伊東の頭はオーバーヒートした。

「新八君!俺達も友達だよね!おっ…俺ともちゅー、してくれる…?」

地味に友情を育んでいた山崎が、期待に満ちた目で新八を見ながらそろそろと近付く。
そんな山崎を、新八は笑顔で斬り捨てる。

「え?誰が友達?」

「しんぱちくんひどいよぉぅぅぅぅぅぅぅぅぅ…」

山崎が崩れ去った。

「新八やっぱりオカシイヨ!キスは恋人同士がするものアル!」

「…僕もう神楽ちゃんの言う事信じない。」

新八が沖田の腕をぎゅっと掴んで悲しそうに神楽を見ると、神楽も崩れ去った。

「ちっ…みんなだらしねぇ…」

最後に残った銀時が2人を見ると、ぎゅうと手を握り合って、嬉しそうに笑っている。

「銀さん、僕こんなに仲良くなった友達って初めてなんです!今、すっごく幸せなんですよ?」

新八がにっこりと笑う。

「旦那、俺ァ同年代のダチなんて初めて出来たんでさァ!今、すっげぇ幸せなんですぜ?」

沖田もにっこりと笑う。

あまりにも幸せそうな2人に加えて、弟ラブな2人の姉のある意味恐ろしい笑顔が銀時の脳裏を過ぎる。
邪魔したら、ヤられる。
そう、本能的に悟ってしまった。

「…そう…良かったね〜…」

引きつる笑顔で銀時が言うと、にっこりと邪気のない笑顔で2人が笑う。

「あ、俺トイレ。」

「じゃぁ僕も一緒に行きます。」

手を繋いだままきゃっきゃっとトイレに向かう2人を見送りながら、銀時は遠くを見つめる。
…女子高生かよ………

これは、ある意味恋人よりもやっかいだ。
そう思いつつ、銀時は倒れた神楽を担いで万事屋に帰った。



END