ひらひらと



ふわり、と白い花びらの散る中、新八はふわりと笑った。

花びらが蝶々のようですね、と子供みたいにはしゃいだ。

ソレを見てると嬉しくなって、俺もにこりと笑った。

最近はめっきり蝶々が減ったんで、久し振りに見たいですよ、なんて新八が言うから、俺ァ次のデートは蝶の見れる場所にでも連れてってやろうか、なんて気軽に言っちまった。
凄く楽しみにしている新八を見ていると、最悪を想像なんて出来なかった。
気の緩んだ俺を襲ったのは攘夷志士の銃弾で…
俺なんかを庇った新八は、銃弾に倒れ、意識不明の重体になっちまった…

夏になっても秋になっても新八は目を覚まさない。

なんとか暇を作って毎日見舞いに行く俺を、姐さんも万事屋の旦那もチャイナも新八に逢わせてくれなかった。
それでも毎日毎日逢いに行ってると、そのうち諦めたのか、逢わせてくれるようになった。

眠ったまま目を開けない新八の手を握り、呼びかける。
この手を伝って想いが伝わる様に、ぎゅうぎゅうと握りしめる。
痛いですよ、この馬鹿力っ!なんて怒ってくれるかと期待して、ぎゅうぎゅうぎゅうぎゅうと握りしめる。
…でも、そんな事はなく…新八は眠ったまま起きねェ。

そのまま又春が来て、1年が過ぎた。

今日は非番だから、1日新八の側に居れる。
俺にしては珍しく、朝一で新八の家に行く。
いつものように、ぎゅうと新八の手を握って、話しかける。

「新八ィ…もう1年も眠ってんですぜ?そろそろ起きなせェ…」

俺の声が聞こえてるのか聞こえてねェのか、新八の目は開かねェ。
綺麗な深い黒が現れる事は…もう無いのか…?
このまま一生…新八の声を聞くことも…無いのか…?

「新八ィ…オメェに逢いてェ…」

俺が更に力を入れて、ぎゅう、と手を握っても、新八が動くことは無い。


「…沖田さん…今日は早いんですね。」

すっと襖が開いて、力無く微笑む姐さんが、新八の部屋に入ってくる。

「今日はお天気が良いから、この部屋も空気の入れ替えをしようと思って…新ちゃん?庭の桜が綺麗に咲いたのよ?新ちゃんは桜が大好きだったわよね?早く起きないと全部散ってしまうわよ?」

部屋の窓を開け放って、姐さんが新八にそう語りかける。
ふわりふわりと部屋の中に桜の花びらが降り注ぎ、新八の顔にもふわりと落ちる。

その中に。ひらひらと舞う白い花びらが現れる。
それは、白い蝶々で…
まるで花に誘われるように、新八の頬にとまる。

「…新八ィ…オメェの見たがってた蝶々が飛んで来やしたぜ…ほら、早く目を覚まさねェと、飛んでっちまいやすぜ…?」

俺が反対側の頬を撫でてやると、蝶々がひらりと飛び上がる。

「ほら、新八ィ…ひらひらと蝶が舞う…」

俺の言葉の途中で、今まで見たくても見れなかった深い黒が現れる…新八ィ…

「…あ…ちょうちょ…」

聞きたかった声を聞いた所で、酷く細くなってしまったその体を、俺は力一杯抱き締めた。


END


ケータイの方にはアップしていなかったんでサルベージ。
お一方の為だけに書いたものなんで、今迄アップしてませんでした。