だから、僕は慌てて離れようとしたのに、ひと回り小さくなったその人は僕の頭を押さえて離さない。
思う存分口内を堪能された後、やっと離してもらえて見えた顔はやっぱり沖田さんで…もうカイザーは居ない…
僕の目の前に居るのは、良く似ているけど違う人…

「え…?新八くん…?え…!?何で俺とちゅうしてんですかィ…?」

きょとん、と僕を見るその顔は可愛くて…

「僕がキスしたのは、沖田さんだけど、沖田さんじゃありません…」

もう逢えないかと思うと、僕の瞳からは涙が溢れてくる。
ソレを見て慌てて起きあがった沖田さんが、オロオロとポケットを探って、取りだしたハンカチを僕の顔に当ててくれた。
その優しさが嬉しくて、僕は泣きながらイボ春とカイザーの話を沖田さんに話した。
頷きながら黙って話を聞いてくれていた沖田さんが、僕の頭をそっと撫でる。
…沖田さんって…本当は優しい人だったのかな…?

「そんな泣くんじゃねェや。後二年待ちなせェ、そしたら俺がカイザーになってやらァ。」

ふわりと笑う顔がカイザーと重なって、僕の顔が赤くなる。

「…でも、江戸征服なんてしないで下さいね…?」

「おう、新八くんだけのカイザーになってやらァ。」

そっと近付いてくる唇が触れてしまう、と思った時、僕の頭にパシンという音と一緒に何かが落ちてくる。

「新八、オマエもイボだから。」

振り向いてみると、そこにはハリセンを持ったヤムチャ銀さん。

え…?僕も…?

そのまま僕の意識は遠くなって、目の前が真っ暗になった。



ふと目覚めると、僕は何かに頭を乗せられていた。
ソレはとても固いけど、何故か心地よくて、凄く良い匂いがした。
そっと目を開けると、綺麗な蒼が僕を覗き込んでいる…え…なっ…!?

「うおわっ!なっ…何が…?え!?何っ!?」

「おはよーごぜーやす、新八くん。」

にひゃりと笑うとても嬉しそうな沖田さん…?
え…?もしかして僕、沖田さんに膝枕されてる!?何で!?
ってかコノ人なんでこんなに機嫌良いの!?
僕、額に肉とか書かれてる?
慌てて額を擦ってみると、急に沖田さんの機嫌が悪くなる。

「俺がちゅーしたんですぜ?拭くなよ。」

「…は…?ちゅっ…ちゅーって…ええぇぇぇぇっ!?」

何で!?何で沖田さんが僕にちゅー!?

「約束したからねィ、二年後期待してなせェ。俺ァ今よりちょーイケメンで背も高くなってっから他の誰かにとられっかもな。だから遠慮しないで今すぐにでも俺に惚れなせェ。」

沖田さんが何を言ってるのか分からない。
何で2年後?誰が誰に惚れる?
…でも、その自信満々な顔がやけに格好良くて…心臓がドキドキ騒いで仕方がない。

「…何で僕が男の貴方の事好きになるんですか…」

赤く染まった顔を見られたくなくてふいっと顔を逸らすと、焦った沖田さんが色々言ってくる。
それでも僕が何も反応しないでいると、スッと目を細めて僕の顔を無理矢理自分の方に向ける。
その表情が、なんでか気になって、心臓の暴走と身体中を巡る血液の勢いは止められない。

「こーんな真っ赤な顔してよく言いまさァ。カイザーになんか負けやせん。二年と言わず二日で好きにさせてみせやす。」

…カイザー…?
何故かその名前が心に引っかかる。
そんな知り合い居ないのに…



その次の日に、おかしなコスプレをした沖田さんが僕に会いに来た。
髪を横分けにして、隊服の上に赤いマントをはおって…
随分と偉そうな態度で僕に迫ってきて、嫌な筈なのに何故か僕は逆らえない。

「だぁーっ!もう!!バカイザー!!」

「合わせ技は止めろ、なんかムカつく。」

その台詞を聞いた途端、何かが僕の中から溢れてくる。
涙も溢れて、思わずカイザーに抱き付いてしまった。

「…新八くん…?」

「何バカみたいな恰好してるんですか…格好だけ真似したって仕方無いんだよバカ!…バカ!」

「…仕方ねェ、ゆっくりじっくり二年かけて惚れさせますかィ。」

「うっさい!バカ!バカ!!」

「へいへい。」


きっともう2度とあのカイザーには逢えないけれど、それでもきっとこの人はあの人と同じくらい僕に優しい。
どんな事になったって、僕を独りにはしないんだ。
だから僕だってちゃんと2年分成長するから…


2年後に、又、逢いましょう。


それまでも、ずーっと一緒だろうけれどね…



END



なんかこう、アレだったので書き直しました!
今度はちゃんとカイ新になった気が…します…
沖田さんよりカイザーが好きな新八くん。
うむ…