そして、闘いへ
クリスマスが過ぎた頃から新八の薬指に指輪が光るようになった。
当然すぐに気付いてるのはきっと俺だけじゃ無いだろう。
だからって、『誰から貰った?』なんて聞けるほど気安いものじゃ無いだろアレ。だって左手の薬指だぜ?
でもやっぱり気になるから、ソレを横目でチラチラ見ると、どっかで見たような青い色の石が嵌った新八に似合う地味な指輪で…
多分…イヤ絶対沖田君に貰ったんだよアレ。
だって、たまにジッと眺めてニヤニヤしてるもん。
俺がサンタのジジイと色々大変な目にあってる間に頑張ったじゃね〜か沖田君。
散々焚きつけた甲斐が有ったんじゃね?
でも…
その割にはあのクソ生意気な姿、全然見ないんだけど。
おやつはどうしたおやつは!
もうすっかりヨリ戻したんじゃね〜の?
だったら、心配してやった俺に一言とか謝礼とかケーキとか有っても良いんじゃね〜の?
新八に…そんな暗いツラさせなくても良いんじゃね〜の…?
あ〜!仕方無ぇ!
このまんま年越すのも気分良くねぇし。
パチンコにも勝った事だし。
今日は奮発してスキヤキでもしてやるか。
「新八ぃ〜、今日の晩飯はスキヤキやんぞ〜」
「えっ!?ちょ…神楽ちゃーん!大変雨戸閉めて雨戸!!嵐が来るよっ!!!」
「ラジャー!」
俺の発言を受けて、血相を変えた新八と神楽が万事屋の戸締りを始める。
…俺は一体どう思われてんだよオイィ!
「オマエらふざけんなよ!人の話は最後まで聞けって〜の!!だ〜か〜ら〜、新八はちゃんと沖田君に声掛けろって話だよ。最高級の牛肉差し入れさせろよ〜?この俺が散々…」
俺がそう話を振ると、新八が急に俯いちまう。
…あれ…?
ヨリ戻したんだよな…?
「…銀さん…それは無理です…沖田さんとは僕もう全然逢えてませんし…逢えたとしても…僕と話なんて…」
俯いた新八の目から光るものが落ちる。
………マジでかァァァ!?
ヨリ戻して無かったァァァ!!
じゃぁその指輪はなんなんだよ!?
あれ?もしかして他の誰かに貰った?
でも新八の周りに他のヤツの影も無いぞ?
ってかじゃぁ俺めっちゃ地雷踏んだ…?
「あ…あれ?そうなんだ?あ、別に銀さん金の有る所にたかろうと思っただけだから!深い意味なんて無いからね?や〜、昨日パチンコで勝っちゃってさ〜、だから?久し振りに?オマエラにも肉食わしてやろうとか思っただけだから!コレ銀さんの優しさだから!さっ…さ〜て肉買ってこようかな〜…」
「…肉だけじゃなくて…野菜や豆腐も要りますからね…銀さんだけになんて任せておけませんから僕も行きます…」
「えっ!?しっ…新八も来んの!?」
「…僕が行っちゃいけませんか…?」
イヤ!ちょっと気まずいよ!!
この気まずさから逃げようと思ってめんどくせぇ買い物に行こうとしてんのに!!
「じゃっ…じゃぁ久し振りに皆で買い物行くか〜?」
「ワタシは行かないアル。だりーヨ。」
神楽ァァァ!
1人だけこの気まずさを逃れるつもりかァァァ!!
こういう時こそ家族皆でだなぁ…
「さっさと行きますよ銀さん。こっそり糖分買うつもりだったんでしょうけど、そうはいきませんよ。」
さっきまで泣きべそかいてた新八が、物凄く冷たい視線で俺を見てくる。
ちょ…!俺の真心は………まぁ、普通にしてんのが新八なりの気の使い方なんだろうな…
「へいへい。んじゃついでに米も買ってくるか。ヘルメット持ってけよ〜」
「はい!」
なんとなくいつもの雰囲気に戻った俺達は、スクーターで大江戸ストアまで買い物に行った。
結構な出費になっちまったけど、なんとな〜く新八も元気になったみたいだし?これはこれで良かったんだろうな…
「おい新八、コイツが安い豚肉だってのは神楽には秘密だからな。」
「分かってますよ。」
「ききわけが良いこって。その調子で1つぐらい何か糖分勝ってくれても良かったんじゃね?プリンとかさ〜…3連ので良いから…」
「買いましたよ。神楽ちゃんにもちゃんと分けてあげて下さいね?」
俺がゴネると呆れた感じで新八が言って来る。
はぁ〜、デキたおかんだこと。
「…銀さん僕に気を使ってくれたんですよね…この指輪…ですよね…」
「新八…」
そっと大切そうに新八がその指輪を撫でて、寂しそうに笑った。
「分からないんです…多分沖田さんがくれたと思うんですけど…もしかしたら近藤さんと姉上がくれたものかもしれません。2人は知らない、って言ってますけど。でも良いんです。僕はコレ、すっごく気に入ってるんですから。だってこの石…沖田さんの瞳と同じ色なんですよ?この石を見てると沖田さんに見つめられてる気がして…って気持ち悪いですよね!すみません!!」
一瞬、幸せそうに笑った新八の表情がまた曇ってしまう。
あ〜あ、俺で良いってんならいっくらでも幸せにしてやるんだけどなぁ〜
でも、そんな顔見せられたら…俺じゃないんだって嫌でも思い知らされる。
きっと神楽もそれが分かってるから動けないでいるんだろうな。なんだかんだでアイツも優しい娘だから。
ホント、沖田君さっさとなんとかしてやれよ!!
荷物を全部積み込んで万事屋へとスクーターを走らせていると、久し振りにブラブラと見廻りをしている真選組を見かけた。
随分と暖かそうじゃね〜かコノヤロウ…
当然後ろに座る新八も気付いたみたいなんでスクーターのスピードを緩めると、バシバシと俺の背中を叩く。
「痛ぇよ新八!折角なんだから沖田君と話してさっさとヨリ戻せよ!」
「だっ…駄目です!今は駄目です!!」
「はぁ?折角のチャンスじゃね〜か!最近は見かけてすらいなかっただろ。」
「でも!今は駄目なんです!あの人は素直じゃないから…今は絶対駄目なんです!!」
新八が言い出したら梃子でも動かないのを俺は知ってる。
なんで、俺は又スクーターのスピードを上げた。
「…コレ…やっぱり沖田さんだったんだ…僕のプレゼント…使って…くれてるんだ…」
新八がそう呟くんでそろりと後ろを覗き見ると、ここ最近じゃとんと見られなかった幸せそうな全開の笑顔を浮かべた新八…
仕方ない。
これはもう仕方ない。
青い帽子とマフラーと手袋でモコモコになったアイツを、又焚きつけてやる良い手立ては無いかと俺は本気で考えるのだった。
つづく
→