「そうですよっ!総悟さんカッコいいし…モテるし…大人だし…今は居なくても、昔付き合ってた女の人が居たんじゃないかって…そう思いだしたら止まんなくって…っ…」
自分で言っててどんどん悲しくなってきて、グイグイと顔を意外と逞しい胸に押し当てる。
いつの間にか、くつくつという笑い声は聞こえなくなっていて、僕を抱きしめる腕に力がこもる。
「…そんな訳有るかィ。土方さんじゃあるめェし。俺ァ、ちゃんと好きになったのも、付き合ったのも新八くんが初めてでィ。」
聞いた事も無いような優しい声でそんな事言われると、思わず顔を上げてじっと顔を見つめてしまう。
そんな僕の目を見つめてにこりと笑う顔は、すっごく綺麗…
「大丈夫でさァ…俺だって新八君と一緒なんですぜ…?」
「え…?」
僕が聞き返すと、耳元に顔を寄せた総悟さんが、恥ずかしそうに声を潜める。
「俺も、ハジメテでィ。」
「そんな…総悟さんモテるのに…」
まだ信じられなくて僕が身体を離して見つめると、恥ずかしそうに微笑んだ総悟さんが肩をすくめる。
「俺ァ田舎侍ですぜ?そうそうモテやせん。」
そんな事…無いよ…
少なくとも僕にはモテモテなんだから…
「そう…なんですか…?」
「おう。何度も言わせんなィ…恥ずかしい…」
薄く色付いた頬なんて…初めて見たかも…
そのままそっと小首を傾げて、綺麗な顔が近付いてくる。
だから、僕はそっと目を閉じる。
本当…なんだよね…?
僕は信じて良いんだよね…?
そっと触れるだけのキスをして、ぎゅうと抱きあうと、その暖かみが不安な心に沁みてくる。
総悟さんがそう言うなら…僕は信じてれば良いんだよね…?
うっとりと総悟さんの体温を感じていると、後ろからオホンオホンと咳払いが聞こえてくる。
うわっ!
そう言えば、ここ、外…っ!!
慌てて後ろを振り返ると、そこには土方さんが居た。
「ひっ…土方さん…こんばんわ…」
「公衆の面前でイチャコラとは頂けねぇなぁ…総悟…」
「そーそー、羨まし過ぎなんだけど。新八くぅーん、さっきの隊長の発言嘘だからねー?」
山崎さんまで!?
…ってか…嘘って…
「…嘘、って…何ですか…?」
くるりと振り返って総悟さんに目線を合わせると、そっと僕から目を逸らした…
「…総悟さん…?」
「隊長はねー、初めてなんかじゃないよー?」
「……沖田さん…?」
僕が般若を背負うと、そーっと目を合わせた総悟さんが慌てだす。
「玄人のネーチャンだけでィ!俺ァオッサン達とは違いやす!!隠し子なんざ出来るようなヘマしやせん!!」
「ばっ…俺だって居ねぇよ!!」
「俺だってそんなヘマしないからね!新八君!!」
土方さんや山崎さんまで言い訳してくるけど、別に2人は僕には関係ないし。
それよりも、総悟さんが滅茶苦茶必死なのは…僕の事好きだから…って思って良いんだよね…?
綻んでしまいそうな顔をなんとか引き締めて、ジロリと睨むと総悟さんが言い訳を続ける。
「土方さんや山崎や万事屋の旦那みてェに爛れたレンアイなんざしてやせん!俺がゾッコンなのは、今も昔も新八くんだけでさァ!!」
「…絶対ですか…?これから先も…?」
「勿論でィ!!」
「…僕も…総悟さんだけです…!」
僕等がそっと抱きあうと2人が邪魔してくるけれど。
離れないようにぎゅうと抱きしめあって、僕はお互いのぬくもりを信じた。
つづく
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