カンワキュウダイ



「お―い、総悟居るか?」

俺が部屋で良い夢を見ていると、土方さんの声で目が覚めた。


…チッ…最悪の目覚めだぜィ…


「何ですか土方さん。マヨのストックでも無くなったんですかィ?」

「仕事だ。何でそんな事オマエに報告に来なきゃならねぇんだ。」

仕事?見廻りの時間でも無いし、何か有った訳でも無さそうだし。…何だァ…?

「何でも、今度の表紙で万事屋とウチで衣装を交換するって企画が持ち上がったんだそうだ。んで、今日表紙用の写真を撮るんだと。万事屋一行ももう来てるんで、オマエも早く来い。」

「へぇ―っ…万事屋とねェ…」

俺ァ誰と交換だ?体格からいって新八辺りとかねェ?
アイツの衣装じゃ、俺の普段着じゃねェか。


土方さんについて写真を撮るってェ場所まで行くと、新八とチャイナが、きゃっきゃっとはしゃいでいやがった。

……ガキか………

「よぉ、新八ィ。ウチの隊服着んのがそんなに嬉しいのか?」

「あ、沖田さんっ!楽しみですよ―、だって真選組の隊服なんてこの後一生着ること無いですもん!」

新八が目をキラキラ輝かせて笑う。

「…そんなモンですかねィ…じゃぁ俺の隊長服着なせェ。」

「あ、何かもう着る服決まってるみたいですよ?僕は平隊士の服みたいです。山崎さんとトレードみたいですよ?僕は。」

「あ―、確かに…地味だもんなァ、新八。」

「ヒドイですよっ!…でも、そんな感じで決まってるみたいですよ?銀さんと土方さんが交換するみたいですし…」

「じゃぁ俺はチャイナ辺りですかィ?」

…ちょっとイヤな感じだが、まぁ、こん中でチャイナドレス着れるのは俺ぐらいだろ?見たくねェよなァ、土方さんや近藤さんのチャイナドレス姿は……


「いえ、神楽ちゃんは近藤さんです。」


新八が悲しい目で遠くを見る。
え…?近藤さんがチャイナドレ…

「じゃぁ俺は…?」

「定春です。」


「は?」


「定春です。犬の着ぐるみ用意して有りましたよ?」


犬…ですかィ………


全員が着替えてすぐに写真を撮る。
世にも恐ろしい写真が1枚この世に誕生した………

平隊士の制服を着た新八が、着ぐるみに興味津々で俺に近寄ってくる。触りたくてウズウズしている感じだ…まぁ、確かにフカフカですがね…中身は俺って判ってんですかねェ?

「沖田さんかわい―――!似合いますよっ?」

「…わん…」

「フカフカしてる―!触って良いですかっ?」

「…わん…」

新八が嬉しそうにえへへ―――っ、と笑いながら、俺の着ぐるみを触りまくる。
何かくすぐってェよ………

「新八も似合ってやすぜ?平隊士の制服。地味さに磨きがかかって山崎みたいでさァ。」

「あははははっ、犬は黙れ。」

新八の頬に怒りマークが浮かび、本物の犬の方に走って行ってしまって今度は向こうを触りまくっている。
犬は迷惑そうにジロリと見たが、新八と確認して大人しくしている。
…なんでィ、俺の方が可愛い子犬じゃねェか。

「ハハッ、振られたな、総悟!」

…チャイナドレス姿の近藤さんが傘を持って近付いてくる。
うっすら化粧もしているようで…ちょっとキツイ………

「近藤さん…そろそろ着替えやせんか…」

「ん?まだ何か有るみたいだぞ?」


その後何件かこの格好のままの仕事が入っていたらしく、結局1日この仮装がとかれる事は無かった。



つづく