第1回チキチキかぶき町雪祭り ポロリもあるよ
結局大騒ぎになって終わった『第1回チキチキかぶき町雪祭り』
いつの間にか雪に埋まっていた僕も、その後皆で食べたお登勢さんが作ってくれた鍋に舌づつみをうって、それなりに楽しく過ごしたのでした。
流石に今日の仕事は休みになった姉上と2人、なんだかんだで楽しかった雪祭りの話をしながら連れだって家に帰ると、そこで僕らは思いもしないお出迎えをうけた。
「姉上、あれ…」
「あら、随分可愛いお迎えね…」
その姿に小さかった頃を思い出して、僕らは手を繋いでそれに駆け寄った。
恒道館道場の門前で可愛らしく僕らを出迎えてくれたそれは、沢山の雪うさぎ。
あぁ、懐かしい!
こんなに沢山ではなかったけれど、雪が降った日には必ず2人で作っていたっけ。
「可愛いですね!近所の子供達が作っていったんでしょうかね?」
子供の頃の自分達を思い出して微笑ましく雪うさぎ達を眺めていると、その周りに残された足跡に気付く。
これは…子供達…ではないよね…
どう見ても大人の、大きいのと中ぐらいの………ブーツの足跡………
「そうねぇ、子供には違いないわよね、中身は。意外と可愛い所有るじゃないの。」
そう言って優しい顔でクスクスと笑う姉上にも、この雪うさぎを作っていった2人がしっかりと分かっているんだろうな…
「そうですね。可愛い所があるんですよ、きっと。」
僕もクスクス笑いながら、その中に仲良く並んだ眠そうな目のうさぎと眼鏡をかけたうさぎを撫でてみる。
…温かそうだったんだけど、やっぱり冷たいや…
こんな可愛い贈り物、凄く嬉しいに決まってるけど…だけどやっぱり僕は温かな貴方に待っていて欲しかったなぁ…なんて…
きっと仕事があったんだよね…じゃなきゃ、大きい方は待ってない訳がない。
「寂しそうね、新ちゃん?」
僕の考えを見抜いたように、心配そうに姉上が顔を覗き込んでくる。
また心配かけちゃった…駄目だなぁ、僕は…
「…はい…ちょっとだけ…」
「だったら、たまには新ちゃんが強引になってみても良いんじゃない?…いつもだと困っちゃうけどね。」
イタズラっぽく綺麗に微笑む姉上が、ぽん、と僕の背中を押してくれる。
「姉上…」
うん、いつも待ってるだけじゃ駄目だよね!
今度は僕が…
早速駆け出そうとした僕の手を、恐ろしい力で姉上が掴む。
いででででで!!
「あ、でも今日はもう遅いから明日になさいね。こんな時間に狼に仔羊を差し出すほど優しくは無いのよ?私。」
うふふ、と笑った姉上の目は笑っていなかった。
そのまま姉上に引き摺られて門をくぐる。
それでも、足を進めながらももう1度振り返ると、可愛らしい雪うさぎ達とその周りにちらばる2種類の足跡が僕達を見送ってくれていた。
一瞬、青い帽子と青いマフラー、そして青い手袋の沖田さんが、白い息を吐きながら一生懸命雪うさぎを作っている姿が心に浮かぶ。
きっとそれは、少し昔にそこであった事…
心が温かくなって思わず顔が緩むと、隣からクスリと笑い声が聞こえる。
「きっと一生懸命だったのよね。折角来たんだから、もう少しだけ待っていてくれたら良かったのに…」
少し悔しそうな姉上の心には、雪うさぎを作る近藤さんの姿が浮かんだのかな…?
でも珍しい。姉上がそんな言葉をポロリと漏らすなんて。
最近一緒に何かを企んでる事が多いなぁ、なんて思ってたけど…まさか付き合ったりなんかして…
イヤイヤイヤ、ナイナイナイ!
姉上に限ってそんな事無い!!
保護者会!銀さんと3人で保護者会やってるに違いないですー!!
「そうですね、寒かったでしょうに…お茶菓子持参じゃなくたって、お茶ぐらいなら出したのに。」
「そうね、温かいコタツぐらいには入れてあげるわ。」
そう言い合って、クスクスと笑い合って、僕らは今度こそ家に入っていった。
そうだ、明日買い物に行ったついでに2人に駄菓子でも差し入れしよう。
可愛らしいお客様のお礼だって言って。
つづく
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