次の日買い物に行くと、帰りには大江戸ストアの前に沖田さんが待っていてくれた。
「沖田さん!」
僕が駆け寄ると、沖田さんはにこりと笑って荷物を持ってくれる。
「…有難う御座います…」
こういうさりげない優しさが好きだなぁ…
嬉しくなって、ニヤニヤが収まらない顔のまま後ろを歩いていると、沖田さんが振り向く。
「新八くん、俺達付き合ってんですよねィ。」
突然真面目な顔でそう言われるけど…
何…?
「はい。勿論です。」
「じゃぁ、何か違いやせんかィ?」
「は?何がですか…?」
沖田さんが何を言ってるのか分からない。
違うって何が…?
「イエね?呼び方でさァ。いつまでも『沖田さん』じゃぁ恋人って気がしやせん。」
「えっ…」
そっ…そう言う事…?
「俺は『新八』って呼んでやすぜ?」
「や…そんな…」
恥ずかしくって俯くと、沖田さんが僕の顔を覗き込んでくる。
うわぁー!もっと恥ずかしくなった!!
「なーなー言って下せェよ。」
「こっ…心の準備が…」
「新八ィー」
…そんな淋しそうな顔されても…
「なぁー」
そんな…総悟…だなんて恥ずかしいよっ…
「駄目ですかィ…?」
でもっ…そんな淋しそうな顔…させたくないし…
「…ごさん…」
「えっ…?」
「総悟さん…」
なんとかそう呼ぶと、目茶苦茶顔に血が上ってくる。
ちらりと沖田さんの顔を見ると、物凄く嬉しそうな顔…
「新八ィー!もっかい!もっかい!!」
「…総悟さん…」
「もっかい!!」
「もう…総悟さん!」
「あ!新八くぅーん!」
…凄く良い雰囲気だったのに…
なんでか凄いスピードで走ってた山崎さんが、僕らを見付けて立ち止まる。
今日は沖田さんが居てくれるから…大丈夫だよね…?
「…こんにちわ、山崎さん。」
「そんな、俺も『退さん』でいいのにー!今日も買い物?大変だねー」
「大丈夫です。沖田さんが手伝ってくれますから。」
僕が言いきって、ねー?と沖田さんを見ると、不満顔で膨れてる…
「新八ィ…又戻った…」
「あ…だって…」
「コイツらへの牽制の意味も有るんですぜ?」
僕らがぼそぼそと言い合ってると、山崎さんがにゅっと割り込んでくる。
「何?何?喧嘩?別れる?」
「別れませんっ!!」
僕が大声で言うと、耳を押さえた山崎さんがちょっと離れる。
「ホラ新八ィ、やっぱ油断ならねェだろィ?息の根止めてやらなきゃいけやせんぜ。」
「…でも…」
「なーなー!さっきは言ってくれやした!」
「さっきは…2人っきりだったし…」
引かないでずっと言ってくるけど…
やぱり恥ずかしいよ…
「山崎なんざ、そこらの石ころだと思いなせェ。」
「隊長酷い!」
「新八ィー!」
あぁぁ…頭混乱してきちゃったよっ!
総悟さん、僕が恥ずかしがってるの見て喜んでるんだきっと!
山崎さん煩いし…
「山崎ィィィィィィィ!あ…総悟お前もサボってんな!」
土方さんも煩いしっ!!
「もうっ!言えないって言ってるでしょ!総悟さんの意地悪っ!!名前でなんて恥ずかしくて呼べませんっ!!」
僕が叫ぶと、山崎さんと土方さんが固まる。
「…呼んでくれたじゃねェか。」
「えっ!?今僕…」
無意識で総悟さんって呼んじゃったの…?
お2人が居たのに…恥ずかしいよっ!!
「新八ィー!真っ赤になってかーわいいでさァ!こんな顔、他の奴になんか見せたくねェや。さっさと行きやしょうぜ。」
空いてる方の手で僕の手を掴んで、総悟さんが歩き出す。
いつもなら、土方さんや山崎さんに何か言われるのに、今日は何も言ってこない…ホントに牽制になったのかな…?
やっと諦めてくれたのかな…?
ちょっと期待して山崎さんと土方さんを見ると、さっきの姿勢のままピクリとも動かない…
「総悟さ…お2人の様子がおかしいんですけど…」
「大丈夫だろィ。放っときゃその内動き出すだろ?」
「そう…なんですかね…?」
そのまま手を繋いで歩き出すと、お2人が風に吹かれて飛んで行った…飛んでった!?
「総悟さん!総悟さん大変っ!!お2人が何処かに飛んでっちゃいましたよっ!!」
「おー、スゲー!山崎はともかく、土方さんまでそんなギャグオチが出来るたァ思いやせんでした。」
ふわふわと飛んで行ってしまうお2人を見送りつつ、手を引かれて歩き出す。
…ギャグオチ…なら大丈夫だよね…?
「これで俺達、恋人同士っぽいですかねェ?新八ィ。」
「…凄く…っぽいと思います…総悟さん…」
やっぱりまだそう呼ぶと照れるけど…
総悟さん、って読んだ時の嬉しそうな顔が凄く素敵だから…
恥ずかしいのは我慢しようと思いました。
つづく
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