百の華より君が良い



吉原の太陽を取り戻したあの一件から早数週間。
僕は、自分の力不足をしみじみと感じて毎日を稽古に費やしている。
本当なら良い師匠に就いて、ちゃんと修行したかったけど…僕の周りの大人は全く頼りにならなくて…

こんな事なら、姉上にストーキングしているゴリラに相談すれば良かったかも…
あんなだけど、あの人真選組の局長だし…ってしっかり僕っ!そんな事したら後々大変な事になるじゃないか!!大体姉上に殺される…

つい、そう考えてしまった自分を律しながら、僕はいつものようにタイムセールを狙って大江戸ストアに向かう。
さて、今日の特売はなんだろ…?

「新兄ー!グーゼンだね!!」

そう元気のいい声がしたのでそちらを見ると、手を振りながら僕の方に駆け寄って来る晴太君と、車いすに乗った日輪さんと、それを押しながら片手を上げてる月詠さん。
…良かった…今日は晴太君ガンダムじゃ無い…

「皆さん揃って今日はどうしたんですか?買い物ですか?」

「まーね。外の世界をオイラが案内してるんだ!」

そう誇らしげに言う晴太君。
それがなんだか可愛くて、僕が頭を撫でて褒めてあげると、晴太くんは照れたように嬉しそうに笑った。
日輪さんも月詠さんも、嬉しそうに僕らを見てて…
吉原に太陽が戻って本当に良かったと思った。

「新兄はドコ行くの?良かったらオイラ達と一緒に江戸観光しない?」

「晴太だけではちと心配だからな。新八が案内してくれたら助かるんだが…」

「お願い、新八くん。」

3人揃ってこんなに誘われると悪い気はしないけど…
いや、中身はどうあれこんな美人2人に頼られて断るなんて男としてどうなんだろう?
ここはもう、ぐうたら2人の夕食なんかほっぽって一緒に江戸観光…イヤイヤイヤ、そんなのバレたら後で何を言われるか…

「あー…すみません、僕これから晩ご飯の買い物に行かないといけなくって…」

そう言って頭を下げると、晴太君の顔が曇る。

「そんな…どうしても…ダメ…?」

こんなに懐いてくれてるのは嬉しいけど…

でもタイムセールは大事だし!
逃したら万事屋の夕食はご飯とふりかけになっちゃうし!

「ごめんね、銀さんや神楽ちゃんが待って…」

「私を袖にしてまで行かなきゃいけない所なのかい?」

ひっ…日輪さんが潤んだ目で僕を見上げながらそっと手を握ってくるぅぅぅっ!?
なっ…そんなっ…そんな事されたら僕はァァァ…!

「あっ…あのっ!僕が買い物して行かないと姉上が…」

「なんじゃ、新八は優しいんじゃな。ならば、日輪や晴太の言う事も少しだけ聞いてやってはくれんか?…ついでに私も…」

つっ…月詠さんんん!?
ツンデレ!?これがツンデレってやつですか!?
そっと僕の着物の袖を掴んで言うなァァァ!萌え滾るわァァァ!!!

「あっ…あのっ…僕は…」

正面に吉原一の太夫
右にデレ状態の死神太夫
左に弟分
そんな3人に囲まれてお願いされたら、僕はもう首を縦に振るしか無いじゃないか!
でも神楽ちゃんが…姉上が…銀さんはまぁ良いか…後が恐いし!
でも、今この3人を振り切れるのか!?僕!?



「新八くん何やってんですかィ?タイムセール始まっちまいやすぜ?」



天の助けのようなその声は、ものっすごく不機嫌な沖田さんの声で…

え?
何でこの人こんなに機嫌悪いんだ!?

そっと顔を見ても全くの無表情で何を考えてるのか分からないくせに、纏うオーラは恐いくらい不機嫌絶好調で取りつくしまもない。
なんか…出逢ったばっかりの頃みたいだ…
ここ最近は買い物の度に見廻り中の沖田さんと出くわして、その度にたわいのない話なんかして…随分仲良くなった気がして凄く嬉しかったのに…


「あのっ!沖田さ…」

「あら、無粋な男は嫌われるわよ?」

「なんだよ!今はオイラ達が新兄と話してるんだぞ!?」

「貴様に用は無い。早々に居ね。」

何故か敵意満々の3人が僕らの間に入り込んでくる。
なんだろう?吉原と真選組も敵対してるのかな?
まぁ、こんなんでもこの人警察だしね…3人を捕まえさせる訳にはいかないし。
よし、ここはひとつ僕が沖田さんを遠ざけよう!

「アンタ達に無くても俺には有るんでねィ。新八くん、綺麗どころに囲まれてるとこ悪いんだがねィ…」

「あ、はい!じゃぁ向こうで話しましょうか。すみません皆さん、僕行かなくっちゃ。この人こう見えても警察なんで!」

僕がさり気なく沖田さんが捕まえる気だって言う事を3人に伝えて庇うように沖田さんとの間に入ると、日輪さんと月詠さんが目を見開く。
あー…伝わったかな…?
なんとかこの人達が捕まる前に離れないと!

「あの、沖田さん…」

僕が3人から離れるよう沖田さんを誘導しようと口を開くと、何故か沖田さんは僕の手を掴んで早足で歩き始めた。
え…!?何!?
訳が分からないまま引かれるままに歩いて行くと、僕らは大江戸ストアの前に辿り着いた。

「えっと…有難う御座いました…?」

何にせよタイムセールに間に合いそうだ。
僕1人じゃ、絶対そのまま江戸観光に連れていかれてボコボコにされていたよ。姉上と神楽ちゃんに。

だから僕がお礼を言うと、沖田さんがモジモジと頬を染める。
何だ…?ちょっと可愛い…

「いや…誰なんで?あの美人さん達…」

…沖田さんも男だよね…可愛い顔しててもさ…
なんだよ、日輪さんと月詠さん狙い?
でもドSだからあんな態度とっちゃったとか?

…なんだろ…すごいムカつく…

「この間まで入ってた仕事の依頼人です。」

嘘は言って無いし。
実際そうだし。

僕がそう言うと、沖田さんが酷く安心したように大きく溜息を吐いた。
何だ…?

「あー…新八くんナンパされてんのかと思って焦りやした…」

そう言って笑った顔は、今迄見た中で一番可愛くて。
僕は不覚にも心臓をときめかせてしまった。
とっ…ときめかすって何だ!?

「何ですか?僕なんかが綺麗な女の人達に囲まれててヤキモチ焼きました?」

誤魔化すように僕がそう言うと、途端に沖田さんの顔が真っ赤に染まる。

え…?何が…!?

「…ヤキモチ焼きやした…綺麗なねーちゃん達に新八くん持ってかれんじゃねェかって…」

「えっ!?僕がモテてたからじゃなくてですかっ!?」

「えっ…!?」

話の食い違いに気付いて、その本当の意味に気付いた僕らは恥ずかしながら大江戸ストアの前で頬を染めてモジモジするなんて事をしてしまった。
あぁ恥ずかしい!
暫く大江戸ストアに行けないじゃないか…!

でも、その時の僕らはそんな事考えてる余裕なんかなくって…
お互い、どのタイミングで切りだそうかに一生懸命だった。


その後すぐに、僕には最高の師匠が出来た、と言っておけば後は推して知るべし。



END



拍手コメ頂いたんで書いてみましたが、色々迷子
ご期待に添えませんでしたらすいません…
因みにウチでは企画でしかフリリクはやってませんので