そっと袋から出して頬に触れてみると、もう懐かしい低目の体温を感じる。
ボロボロと流れ落ちて止まらない涙もそのままに、ぎゅうと抱きつくと、沖田さんは少し痩せた気がする…
それでも大好きな人に触れているだけで、凄く安心して…更に涙が流れた。

「沖田さん…逢いたかったんですよ…?ずっと避けられてて…苦しくて…悲しくて…でも…嫌いになれなくて…辛いです…」

気絶したまま気が付かないのを良い事に、沖田さんの唇にそっとキスをする。
でも、やっぱり返事をしてくれないのが悲しくて…
ちゃんと触れられて、体温を感じて、懐かしい匂いに包まれても沖田さんから僕に触れてくれる事は無いし、あの優しい声も聞こえない。
それに、大好きな笑顔だって見る事は出来ない。
そんなの…よけいに辛いよ…
それでもこのままじゃ寒いから、沖田さんを僕の布団に寝かせて一緒に布団をかぶる。
まだ…寒いよな…

あ!

僕は、クリスマスプレゼントに用意していた、帽子と手袋とマフラーを沖田さんに着けてみた。
うん…やっぱり良く似合う…

「メリークリスマス、総悟さん…」

僕はそっと沖田さんに抱きついて、眠りについた。



突然屯所の自室に現れた近藤さんと姐さんに、俺ァ『新八くんの所に行け』とサンタの衣装を渡された。
近藤さんは、俺に命令だ、とまで言った。
それはきっと、素直になれない俺の為なんだろう。
でも、俺はもう今更あのコの前になんか出られない。
出られる訳が無い。
一時の感情で別れるなんて言っちまって、その後も許してくれてる新八くんを避け続けた。

でも、本当は、好きで…やっぱり好きで仕方ない。

だからと言って、今更…散々泣かせたあのコの前に、俺なんかがのうのうと出て行って良い訳が無い。
だから、折角の二人の好意を無駄にしても、俺は何も聞かなかったフリして寝間着に着換えて布団に潜り込んだ。
そうしたら俺ァでっかい袋に押し込まれて何処かに運ばれた。

その懐かしい匂いに、そこが新八くんの家だと気付いて…
暴れて逃げようとしたら、的確に急所を突かれて不覚にも俺は気を失ってしまった…

そして気付いてみると…

新八くんは、俺に抱き付いて、スヤスヤと眠っていた…

愛しくて愛しくて、夢にまで見た新八くん。
意識が無いのを良い事に、俺は抱き心地最高のその体を抱きしめた。

…あー…やっぱスゲェ安心する…

そのまま頭に顔を埋めて、そろりと近付いて柔らかい唇に口付けを落とす。
甘い甘いソレに、思わず暴走しそうになったけど、そんな事は出来ねェ。
俺は…

俺を抱きしめて離れないようにしている新八くんの腕をそっと外して、暖かい布団から抜け出す。
そうすると、きっと猛烈に寒いんだろうと思ってたってェのに、所々に触れている何かが俺を暖める。

頭と肩と手…

それぞれ探ってみると、頭には帽子、肩にはマフラー、手には手袋が着せられていた。

これァ…新八君が…?
俺の為に…編んでくれたってェのか…?
そう想っちまうと、心までが暖かくなる。

イヤ…まさかな…

未だに俺が新八くんに好かれてる訳が無い。
あんなに放っておいたってェのに。
ずっと避けてたってェのに。
もう…好かれてる訳が無い。

新八くんは優しいから…きっと、袋に詰められた俺を憐れんでくれたんだろう。

だから、布団に入れて、抱きしめてくれたんだろう。

いかな俺でもこれ以上迷惑はかけらんねェ。
このままそっと立ち去ろう。

…俺に掛けてくれてたこいつらは…きっと返した方が良い…でも…この暖かさまで手放すのは…ヘタレた俺には出来やしねェ。
だから俺は、肩に乗せられたマフラーをぐるりと首に巻いて、俺が詰められていた袋を持ってそっと立ち去…

持ち上げた袋から、ゴトリと何かが落ちる。
見慣れた包み紙と、見慣れたリボン…
近藤さん…なのか…?
何でコレ…知ってんだ…?

ソレは、俺が買っちまった新八くんへのクリスマスプレゼント…

街で見かけて、渡せる当ても無いってェのに買っちまった指輪…
蒼い石が俺の目ん玉みたいで…新八くんに持ってて欲しかった。
今更こんなモン、どうしようもねェってのに…
新八くんだって、貰ったって困るだろうに…

…まぁ、売り飛ばせばいくらかにはなんだろ…?
マフラーやらなんやらを強奪していくんだから、代金代わりにしてもらいやしょう。
そうしたら…コレ…貰ってっても…良いよな…

俺ァすやすやと眠る新八くんの枕元にその包みを置いて、もういっぺんだけその柔らかい唇に口付けた。



次の朝僕が目を覚ますと、アレは夢だったというように、そこに沖田さんは居なかった。
それだけで、いつもより寒く感じて身体がぶるりと震える。

やっぱりアレは夢で、僕が無断で着せた帽子やマフラーも、棚にしまったままになっているんだろう。
そう思っていつもの棚を覗いてみると、そこに有った筈のものは、無くなっていた。

…夢じゃ…無かった…?

あ、そう言えば沖田さんって意外と几帳面だったっけ…きっと僕の枕元にしっかり畳んで置いて行ったに違いない。
そう思って、恐る恐る枕元を確認してみると、そこには僕が沖田さんの為に編んだ物達は無くって…代わりにリボンを掛けられた小さな箱が置いてあった。

…何だろう…?
怒って帰ってしまったであろう沖田さんを見た近藤さんと姉上が、僕にせめてものプレゼントを用意してくれたのかな…?

そーっとその箱を手に取って開けてみると、それは凄く綺麗な蒼い石の付いた指輪で…
大好きな沖田さんの瞳の色みたいで…
そっと薬指にはめてみると、それは誂えたようにぴったりで…

…まさかこれ…沖田さんが僕に…?

なんて、有る訳無いか…
でも、この石を見ていると沖田さんに見つめられているみたいで凄く幸せな気分になれるから…

僕は有難くその指輪を頂く事にした。


つづく