次の日、神楽ちゃんと2人で銀さんを探す為に街に出る。
途中から、2手に別れてそれぞれ別の方向を探す。
心当たりの場所を片っ端から探すけど、どこにも居ない…

銀さん…どこに行っちゃったんだよっ…!

走り回って少し疲れたんで、丁度良く見えてきた駄菓子屋さんのベンチに座って一休みしていると、店の中から麩菓子を銜えた沖田さんが出てくる。

「…あ…」

「おっ、新八くんじゃねェか。銀の旦那の具合はどうでィ?」

「…沖田さん――――…」

沖田さんの顔を見たら凄く安心して、思わず泣き出してしまった…
だって…神楽ちゃんの前じゃ、僕がしっかりしなきゃいけないし…姉上には心配かけたくないし…

そんな僕を見た沖田さんが、慌てて僕の隣に座ってぎゅうと抱き締めててくれた。
そのままぽんぽん、と背中を叩いてくれて…その振動で、だんだん安心してきた…

「…落ち着いたかィ…?ほれ、麩菓子食いなせェ。」

袋から出した麩菓子を僕の口に突っ込むんで、サクサクと頂くと、麩菓子の甘さが心地良い。

「…すみません…沖田さんの顔を見たら、気が緩んで…ご迷惑おかけしました…」

「おう、良いって事よ。で?銀の旦那がどうかしたのかィ?」

「…実は…」

僕は、銀さんが記憶喪失になってしまった事、万事屋に宇宙船が突っ込んだ事、それを期に万事屋を解散した事、そして、そのまま銀さんがどこかへ行ってしまった事を、次々と話していった。僕が全て話し終わった後、沖田さんは神妙な顔をしていた。

「…ベタな御人でさァ…それにしたって、オメェらを置いて行くたァ…本当に記憶が無くなったんですねェ…」

顎に手を当てて、何か考え込む沖田さんに、1つ言って無い事が有る。銀さんが…僕に告白して、僕を迎えに来る、って言ってた事…

「…あのっ…沖田さん…」

「ん?何でィ?」

何故か…それは言ってはいけない気がして…僕は別の話をとっさに考える。

「真選組って、江戸中を見廻りしてるんですよね?銀さんを見かけたら、教えてもらう訳にはいきませんか…?」

僕がそう言うと、沖田さんがにっこりと笑って僕のほっぺたを撫でる。

「そんな心配そうな顔すんねィ。任せろィ、全隊士に連絡しておきまさァ。なぁに、あんな目立つ御人だ、すぐに見つかりまさァ。」

そう言って、今度は僕の頭をぽんぽん、と撫でる。
それだけで安心してしまうのは…相手が沖田さんだからなのかなぁ…?

「…有難う御座います…」

僕がお礼を言いうと、又にっこり笑って沖田さんは行ってしまった。


そのまま家には帰りたくなかったんで万事屋に行くと、そこには先に神楽ちゃんが居て…まさか、ずっとここで待ってたのかな…?机の上には酢昆布が山盛り置いてあった。

「神楽ちゃん、ここに来てたの?さっ、ウチに戻ろう?姉上も定春も待ってるよ?」

僕が色々言っても神楽ちゃんは動かない…

「ワタシぐらい待ってるネ。」

…僕だって…僕だって銀さんが戻ってくるの待ってるよっ…!
僕も山盛り有る酢昆布を1つ取って、ポリポリと食べる…と、神楽ちゃんが僕をボコった。

え!?何で!?

僕も神楽ちゃんに反撃すると、掴み合いの喧嘩になって…
ギャーギャーと騒いでると、お登勢さんが怒鳴り込んで来た。

「ここに住み込みで白髪の男が働き出したってよ。」

お登勢さんが渡してくれたのは、とある工場の有る場所の地図で…

僕らは走ってソコに向かった。


ソコに着くと、何故か真選組が沢山居て、何だか大変な事になっていた。
その工場の工場長がテロリストで、大砲で江戸の町を破壊しようとしているんだそうで…その前に、なんか邪魔した従業員を撃とうとしてるって…
って!アレ銀さんじゃんっ!!!

何かを考える前に体が動いて…神楽ちゃんと2人、銀さんを庇うように前に立ちはだかった。
そんな僕らに倣ったように、横1列に真選組も並ぶ。

…なんで沖田さん神楽ちゃんの隣に行くんだよっ…神楽ちゃんと楽しそうに喧嘩なんかしてさっ…

むかっとしたんで、隣に居た土方さんに当たる。

「なんなんスか一体。」

物凄く不機嫌な顔になっている僕に、土方さんはそれでもうっすら頬を染めて笑ってる…

「不本意だが、仕事の都合上一般市民は守らなきゃいかんのでね。」

…何かカッコつけてキメ顔してるし…知らないよ、僕リアクションしないからね!?

こっそり沖田さんの方を見ると、無表情のままじっと前を見てる…
僕の方は…全然見てくれない…仕方…無いよね…お仕事中だし…でも…なんだか悲しい…
俯いてしまった僕が顔を上げると、大砲は僕らを狙って居て…

ふんっ!当たるかよっ!!

全員で大砲に向かって走り寄ると、後ろから銀さんの声がする。

「新八、木刀もってきたろうな?」

「え、あ…ハイ…」

僕が答えると、後ろから来た風に木刀を持って行かれる…


銀さんっ!


誰よりも早く駆け抜けた銀の風が、いつもの木刀でそのテロリストの大砲を壊して僕らの方へ帰ってくる。
記憶…戻ったんだよね…?
じっと見守っていた僕らを通り越して、ズンズン行ってしまう…やっぱりまだ…

「帰ぇ〜るぞ。」

…!
…銀さんが戻ってきたっ!
銀さんだ…いつもダラダラしてて、糖尿一歩手前で、でも、誰よりも頼りになる銀さんだ…!

僕と神楽ちゃんは顔を見合せてにっこり笑って、走って銀さんを追いかける。
良かった…やっぱり万事屋はこうでなくっちゃね!

僕は、他に何も見えなくなって、銀さんの背中だけを追いかけてしまった………


つづく