女は魔物



「ちィーっす、新八居るかィ?」

いつもの如く、いつもの時間に、おやつ片手に沖田さんがやってきた。
なんだかんだ言っても神楽ちゃん、この時間には絶対家に居るんだよねー。やっぱりまだまだ花より団子なんだよね。

「サド丸っ!又来やがったアルか!今日のおやつは何アル!!」

「あァ?テメーに持ってきてんじゃねェよ。今日はチョコチップクッキーでィ。欲しけりゃ大人しくしてな!」

沖田さんが、へんっ、って顔で神楽ちゃんに言う。
なんだかんだ言って、沖田さんも神楽ちゃんと銀さんの分も買ってきてくれるんだよね…
優しいトコ、有るんだよね…沖田さん…

ぐうっ、と拳を握って大人しくなった神楽ちゃんを通り越して、僕にクッキーの袋を渡してから、沖田さんがソファに座る。
もうすっかり指定席になったよなぁ、ソコ…

お茶を淹れようと僕が台所に立つと、ソファにもたれかかって沖田さんが僕に話しかけてくる。

「銀の旦那はどうしたんでィ?この時間に居ないなんて珍しい事もあるもんだねィ。」

沖田さんの言うとおり、いつもなら、おやつの時間には何があろうと必ず銀さんも帰ってきてるんだけど…

「あー…銀さんは…ちょっと面倒事に巻き込まれたみたいで…出かけてます。」

「天からさっちゃんが落ちてきて、入りムコになったネ。」


「は?」


沖田さんが変な顔で神楽ちゃんを見る。
あはは…こんな表情初めて見た…なんか可愛い…

「イエ、朝僕が万事屋に来たら銀さん女の人と一緒に寝てて…僕らてっきり銀さんが連れ込んだんだと思って、責任取れって詰め寄ったら銀さんもその気になって入り婿になるって飛び出してったんですけど…」

「旦那もなかなかやりますねィ。」

「それがどうも違ったらしいんですよね。後で見たら、銀さんの寝所の天井に穴が開いてて…」

「さっちゃんは天女だったネ!」

神楽ちゃんが得意気に言う。
イヤイヤイヤ、違うと思うよ、多分。

「イエ、忍の格好してたんで、多分どこかの忍びなんじゃないかと…この時間まで帰ってこないって事は、きっと何か面倒事に巻き込まれてますよ、あの人。」

僕があはは、と笑うと、ムスっとした沖田さんがいつの間にか僕の隣に来ていた。

「新八は随分旦那の事判ってるんですねィ…」

お茶を淹れてる僕の後ろから肩に顎を乗せて、ぶいぶい文句を言ってるけど…

や…なんかくすぐったっ…

「や…ん…ちょっと沖田さん!くすぐったいですから!離れて下さいよ!」

僕が怒って振り向いたのに、なんでか沖田さんの機嫌が良くなった。なんだよ。

「旦那は信用無いですねィ。俺ァ女連れ込むような事無いですぜ?なんせ新八一筋ですからねェ。」

「はいはい。いい加減にして下さいね、僕は男の人相手にそんな気ありませんから。」

やけに機嫌の良い沖田さんを放っといて、お茶を淹れる。
すると沖田さんは又、僕の肩越しにお茶を淹れてる手元を覗き込んでくる。

「へぇ、上手いもんですねィ。これならいつでも嫁に来れますぜ?俺の嫁に。」

沖田さんの顔を見上げると、にこにこ笑ってる。
何だよもう…何でそんな顔で笑ってるんだよ…

………可愛いじゃん………

「何度も言ってますけど僕は男ですから!!誰の所にも嫁になんか行きませんから!!…そんな可愛い顔したってダメですからね!!」

そう怒鳴りつけたっていうのに、沖田さんが、きょとん、とした顔で僕を見た後、満面の笑顔になる。

「可愛い顔、ですかィ?俺ァ。でも俺ァ新八の方が可愛いと思いやすがね。」

「ぼっ…僕そんな事言ってませんよっ!なんですか、可愛いって!!」

僕がオロオロと言い訳してると、沖田さんの手が僕の頬に触れてすっと近付いてくる…ヤバイっ!

慌てて手を払おうとしたけど、一歩遅かったよぅっ…
沖田さんの唇が僕の唇に当たって、すっと離れていく…

「なっ…ちょっ…」

「おっと、騒ぐとチャイナが気付きやすぜ?あ、茶ァ早くな。」

沖田さんがバリバリとクッキーの袋を開けて、お皿に移して居間に持って行く。

なっ…!
今何しやがった!?このドSっ!!
でも…なんでだろ…イヤじゃない…なんで………?

その気持ちに気付いちゃったら終わりな気がするから…僕は気付かないフリをする…

僕は…そんなんじゃない………


つづく