フーセンガム
くちゃくちゃくちゃ ぷ――――っ
くちゃくちゃくちゃくちゃ ぷぅ――――っ ぱちん
部活上がりの帰宅途中、僕の隣で沖田君が、ずっと風船ガムを膨らませてる。
器用だよなぁ…上手に膨らませてる…
ガムはフルーツの香りを辺りに漂わせて、ぷぅっ、と膨らんでは萎み、萎んでは膨らむ。
僕がじいっとその光景を見つめていると、沖田君が
「ん。」
と言って、僕にガムを差し出す。
「あ…有難う!」
僕が嬉しくなって、笑って風船ガムを受け取ると、沖田君が赤くなって横を向く。
あはっ、照れたのかなぁ…無表情無関心みたいに言われてるけど、僕の前ではそんな事無いのになぁ。
それに、たまに優しいよね、沖田君って。
ドSを自認してる沖田君としては、認めないだろうけど。
折角貰ったガムなんで、早速包み紙を剥がして口に入れる。
くちゃくちゃくちゃくちゃ…
良く噛んで柔らかくしないとねっ!
えへへへへ…
沖田君より大きく膨らませたら、悔しがるかなぁ?
僕がくすくす笑っていると、顔を赤くしたままの沖田君が怪訝な顔で僕を見る。
さぁ、もうそろそろ良いかな?
ぷぅ…ぱんっ!
僕が意気込んで膨らませたガムは、心持ち膨らんで、すぐ割れた。
あれっ?あれっ?おかしいなぁっ!?
もう1回良く噛んで、ぷぅっと膨らませる。
すっごい頑張って息を入れようとしたけれど、なんでか膨らまない。
ん―――――っ…
拳を握って、ぷるぷるしながら膨らませようとするけど、やっぱり全然膨らまない。
もぅ、なんでっ!?沖田君はあんなにさりげなく膨らませてるのにっ!
「新八ィ、頑張れー」
沖田君が、にこりと笑って僕を応援してくれる。
ぽんっ、と肩を叩いてくれて、お手本みたいなキレイな風船を作る。
「ん――――っ…」
僕は又嬉しくなって、ぷるぷる震えながらも一生懸命ガムを膨らませようとするけど、やっぱり出来るのは小さな風船だけで…
「沖田君…僕、沖田君みたく上手く膨らませられないよ…なんでかなぁ…」
なんだか悲しくなってきて、ちょっと涙目になってしまった…
折角沖田君がガムをくれて、応援してくれたのに…
僕がじいっ、と沖田君を見上げると、顔を赤くした沖田君がぐんっ、と僕に近付いて来る。
「きっと、ガムが悪いんでさぁ。俺の噛んでるコレなら、新八でも上手く膨らませられらぁ!」
「えっ?それとコレ、違うの?」
「イヤ、同じ。」
舌の上にガムを乗せたまま、沖田君の顔がどんどん近付いてくる。
えっ!?何するつもりだ!?コノ人ォォォォォォ!!??
「えっ…ちょっと…ふざけるのやめなよ、沖田君…」
「俺のガムやりまさぁ。新八、口開けなせぇ。」
「ちょっ!待て待て待てっ!そんなガム噛めるかァァァァァァっ!ってか口移しも無いからっ!!」
僕が沖田君のおでこに手を置いてぐいぐい押しやると、沖田君は負けじとぐいぐい顔を近付けてくる。
まっ…負けてたまるかぁっ!!いくら沖田君だからって、噛んでたガムなんか口に入れられるかぁっ!!
「こちとら親切で言ってんだぜ?大人しくコイツででっけぇフーセン作りなせぇ!」
「だからっ!無理だってばっ!」
「遠慮すんねィ。」
「してないしてないしてないっ!」
僕はのけぞって避けようとするけど、沖田君はどんどん追いかけてくる…
うがぁぁぁぁっ!根性ォォォォォォォォォっ!!
でも流石に限界はあるもので…
僕の限界の先には公園のベンチが有った。
あぁっ!こんな所に座っちゃったらもう逃げられないよっ!?
「や、ちょっ!マジ勘弁して下さいっ!噛んでたガムなんて、無理無理無理無理っ!!」
「…新八は冷たいでさァ…俺ァ新八が噛んでたもんなら喜んで口に入れますぜ?」
しょんぼりした顔で僕を見て、僕の頬に手を添える。
「そんな…だって…ガムは…無理…」
「…じゃぁガムは諦めるから、キスさせろィ…」
むすっとした沖田君が、ガムを紙に包んでゴミ箱に捨てる。
その、僕を見つめる目があんまりにも悲しそうなんで、僕は辺りを見回した。
…誰も居ないよな…
噛んでたガムを包み紙につつんで、ゴミ箱に捨てる。
「…ちょっとだけですからね…?」
「おぅ!ガム膨らませんのは舌使いも大切ですぜ?そいつを教えてやらぁ!」
にっこり、と珍しく邪気の無い顔で笑って、ちゅうと僕に吸いついてくる。
…教えてやる、とか言ってたクセに…結局訳分かんなくされちゃったよぅ…
僕がくたりとしていると、満足したのかにこにこ笑って僕の隣に座り直した沖田君が、もう1回ガムをくれる。
「ほれ、脹らましてみ?」
くちゃくちゃくちゃくちゃ…ぷぅ――――っ…あれっ?
「…膨らんだ…」
「先生が良いからだろィ。又膨らませられなくなったら、いつでも教えてやらぁ。」
ニヤリと笑って得意気に風船ガムを膨らませる顔がムカついたんで、僕はそのガムを指でぱちんと潰してやった。
END
素敵過ぎるTOP絵に萌え滾って送りつけたモノをサルベージ
そういえば、ココにはアップしてなかった
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