それは本能



土方さんから逃れて公園を駆け出して、そのまま家まで走って帰る。幸いな事に、途中で沖田さんや山崎さんに会う事は無かった。
おかしいよ!土方さんに相談したら全部解決するハズだったのにっ!土方さんは普通の人だと思ってたのにっ!!(マヨ以外。)

僕は、なんだか裏切られた気持ちで卓袱台の前に座り込む。
卓袱台に用意してあるお茶を淹れて一息ついたら冷静になって、急にイロイロ浮かんできた。

なんなんだ、アノ人達っ!?
真選組って、そのテの人達の集団なのかっ!?

まぁ…男の人ばっかりだもんなぁ…でも、土方さんや沖田さんは女の人にモテてる、って聞いたけど…
違ったのかなあ…?
…やっぱり、キレイな人とか弱そうな人が狙われたりするのかな…あ!平隊士の人とかも上司の人に無理強いされてたり…?

…沖田さんってキレイだよなぁ…それに、山崎さんって弱そうだよなぁ…いっつも土方さんにこき使われてるし…

そう思った途端、僕の脳内に映像が浮かんでくる。


横座りで、怯えた瞳をコッチに向ける山崎さんが…乱れた着物を慌てて直す………オエっ………


いやいやいやいやナイナイナイナイ、僕は無理!絶対無理!!
僕がイヤな画像を振り払うようにぶんぶんと頭を振ると、脳内映像は消えた。

何だよ、今の映像はっ!むしろ逆だろ?山崎さん、なんか恐かったし、嫌がる部下を、アノ笑顔で無理矢理襲ってそうな感じだ…

じゃぁ沖田さんは…?強い筈だけど、土方さんとか近藤さんみたいに大きくないし………僕の頭の中に、脳内映像が再びやってきた。


乙女座りの沖田さんが、涙目で乱れた着物を押さえている。

「なっ…何するんでさァ…」

「へっ、良いじゃねぇか。お前だって嫌いじゃねぇんだろ?」

「嫌っ!止めてくだせェっ!土方さん!!」

びりびりびりびりびりぃ―――――っ
沖田さんの白い肌が露になり、怯えた瞳から涙がこぼれ落ちる。

「新八ィ………」


…ずくん……


…って、はっ!?僕は今何考え………って………

え――っ!?え―――っ!?えぇ――――っ!?何何何何何何何何!?

ちょっ…僕っ…何に反応しちゃってるのっ!?
やっ…ちょっ…信じらんないっ!!ウソでしょっ!?
スリッパにでも反応した方がまだましだよっ!有り得ないから!!!友達なのに、勃つなんて………次に会った時、どんな顔して会えば良いんだよっ…

…って、あれ?何会う気でいるんだ?僕…

でも、何とかしなきゃな…ココまできたら、はっきりさせないと外も歩けないよ!…ってか、何だコレ?何この状況。僕って何?何が僕!?

暫らくして、イロイロ落ち着いた僕は、すっくと立ち上がり外に出る。真選組屯所に殴り込みだっ!



屯所に着くと、何故かアフロな山崎さんが泣きながら駆け出してきた。なんでアフロ…?

「あ、山崎さん…」

「新八君!何?何?俺に会いに来てくれたの?」

僕の声に気付いた山崎さんが駆け寄ってくる。いつの間にかアフロは治っていた。

「元気そうでなによりだよ!副長に何もされなかった?」

「まぁ…山崎さんに会いに来たと言えばそうなんですが……沖田さんと土方さんにも用事があるんです。出来れば3人一緒で…」

ニコニコ笑いながら近付いて来る山崎さんを片手で止める。
必要以上近付かれたら、キケンだよ、この人……

「本当なら皆さん1人1人にお返事しなきゃいけないんでしょうけど、全員聞き分けてくれなそうですから皆さんまとめてお返事させて頂きます。中庭に集まって頂けますか?」

「うん、良いけど…」

山崎さんが不思議そうな顔をした後、合点がいったように笑う。

「あぁ、誰と付き合うか、はっきりさせてくれるって事だね?じゃぁ、隊長と副長を呼んでくるよ。」

「よろしくお願いします。」

本当は違うんだけど、まぁ良いか。僕はぺこりと頭を下げて中庭に行く。

…山崎さんって普通にしてると良い人なんだけどなぁ…

暫らくすると、中庭に皆さんが集まってくれる。何故か、近藤さんも居た。
…当然だけど、沖田さんも居る。珍しく全くの無表情で、何を考えているのか分からない。その姿を見ていると、ふっ、と僕の頭の中にさっきの映像が浮かんでくる…いっ…いかんいかんいかんっ!早く終わらせて帰ろう…

「すみません、お忙しい所時間をとらせてしまって…集まっていただいたのは他でも有りません。皆さんに言いたい事が有ります。こっ…告白のお返事です…」

僕が話し出すと、しん…と水を打ったように静かになる。

…何で3人とも期待に満ちたキラキラした目でコッチを見てんだよ!?
ねーよっ!
アンタらの期待にこたえるような事はねーよっ!!

