誤魔化すように店内に足を進めると、思わぬ所で時間を食ったせいかタイムセールはもう始まってしまっていて…
そこにはおば様方の壁が出来てしまっていた…あんな中に入ってなんて行けないよ!!
「沖田さんの馬鹿ぁーっ!!」
僕が睨むと、おば様の壁を見た沖田さんがペコリと頭を下げる。
「悪ィ…何が欲しいんでィ。」
「今日の特売は、豚肉と、キュウリと、卵(M)です!」
「よし任せろィ。」
ギラリ、と戦闘モードの目になった沖田さんが、勇猛果敢におば様の壁に突っ込んで行く…
あ…埋もれた…
暫くすると、手に戦利品を抱えた沖田さんがヨロヨロと帰ってくる…
「沖田さん!大丈夫ですか!?」
「…ほい…」
戦利品を僕に手渡してくれると…豚肉もキュウリも卵も凄く良い物が2パックづつ有る…
「凄い…僕なんて1パック取るのがやっとなのに…それも凄く良いヤツですよ、コレ…」
「斬り込み隊長舐めねェで下せェ。」
綺麗な髪がぐちゃぐちゃになって…頬っぺたに引っかき傷まで作って…
「ご苦労様です…」
そっと頬を撫でると、沖田さんが赤くなる。
乱れた髪も直してあげると、にっこりと微笑んで僕の手を取る。
「んじゃ、帰りやすか。」
「はい。」
沖田さんが荷物を持ってくれて、万事屋まで送ってくれる。
夜には又逢えるけど…でも、今別れるのは寂しい…
「そいじゃ、後で。」
「はい、待ってます…」
手を振って見送って、万事屋に戻ると銀さんも神楽ちゃんももう帰ってきていた。
すぐに夕飯の支度を始めると、神楽ちゃんが手伝ってくれてすぐに夕食の用意が出来た。
「それじゃ、僕はこれで失礼します。」
2人に挨拶をして帰ろうとすると、神楽ちゃんが僕の腕に掴まってくる。
「新八も一緒に食べてくネ!」
縋る様な目に凄く心は揺れるけど…
「ごめんね、姉上が待ってるし…」
僕が謝って神楽ちゃんの頭を撫でると、ぷぅっと膨れてドスドスと足音を立ててソファに戻る。
「あの…」
「はい、お疲れさん。」
銀さんが苦笑して神楽ちゃんの頭を撫でる。
後は銀さんがなんとかしてくれるんだよね…?
「お疲れ様です。」
はやる気持ちを抑えて家へと急ぐ。
帰ってすぐに、タイムセールの戦利品で夕食を作って先に姉上に用意する。
出勤の時間が迫っているのか、姉上はさっさと食べて仕事に行ってしまった…
…沖田さん来ないな…仕事…忙しいのかな…
準備の出来た夕飯の前でボーッとしていると、呼び鈴が鳴る。
沖田さん!
小走りで玄関まで行くと、やっぱりそれは私服に着替えた沖田さんで…
「新八くーん、土産持ってきやしたぜィ。」
ニヤリと悪戯っぽく笑う手には…一升瓶…
「もう…僕ら未成年なんですよ?」
「気にしない気にしない。」
ずんずんと居間まで入り込んで、すっかり沖田さんの指定席になった場所に座り込むと、早速一升瓶を傾ける…
仕方ないんで、コップを持ってきて卓袱台に置くと、早速並々と注いでいく…
お酒を飲みつつ夕食を始めると、いつもよりもっと饒舌になった沖田さんが僕の料理を褒めちぎる…
そんなに褒められたって…他には何もないからな!
「そうごしゃん、そんなに褒めたってもう何も出ましぇんからね!」
「新八が有るだろィ。」
いつの間にか僕の隣に来ていた沖田さんが、じっと僕を見つめて近付いてくる…
きす…される…
ちゅうっと触れる唇は…お酒の味…
暫くお互いの柔らかさを堪能していると、沖田さんがするっと横にずれていく…
ひゃぁっ…押し倒され………ない…?
そのままずるりと倒れ込んだ沖田さんは、くうくうと眠りこんでいた…
…疲れたのかな…?
それってちゃんとサボらないで仕事してくれたって事なのかな…?
「そうごしゃん、こんな所で寝たら、かぜひきましゅよ?」
ゆさゆさと揺すってみても、すっかり眠り込んでしまった沖田さんは起きやしない。
仕方ないんで、毛布を持ってきてそっと掛ける。
夕飯の後片付けをして居間に戻ると、むくりと起き上がった沖田さんが又寝転がりそうになる…!
「沖田さん!布団敷きますから、ここで寝ないで!!」
「そーごでさァ…そーごって言ったら布団で寝てやりまさァ…」
駆け寄った僕にべったりと抱きついて、半分寝そうになってるのに…
「総悟さん、お布団で寝て下さい?」
「判りやした…新八ィ…大好きでィ…」
そんな事言われたら…ドキドキが止まらない…
僕の部屋に布団を敷いて沖田さんを寝かせると、そのまま気持ちよさそうにすやすやと寝てしまう…
ちょっと…寂しい…もう少しお話したかったな…
明日の朝食の用意をして部屋に戻ると、相変わらず沖田さんはすうすうと寝むっていた。
…ぐっすり寝てるよね…?
そっと寝ている横に潜り込むと、もぞもぞと動いた沖田さんがギュウっと僕を抱き込む…
それだけで…凄く安心して僕の瞼もすぐに落ちてくる。
明日も朝から大騒ぎになるんだろうから…
大好きな貴方と一緒に、今はゆっくり休みましょう。
END
礼
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