僕が小さく丸くなって子供を庇うと、パーンという派手な音が響き渡る。
…でも…僕は痛くない…え…?
「無事か、我が妻よ…」
「カイザー!」
倒れ込んでくる彼を膝に乗せ、僕らの子供を覗き込ませる。
「僕達を…護ってくれたんですか…?」
「当たり前だ…自分の妻子も護れぬ男などにはなっていないつもりだ…」
「…はい…カイザーはちゃんと僕達を護ってくれました…」
僕が泣きそうになって言うと、カイザーが子供に手を伸ばす。
「ソーゴ・ドS・オキタ4世よ…これからは、お前が母を護るのだ…」
愛しむように我が子を撫でる手は、限りなく優しい。
僕は、子供にまで嫉妬してしまうほど、この人を好きになってるんだ…
「新八くん…」
それまで子供を撫でていた手が僕の頬に移る。
導かれるまま降ろされて触れた唇は、酷く冷たい…
「いつまでもずっと…どんなになろうと…俺は新八くんが好きだ…俺の事…忘れないでもらえるか…?」
ふわり、と微笑んだカイザーの全身の力が抜けて、頭を乗せていた太股がずっしりと重くなる。
…え…?嘘でしょ…?
「カイザー…さん…?」
そっと頬を撫でても、その顔は冷たい。
「う…そ…いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
その身体を腕にかき抱こうとすると、ボン、という音と共にカイザーが沖田さんに変わる。
え…?何が…?
「なんかさぁ、俺らイボにとり憑かれてたとかでさ〜二年とか経ってないから。」
「ハリセンのような物でイボを叩き潰すと元に戻るんだそうだ。」
「へ…?」
「ヅラも九兵衛もお妙も神楽も、皆もう元に戻したから安心しろ。」
「山崎も近藤さんも隊士達も、総悟も元に戻した。後はメガネ、お前だけだ。」
そう言って、2人のハリセンが良い音を立てて僕の頭を叩く。
そうすると僕の意識は遠くなって、目の前が真っ暗になった。
4世は…どうなるの…?
僕らの大切な子供…護れなかった…
ふと目を覚ますと、凄く気持ちが良くて、僕は何故かひと回り大きくなった気がした。
僕は今迄何してたんだっけ?
凄く長い間寝ていたような…ひどく幸せな夢を見ていた気がする。
欠伸をひとつ零して起き上がろうと身体を動かすと、何かに拘束されていて全く動けなかった。
なんとか頭は動いたので見れるだけの所を見てみると、僕の身体には何か黒い物が絡みついている。
少しでも緩まないかと、出来る範囲で身体を動かしていると、ソレが少し緩んだので横を向いてみた。
すると、そこには綺麗な見知った顔のドアップ…
わ…寝顔なんか初めて見た…いつもは変なアイマスクで顔隠してるもんな…
僕を拘束していたのは沖田さんの腕で、何故か僕の隣ですやすやと寝ているのだ。
その体温が、抱きしめる腕の力が嬉しくて幸せで。
僕はその結構逞しい胸に擦り寄った。
でも…僕の腕の中に何かが足りないのが酷く寂しい気がする…何だろう…?
暫くそうしていると、沖田さんの眼が覚めたのか、モゾモゾと動き出す。
「お早うございます。」
「…ん…おはよ…」
モゾモゾと動いていた沖田さんが、ピタリと止まって何かを確かめるように僕の身体を撫でまわす。
「…くすぐったいです…」
「しっ…しんぱちくんっ!?おっ…俺ァ…え!?何で!?」
物凄く驚いて顔を真っ赤にしてるけど、それでも僕を離さない。
それが嬉しいなんて…
「何なんでしょう?僕も眼が覚めたらココに居たんで分からないです。沖田さんが僕の返事を聞きに訪ねてくれたんじゃないんですか?」
「イヤ、返事は聞きてェけど…此処ァ屯所の俺の部屋ですぜ?それに…俺ァ新八くんを抱きしめてる…嫌じゃないんで…?」
不安そうな表情は、ドコかで見た気がする。
こんな表情、早く無くしてあげたい。
「沖田さんに抱きしめられるの、嫌じゃないです。だって、僕も沖田さんが好きだから。」
そう言って、ニコリと笑いかけると又顔が赤くなった。
可愛い…
「それは恋人になってくれる、って事ですかィ?」
「そう聞こえませんでした?」
「よっしゃぁぁぁ!大切にしまさァ!俺の子供、たっくさん産んで下せェ!!」
「それは無理です。」
ぎゅうう、と抱きついてくる腕の中でいつものようにボケに突っ込んだけど…何故かそのボケが懐かしい気がして凄く幸せな気分になった。
「その分僕がアナタにたっくさん甘えます…ダメですか…?」
僕がそう言うと、沖田さんがポカンと僕を見る。
あれ…引かれた…?
「駄目な訳あるかィ!勿論俺も新八くんに甘えやすから。夫としても子供としても。」
ニヤリと笑った顔は悪そうで、僕の頭を何かがよぎる。
思い出せなくて気になるけど、きっとゆっくり考えてる暇なんか僕には無いだろう。
だって、沖田さんと一緒に居たら大忙しなんだろうから。
まぁ、ゆっくり思い出せば良いよね?
そう、二年後くらいに。
END
フリリクにご参加有難う御座いました!
そしてお待たせしてしまいまして申し訳ありません…
お題:二年後カイザーと新八
ほんの少ししか出逢って無い2人ですが、妄想は無限に広がりますよね!
ウチのバカイザーは常にヘタレでケダモノすが、少しでも楽しんで頂けたなら幸いです。
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