「次の将軍は…俺か…」

「たかすぎさ…」

こういうゲームには興味無さそうなのに、この人も参加してたんだ…
でも、きっとこの人ならおかしな命令は無い…

「3番…自慰を…」

恐ろしい事を言おうとしてた高杉さんを沖田さんが踏みつけて、又箸を掲げる。

「将軍様誰でィ!?」

あ…助かった…?
僕…3番だった…

「将軍俺ぇ〜!じゃぁ、1番は俺とセック…」

更に恐ろしい事を言おうとしてた銀さんを、今度は近藤さんが踏みつけて箸を掲げる。
助かったけど…なんで近藤さん、全裸になってるんだろう…

「よっしゃ、将軍様俺でィ!」

先が赤く塗られた箸を高々と掲げたドS王子…
今まで随分と大人しかったけど…この人は…どんな恐ろしい命令をするんだろ…
きっと又僕なんだ…
僕…こんなに皆に嫌われてたんだ…



「将軍様の命令でィ!未成年はもう帰りやすぜ。おら、眼鏡くんチャイナをおぶんな、コイツとっくに寝てやすぜ。特別に将軍様がお前ら送ってやらァ。」

ニコリと微笑みかけてくれた沖田さんは、神楽ちゃんを僕の背中に乗せて、僕の手を引いて歩き出す。
そっと繋がれた手が暖かくて…僕は安心のあまり腰が抜けそうになった。
でも、ここで倒れる訳にはいかないから…!僕はなんとか足を踏ん張って、沖田さんの手をギュッと握り返した。
そうしたら酔っぱらい達が僕らが帰るのを阻止しようとするけど、沖田さんはスルスルとその間を抜けて僕らを店の外まで連れ出してくれた。
勿論、近藤さんも僕らが帰れるように酔っぱらい達の邪魔をしてくれたけど。
それでも凄いや…

「あっ…あの…有難う御座います!」

「何がでィ。」

「助けて…くれたんですよね…?」

「俺ァおまわりさんですからねィ。子供はこんな時間にこんなトコに居ちゃいけねェや。」

そう言った沖田さんは、もう1度ニコリと笑いかけてくれて、僕の手を引いたまま歩きだした。


…どっ…どうしよう…沖田さんってこんな顔で笑うんだ…綺麗な笑顔に…心臓が…破裂しそうだ…
ドキドキと煩く鳴り響いて…顔に血が上りまくってる…
繋がれた手は意外と暖かくって…でも僕よりちょっと大きくてゴツゴツしてて大人の男の人の手で…
そう想ったら、心臓のドキドキは更にスピードをあげてしまう。
こんなの…おかしいから!
きっと安心したから僕の頭は混乱してるんだ!
だから静まれ心臓!!


「おい、新八くん。チャイナ連れてくのは万事屋で良いのかィ?」

「うぁっ!?はっ…はいっ!」

しっ…新八くんって…!
沖田さん…僕の名前、知ってたんだ…
そう想うと、自然と顔がにやけて嬉しさで一杯になる。
こんな…の…おかしいよ…
そんな事が嬉しいなんて、まるで…こい…
ううん!そんな事有る訳無い!!



万事屋に着いて神楽ちゃんを押入れに寝かせると、すぐに沖田さんが立ち上がる。
あ…もう少しだけ…一緒に居たかったな…

「何やってんでィ。新八くんも家に帰んだろ?」

「え?あ…はいっ!あ…でもこの格好じゃ…」

万事屋まで普通に帰ってきちゃったけど…僕は猫耳メイド服のまんまで…
今思うと物凄く恥ずかしい格好で…

「別におかしか無ェとは思いやすが。可愛いですぜ?」

「そっ…そんな事有る訳無いじゃないですか!ぼっ…僕は男ですよ!?」

とんでもない事を言いだす沖田さんに反論すると、一瞬驚いて、すぐに気まずそうな顔になる。
あ…困らせちゃったかな…気を…使ってくれたのかもしれない…

「俺ァそう想うんですがねィ…あー…じゃぁコレかぶっときなせェ。」

バサリと僕に隊服を掛けてくれる。
これ…沖田さんの…

「でも…沖田さんが寒いんじゃ…」

「鍛えてっから平気でさァ。」

またもやニコリと笑い掛けられると、僕はもうそれ以上何も言えなくて…
手を引かれるまま、家まで送って頂いた。



「んじゃ、あったかくして寝ろよ。」

家に着いてすぐに、僕が返した隊服を着て、ぽんぽんと僕の頭を撫でた沖田さんがすぐに歩きだす。
もう少し…もう少しだけ一緒に居たい…

「あのっ!沖田さんっ…お茶…お茶でもいかがですか…?」

そっと制服の袖を掴んで引き留めると、沖田さんが驚いた顔で振り返る。

「…良いんで…?」

「はいっ!僕…もう少しだけでも…沖田さんと一緒に居たいです…」

「…俺も、もっと沢山新八くんと一緒に居てェ…」

そう言ってくれた沖田さんが、ふわりと僕を包み込んでくれる。
そうしたら、何故か抵抗する気になんかなれなくて…僕も沖田さんにぎゅっと抱きついてしまった…


そうしてそのまま、僕らはこっ…恋人がするような事をして…一緒の朝を迎えてしまった…
でもそれは全然嫌な事じゃ無くって…むしろ嬉しくって…
きっと僕は、意外と可愛くてカッコ良くて優しい沖田さんを好きになってしまったんだ。
ピンチから救い出してくれた王子様みたいな人だもの。
好きにならない訳なんか無いじゃないか。


ふわふわしたまま、そっと眠る沖田さんの顔を覗き見るとバッチリと目が合ってしまう。
わ…こっそり見てたのがバレたら嫌われる…?

「そんな不安そうな顔すんねィ。好きですぜ、新八くん…」

「僕も…沖田さんの事が、大好きです!」

そう言うと又嬉しそうに微笑んでくれて、僕はドキドキして…
照れ隠しに抱きつくと、そっと抱き返してくれる温もりに安心して…


幸せってこういう事なのかな?とか想ってしまいました。



END



213000番でユーキチさまにリクエスト頂きました
お題『将軍様ゲームを皆でやってて新八がいっぱい命令されまくってボロボロになったところを沖田が甘い言葉を吐いてお持ち帰り』
でした。

お待たせしました!
皆さん酔った勢いで欲望のままに進んだおかげで沖田さんが爽やかな好青年になってますが(多分)、まぁ、裏は策略にまみれて計算通りに新八を頂いちゃった感じになってると良いなぁ、と思いました。
全員新八狙いですが、近藤さんだけは、マジで子供達を心配していた感じで。沖田さん近藤さんも上手く使った感じで。
そして、将軍様ゲームは勿論、新八が何を引いたか分かるようなからくりをしていました。山崎辺りが。
なので、沖田さん以外も結構な役得だったんじゃないかなぁ…とか…

そんな感じで楽しんで書かせて頂きました!
この度は素敵なリクエスト有難う御座いました。少しでも楽しんで頂けたら幸いです!