「皆さんのお気持ちは有難いんですが…ごめんなさいっ!僕は誰とも付き合いません!ってか、僕男ですからっ!皆さんの間では普通の事なのかもしれませんけど、僕にはそうゆう趣味は有りませんからっ!」

僕が一気に全部言い切ってフ―!フ―!!と言っていると、3人がポカン、とコッチを見る。

「ちょっ…新八君!?何誤解してるのか怖いけど、別に俺たちは男が好きな集団じゃないからねっ?イヤ…こんだけ皆で告白してたら、そう思われるかもしれないけど…でも!新八君だからだよ?皆、新八君だから、好きになったんだよ?」

山崎さんが意気込んで言った後、他の2人がうんうんと頷く。

「だまれ変態。ある日突然、男にモッテモテになってみやがれ。嬉しいか?アンタ嬉しいか?」

僕の目が据わり、山崎さんをねめつける。姉上のような迫力が出たのか、皆大人しくなった。

「とりあえず、今後一切僕にそういう理由では近付かないで下さい。近付いたら、最終手段に出ます…姉上に相談します。」

ざわっ…とざわめいた後、静かになる。

姉上と聞いて黙っていられなかったのか、不思議そうに近藤さんが口を開く。

「新八君、良く判らんのだが…この3人が君に何か迷惑をかけたのかな…?」

「ええ…まぁ…」

僕があいまいに笑うと、近藤さんの目が険しくなる。

「すまなんだ、俺がしっかりしていなかったからだな…もう迷惑かけないようにさせるよ。なぁ?トシ?総悟?ザキ?」

近藤さんに笑いかけられた3人が、ひくり、と止まる。

「そんなぁ、局長―、僕は新八君の事が好きなだけなんですよぉ―!好きな人と付き合いたい、って思うのはいけない事ですか!?」

近藤さんが困った顔で山崎さんを見る。

「イヤ…それは…でも、新八君が困ってるしな…?」

「近藤さん、俺だって新八に惚れてるだけだ。」

近藤さんが更に困った顔になる。

「トシぃ…お前いつから男色に走ったんだ…?大体、新八君は総悟の恋人なんじゃなかったのか?」

ちょっと待てっ!何だその認識はっ!!

「違いますっ!僕と沖田さんは友達ですっ!!」

近藤さんが、意外そうな顔で僕を見る。

「そうなのかい?俺はてっきり…」

「そうですっ!!」

「俺は違いやすぜ。」

今まで大人しかった沖田さんが口を開く。

「沖田さんっ!元はと言えば、沖田さんが僕にこっ…告白なんてするからっ…何で僕なんですかっ!?沖田さんなら、綺麗な女の子や可愛い女の子が選り取りみどりじゃないですかっ!僕ら、友達じゃないですかっ!?」

自分の台詞で胸がギュウっとなる。何だよ…なんなんだよ、僕っ!

「前にも言ったじゃねぇか。仕方ねぇだろィ、俺だって信じらんねぇや。新八なんざ乳もねぇし、尻もねぇし、口うるさいメガネだし。」

「メガネ関係無いだろっ!全国のメガネ好きに謝れ!!」

「…ツッコミだし。でも、好きなんだから仕方ねぇだろ。そう思っちまったんだから。」

そっ…そんな…そんな事言われたって…っ………
僕は顔が赤くなるのを感じながら、う―、とかあ―、とか唸っていた。

「新八君…君は本当に総悟の恋人じゃあ無いのかい?俺には仲の良い恋人同士に見えるんだが…」

近藤さんが、何の邪気も無い笑顔で僕に言う。

「何でですかっ!?だから、僕は男ですって!!男の人とは恋人にはなりませんからっ!!」

「え―っ?新八君、俺は諦めないよ?」

山崎さんが、スゴイ笑顔で宣告する。

「新八、お前はまだ俺を良く知らない。もっと俺を知れ。きっと好きになる。」

土方さんが、少し顔を赤くして言う。恥ずかしいんなら言わなきゃいいじゃん。

「新八ィ、俺はしつこいって言いやしたよね?」

沖田さんが、綺麗に笑う。

「なっ…もういい加減にして下さい!近藤さん、何とかして下さいよ―っ!」

僕が近藤さんに泣きつくと、3人揃ってギロリ、と睨みつける。

「すまんな新八君、こうなったらもう俺にもどうにも出来ん。覚悟してくれ。3人とも良い奴だからな!誰を選んでも楽しいぞ?俺としては総悟が良いと思うんだがな…まぁ、宜しくたのむよ。」

近藤さんがニカッ、と笑いながら、僕に最後通告をする。

…めまいがするよ…

「だからっ!僕は男の人とは付き合いませんからっ!!もう今後一切僕に近付かないで下さいっ!」

僕はそう叫んで逃げるように走り出す。

「諦めませんぜ―――――!」

「俺も負けませんよ――――っ!」

「落とすぜ――――!!」

嫌な声が延々と聞こえる。僕は耳を塞いでスピードを上げる。
わ―っわ―っわ――っ!!何も聞こえない!聞こえないっ!!
…でも…あの3人相手じゃあ頑張っても負けそうだよ…
もう…闘うしかないのか…
最終兵器《姉上》の投入はなんとか避けたいんだけど…銀さんと神楽ちゃんには相談しようかなぁ…?
僕だけじゃ、いっぺんに3人相手は無理だよ…

うん、そうしよう。

後ろを確認しても、誰も追っては来ていなかったんで、僕はそのままスピードを上げて万事屋に向かった。



つづく