本気でもがいても、山崎さんはびくともしなくて…

頼りなさげに見えてもやっぱり鍛えてるんだ…なんて感心してる場合じゃないよっ!!
焦ってもどうにもならなくて、ぼろぼろと涙があふれてくる。
泣いたってどうにもならないけど…止まらない…
僕の首筋や胸を滑る舌と唇が…気持ち悪い…

「やまざきさ…やめて…くださ…」

「新八くん…沖田さんとどっちがイイ…?俺の方が…上手いだろ…?」

「知らない…沖田さんと…こんな事…してない…沖田さんはこんな事しないっ!!」

嫌だ!気持ち悪い…こんなの全然気持ち良くなんかない…っ…
するすると僕の体を滑っていた山崎さんの手が、僕の股間を掴んだ時、限界を超えた僕は、その場で吐いてしまった。

「…新八君…そんなに俺が嫌なんだ…」

「…イヤ…です…」

僕が泣きながら言うと、スッと僕の上から立ち上がった山崎さんが、ふらふらと部屋を後にする。
すぐに僕は、枕に掛けていたタオルを丸めて吐瀉物の片付けを始める。
片付けをしていると、少し落ち着いてきた…山崎さん…なんであんな事…

色々考えていると、すぐにバケツを下げた山崎さんが部屋に帰って来た。

なっ…?

「新八君、顔洗ってきなよ。ここは俺が片付けとくからさ。」

山崎さんに押しやられて部屋を後にして洗面所で顔を洗う。
涙と吐瀉物でぐちゃぐちゃな顔を洗うと、気分もさっぱりした。
部屋に戻ると布団は綺麗になっていて…そして、山崎さんが正座していた…

「有難う御座います…」

「いや…俺…ごめん…」

気まずい沈黙が流れるけど…分かって…くれたよね…・

「あの…」

僕が話を続けようとすると、山崎さんがビクリと跳ねる。

「…本当にごめん!俺…帰るよ…」

逃げるように山崎さんが帰っていくけど…
分かって…くれたんだよね…?
僕が好きなのは…沖田さんなんだって…


山崎さんが分かってくれたんで、後は土方さんにお話しなくちゃと思って土方さんを探してみる。
でも…土方さん、意外と見付からないよ…
やっぱり副長ともなると忙しいのかなぁ…あんまり外廻りしてないのかな…?
そう思いながら歩いていると、後ろから声が掛かる。

「新八く〜ん!」

この声は…

「…山崎さん…」

この間のアレが有るから…顔を合わせるのは気まずいと思ってたけど…普通に声掛けてくれるんだ…

「どうしたの?買い物?」

僕が恐る恐る振り返ると、にっこりと笑った今迄通りの山崎さんが居た。
…やっぱり山崎さんは大人だなぁ…こんな普通にしてくれてるのに、僕が避けるのは悪いよね…
にこりと笑って頭を下げると、山崎さんも頭を下げる。

「今日は買い物じゃないんです。土方さんを探してて…」

「副長?見廻りしてるはずだけどなぁ…隊長と違うからサボってはいないし…」

腕を組んで首をかしげてる姿は、やっぱり今迄と変わらない。
僕がホッと溜息をつくと、山崎さんがまたにっこりと笑う。

「どうしたの?緊張しちゃってる?」

「…だって…僕は山崎さんに酷い事をしたのに…」

「あー…新八君は真面目だからなぁ。俺の方がよっぽど酷い事しちゃったんだよ?あの時は急ぎ過ぎちゃってごめんね。」

顔の前に手を出して謝ってくれると…ちょっとだけ気が楽になった。

…でも…あれ…?なんか今変な事言ったよね・・・?
急ぎ過ぎた、って…おかしくね?

「…あの…山崎さん…?僕が沖田さんとお付き合いしてて…山崎さんとはお付き合い出来ないって事は…分かって下さったんですよね…?」

不安になって確認すると、にこにこ笑ってた山崎さんがさらに笑う。

「うん、それは判ったけど…」

…けど…?

「でも俺まだ新八君の事諦めてないし。ああいう事はもっと親しくなってからじゃないとね!」

「イヤ、もう2度と無いしっ!」

僕が山崎さんを睨みながらはっきりと拒否しても、山崎さんはヘラヘラ笑ってまたまた〜!とか言ってる。

な…んだ、この人…

「沖田さんはあんなだし、すぐに新八君嫌になるって。その時が俺のチャンスだと思ってるからね。」

「嫌になんか、なりませんっ!」

「イヤイヤ、すぐだって。」

「なりませんっ!!!」

…誰かこの人に通訳してくれないかな…
ものっ凄く疲れたんで、土方さんを探すのは諦めて万事屋に帰ろうと踵を返して歩きだす。

「新八くぅ〜ん!すぐだからね〜!」

「無いですっ!」

振り返ると、ヘラヘラ笑った顔と目が合う。

…目だけは笑って無いのが…めちゃくちゃ怖い…

今度は振り返らないで、走って万事屋に向かった。


つづく