僕がとぼとぼと真選組屯所に向かって歩いていると、途中に有る駄菓子屋さんのベンチで昼寝している沖田さんを見付けた。
たかたかと近付いていくと、沖田さんがゴロリと寝がえりをうって幸せそうに笑う。
「…新八ィ…」
うわ!流石隊長クラスは気配だけで分かるんだ…!凄いっ!
そう思って暫く前に立ってたけど、一向に起きる気配はない…あれ…?
もしかして…夢でも僕と逢ってくれてるのかな…?
それって、ものっすごく嬉しいんだけど!
でも…僕は沖田さんに明日のデート、お断りに来たんだもん…起きてもらわなきゃ…
僕が沖田さんの肩に手を掛けてゆさゆさと揺すると、ぴくりと震えて起き上がる。
「…誰でィ…折角良い夢見てたってェのに…」
物凄い殺気で、足が竦んで動けない…怖い…
沖田さんが、ずるり…とアイマスクを上げて僕を視界に捉えると、きょとんとする。
「…夢の続きですかィ…?新八くんが居らァ…」
僕が固まったまま立ち竦んでると、沖田さんがふわりと笑う。
あ…体が動く…
「…夢じゃ…ありません…こんにちわ、沖田さん。」
「こんにちわ。どうしたんでィ?待ちきれなかったのかィ?」
にこにこ笑って僕の手を引いて、ベンチに座らせてくれる。
優しい…
「…あの…明日の事なんですけど…」
「お?待ち合わせの確認ですかィ?明日は…」
「いえ、そうじゃなくて…あの…僕…明日行けなくなりました…」
「…へっ…?」
あからさまにがっかりした沖田さんに姉上の話をすると、はぁ―――っ、と溜息をつかれる。
…呆れられちゃったかなぁ…?
「姐さん絡みなら仕方ありやせんね…残念ですけど、また今度、って事で。」
えっ…?また今度…?
今度が有るの…?
「あの、沖田さん…今度って…」
「デート1回は、ちゃんとデートするまで有効ですぜ?逃げようったって…」
「…良かった…」
僕が、ほっと溜息をつくと沖田さんの目が大きく開く。
「…新八くん…?嫌だから逃げようとしたんじゃ…?」
あ…今、僕…さらりと言えた…?
今ならこのまま告白もさらりと出来るんじゃ無い!?
「あのっ!沖田さん僕っ…」
僕がぎゅっと沖田さんの手を握ると、沖田さんがはっと息をのむ。
行けっ!僕ぅっ!!今こそちゃんと沖田さんに…
「総悟ォォォォォォォォォ――――!!!!!」
そこいらじゅうに響き渡る土方さんの怒声。
なっ…折角今からっ…!
「おっとヤベェ。新八ィ、また今度電話しまさァ。」
じゃっ、と手を振って、沖田さんが走って行ってしまう…
そんなっ…折角…折角言えそうだったのにっ…
「お、新八じゃねぇか!いっ…今時間有るか…?良かったら俺と一緒に飯でも…」
頬を染めた土方さんが、僕にそんな事を言ってくるけど…
折角のチャンスをこの人が潰したんだ…思わずジロリと睨んでしまう。
「すみません土方さん、僕これから忙しいんでご遠慮します。」
…ちくしょー…涙出そう…
明日駄目になった分、告白出来なくてももう少しお話したかったのにっ…
「新八…涙目で見つめやがって…俺を誘ってんのかよ。まったく可愛…」
「んな訳あるかァァァァァァァァァっ!!!」
「照れんな。さ、行くか。」
「行かねーよっ!どうせアンタが食べてんのマヨ丼とかだろォォォォォォォ!?食えるかァァァァァァァァァ!!!」
引かれた腕を叩き落して、ダッシュで逃げる。
照れ屋だぜ…とか呟いてるけど、無視!無視ぃぃぃぃぃ!!
どこまでポジティブなんだ、アノ人っ…
すっかり忘れてたけど、土方さんと山崎さんも何とかしなくちゃぁいけなかったんだった…
でもまず沖田さんに告白だよね!
他の人から好きなんだって、なんて聞きたくないもんね!
そのまま走って家に帰ると、もう計画は全部決まってた。
…明日は忙しくなりそうだ…
次の日、計画通り僕らはインチキ宗教の本部に乗り込んだ。
銀さんがストレートヘアになったり、姉上と花子さんが捕まったりと色々大変だったけど、なんとかインチキ宗教を潰せたし、どさくさで花子さんのお金も取り戻せた。
いつまでもこんな所に居る事も無いんで、さっさと帰ろうとしたんだけど、銀さんが居ない。
神楽ちゃんと2人であちこち探すと、屋根の上で変なホクロの像に
「ドリームキャッチャー…」
とかやってた…何やってんだよ…良い大人が…それもパチンコで大勝って…
でも…もしかしたら………
神楽ちゃんに鼻で笑われながら銀さん達が下に降りていくんで、僕はこっそり上に登ってホクロの像に手をかざす。
「…ドリームキャッチャー…沖田さんに告白出来ますように…」
言っちゃったら何だか猛烈に恥ずかしくなってきた…
だから僕も慌てて2人を追って屋根を降りた。
つづく
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