山崎日記。
○月×日 晴れ
今日はアノ狂乱の貴公子、桂小太郎のアジト(らしき所)に潜入した。
いつもは地味に徹しているオレも、今日こそは活躍したいものだ。イヤ、やってやるゼ!
…と思ったが、やっぱり副長・隊長の見せ場は作ってやらないとね。あぁ、なんて心配り。やるなぁ、オレ!
結局は桂には逃げられたけれども、残党らしき3人は確保した。
やっぱりスゲェ、オレ!俺が居ないとダメだね、真選組は。
○月△日 くもり
今日は残党らしき3人を、土方・沖田・オレで取り調べた。
なかなか口を割らない3人は、オレの一言で口を割ったゼ!
流石オレ!!
…でも、何か、あからさまに関係ないぞ?コイツら。歌舞伎町で営業している万事屋だそうだ。
まぁ、オレの情報網は既に素性を見破ってるけどね。
白髪の男は攘夷戦争の頃に白夜叉と呼ばれ、敵味方問わず恐れられていた坂田銀時。
ピンク髪の少女は宇宙最強の戦闘種族、夜兎族の神楽。
黒髪の少年は今は寂れているが、剣術道場の跡取…いや、今は道場主の志村新八。
…まぁ、坂田は今や全くその片鱗すら見せないマダオだし、他の2人はまだまだ子供だ。テロなんかやりそうもない。と、言うよりやってるヒマなんかない。仕事なさそうだもんな、万事屋。
もうそろそろ開放しても良いんじゃないかとオレが言い出そうとした時、少年がおかしな事を言い出した。
…沖田は女じゃないよ………
その台詞を聞いた途端、沖田の目がギラリと光り、少年は良い玩具だと認識された。
あーあ、可哀相に…
おかげで取調べが1日延びた。
オレにとばっちりが来なくなったんで良いけどね。
○月□日 晴れ
あれから沖田はなんだかんだ理由を付けて万事屋の少年・新八君を呼びつけている。彼は最悪な事に沖田に恋心を寄せているらしい。まだ女だと思っているようだ。…ニブイ子供だ…
新八君とは何回か話をしたが、彼にはどうもオレに近いものを感じる。その上素直で良い子だし…何か可愛い…隊士の中でも最近人気急上昇。ファンが増えている。かくいうオレもその1人だ。
あの可哀相な子供を助けてあげようと思った。
……出来る範囲で…
○月☆日 晴れのち雷雨
今日の真選組の飲み会で沖田は新八君に自分は男だとバラすつもりらしい。ニヤリと笑いながら、そこら中の隊士に触れ回っている。
あんな良い子供が傷付くかと思うといたたまれないが、そろそろ知っておいた方が良いかもしれない。このままだと告白しかねない勢いだし…告っちゃった後でバラされるよりはましだろう。
しかし、新八君は本当に良く出来た子だ。気配りも出来るし料理も上手い。
なんとか助けてやりたいけどとばっちりは御免だ。
オレが忙しくしてちょっと気を抜いた隙に、酔った沖田が新八君の手を取ってパンツの中に入れるという最悪なバラし方で性別をバラした。新八君は悲しい目をして何処かを見た後、前のめりに倒れた。よりによって沖田の腕の中に。
オレが颯爽と駆け寄って別室へと連れて行こうとしたが、酷く慌てた沖田が姫ダッコで自室に連れ込んだ。
何をするつもりかとオレも慌てて踏み込むと、新八君を布団に寝かせたまま、ただオロオロと動物園のクマのように歩き回っている沖田が居た。
…アレ…?この人…
オレが洗面器とてぬぐいを持って彼の部屋に戻ると、冷やせば良いと思ったのか、何処からか持ち込んだらしいうちわで新八君の頭を一心不乱に扇いでいた。
あぁ、そういう事か。
いつもは恐い一番隊隊長の弱みを見つけてしまったオレは、ココにこっそりメモっておこう。
沖田隊長は万事屋の新八君に惚れている、と。
△月×日 晴れ
最近総悟の様子がおかしいから動向を探ってくれ、お願いだ。やっぱり頼れるのはオマエしかいないよ山崎と、瞳孔開きっぱなしの土方に頼み込まれたので、沖田の行動を1日つけてみる。
ヤツはいつものようにダラダラとサボリつつ仕事をしているようだ。
昼を過ぎて少しすると、だんだんソワソワして時間を気にしている。
…何か有るな…コレは監察であるオレだからこそ判る事だ。
2:30をまわると、オレは信じられないモノを目撃した。アノ沖田が、にっこり、と微笑んだ!?ニヤリではなく、にっこり、だ!!そんな顔出来るのか!?マジか!?
ヤツはさりげなく仕事を抜け出して、どこかへ向かう。
途中菓子屋に寄って何か購入した。
…かすていら…?おやつの時間か…?
そのままふらりと何処かへ向かった。
気配を消して付いて行くと、向かう先は古びた道場…新八君の家じゃないか。
呼び鈴も鳴らさずに、すたすたと入っていったので、オレは床下に忍び込む。
…あぁ、そういう事か。
2人は楽しげに会話しつつ、おやつを食べている。なんだ、順調に仲良くなってるんだ。
ありのままを報告すると、土方は複雑な顔をして礼を言った。
まぁ、そんなもんだろう。
オレとしては2人の邪魔をしたい所だか、そんなに上手くいく訳が無い。せめて振られた沖田に八つ当たりされないように気を付けようと思いました。
つづく
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