すぐにバンッ!とタンスが開けられ、次々と着物を当てられる。
「この色が良いかしら…」
「こっちも良いわね…」
「まぁ!お姉様それ素敵!!」
きゃっきゃっと2人が楽しそうなんで、私は口を挿めない…
まぁ…良いか…この2人ならそんなにおかしな着物にはしないよね…?
淡い黄色のミニの着物に夏草色の帯、白いニーソを合わせてくれたけど…
可愛いけど…
ミニの着物は慣れないよっ…
「姉上…ミニは…」
「あらやだ新ちゃん、デートなんだものこのぐらいはお洒落しなくっちゃ!」
「そうよ?そーちゃんを悩殺してね?」
「そっ…!?」
うふふ、と笑う2人に逆らえる訳も無いけどっ!
でもこの格好は…恥ずかしいよ…
そんな私の気持ちなんかお構い無しに、又両側を固められてズルズルと引き摺られて居間に戻る。
と、なんか人数が増えてるっ!?
いつの間にか、近藤さん銀さんと土方さんが増えてて、山崎さんが皆にお茶を淹れていた…
近藤さんの回収に来た割にはのんびりしてるな…ってか銀さんは何しに来たの?
「お邪魔してますお妙さん!お、新八君今日は可愛いね!」
近藤さんが言うと、皆が私に注目する…うわぁ…恥ずかしい…!
座布団を敷いてぼーっと座っていた沖田さんも、私を見てカチリと固まる…この格好…似合わないかな…?
「あっ…あの…これは…」
「…良い…ぜィ…?…新八はいつも可愛いけど…ソレは特別可愛い…」
そっ…!
そんな事…いつもは言わない癖に…
そんな風に言われたら…ずっとミニスカ着物にしようかって思っちゃうよっ…
銀さんや山崎さんも何か言ってるけど、全然耳に入ってこないよ…
赤くなって俯いていると、スルリと髪をほどかれてその場に座らされる。
「もう少し待っててね、そーちゃん。」
「沖田さんはどんな髪型が好き?」
スルスルと又櫛で髪を梳かれると、じーっと私を見つめる沖田さんが首をかしげる。
「そーですねィ…今のおろしてんのも、さっきのポニテも良いですが…ツインテなんざどうですかィ?」
…沖田さん結構詳しい…
そーゆーの好きなんだ…
ミツバさんがするすると2つに結って結んでくれると、皆が、おーっ!と歓声をあげる。
「新ちゃん可愛い!」
「おー、かーわいいでさァ。萌えー」
「新八くーん!すっごくイイよ!!」
「そっ…そうですか…?」
じーっと見られると、なんだか照れる…
「ここからお団子にしたらどうかしら…?」
今度は姉上がくるっと髪を巻いてピンで留めてくれると沖田さんの顔が曇る。
「…チャイナみてェ…でも、新八がやったら可愛い…」
「萌えるでござる…」
ひっ…土方さんの目が怖いっ…!
とっしー…?
「あら、そーちゃん気に入らない?じゃぁ、こんなのは…」
又髪をほどかれて、今度は両横を少しづつ結わえる。
「やだ、新ちゃん可愛い!」
「これはこれで…」
銀さん…?こういうの…好きなんだ…
「うーん…でもちょっと子供っぽいわね…」
又ほどかれて、両横の髪を少しづつ後ろに持って行って結ばれる。
「お嬢様みたい!」
「…大人しそうでさァ。」
「えー?清潔そうで俺は好きですよー?」
山崎さん…フォローしてくれてるのかな…?
「あら、気に入らない?じゃぁこれは?」
ミツバさんが次々と色んな髪型にしてくれるけど、その度に皆が突っ込みを入れてなかなか決まらない…
ってかこれ…もしかして私で遊んでるのかな…?
わいわいと皆凄く楽しそうだし…色んな髪型にして貰えるから嬉しいけど…真選組の皆さんは仕事しなくて良いのかな…
大体、なんでまだ家に居るの…?
次はこれ、次はこれとだんだん盛り上がっていく皆と反比例して、沖田さんが俯いていく…飽きちゃったのかな…?
そうだよね、男の人は楽しく無いよね…他の4人は楽しそうだけど…
「沖…えっと、総悟さん…退屈ですか…?」
恐る恐る声を掛けると、ハッと上げた沖田さんの顔は真っ赤になっていて…え…?
「退屈なんかじゃねェよ!どれもあんまり可愛くて…いっぺんに見てたらいっぱいいっぱいに…」
そこまで言った沖田さんが、ハッ、として又俯いた。
「…格好悪ィ…」
「そっ…そんな事無いですっ!」
私も赤くなって俯くと、ミツバさんと姉上がくすくすと笑う。
「なんだ、2人は純情だな!」
今日は姉上がそれどころじゃ無くて、まだ無事な近藤さんが沖田さんの肩をバンバンと叩く。
沖田さん…近藤さんには弱いよね…もっと赤くなって俯いてる…なんだか可愛い…
「それならまだ俺にもチャンスが…?」
「イヤ、ジミー君には無いでしょ。」
「オメーにも無ぇよ。」
残った3人がそんな事を言いながら私に近付いてくる。
えっ…?何が…
「そんな訳無いだろが!」
「あらあら、困った人達ね…」
にっこり微笑んだミツバさんと姉上が私の前に立ちはだかった…
と思ったら、銀さんが空を飛んで、土方さんが固まって、山崎さんが大量の汗をたらしながら凄い勢いで後退った。
…一体何が起こったんだろう…知りたいような、知りたくないような…
「そろそろ髪形を決めましょうか?」
「そうですね!リボンを付ける事が出来る髪形…ですよね?」
何事も無かったようにくすくす笑った2人が、最初に姉上がしてくれたポニーテールに結い直してくれる…
「はい、これに決まり。そーちゃんお待たせ。」
「新ちゃん、可愛いリボン、買ってもらうのよ?」
うふふ、と笑った2人が私を立たせて、とん、と沖田さんの方に向かって押し出す。
突然の事によろけた私はそのまま沖田さんに受け止められて…
うわっ!こんなに近付いたの初めて…緊張するっ…
「んじゃ、行きやすか。」
「…はい…」
「「「行ってらっしゃい」」」
近藤さんとミツバさんと姉上の笑顔に見送られて、手をつないで歩きだす。
銀さん達があの後どうなったのか気になるけど…でも、皆居るから大丈夫だよね?
特別にお洒落して出掛けたその日のデートは、やっぱりいつもとは違う特別なものになりました。
END
礼
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