(そりゃ…いるよ、ね………恋人くらい)

寒さが、目にしみた。


「へぇぇ〜見てみてぇな」
「どうせ不細工アル」
「テメェよりはるかに美人だ。鏡見ろブスチャイナ」

沖田はそう言い残すと、銀時からケーキを貰い、元来た道を歩いていった。


新八は二人に気付かれないように目頭に溜まった涙を拭うと、先程以上に明るく振る舞った。

「…さぁ!銀さん、神楽ちゃん!あとちょっとだし、さっさと終わらせましょ!!」
「はいよ―」
「さっさと終わってコタツ入るアル!」

そして再び、三人の声が商店街に響き渡った。








ケーキは見事に完売。
ボーナスも貰えた三人は家路へと急いだ。

帰り、万事屋でクリスマスパーティーをしようかと言う話になり、ノリノリの銀時と神楽だったが、新八はどうも楽しめる気分ではなく、家でお妙が待っていると嘘を付き、一人自宅へ向かった。



(今日はクリスマスで、久しぶりにお給料も貰えて……)

なのに楽しめないのは、沖田のせい。

(ま…初恋は叶わないもんだし……)

溢れる涙を抑えながら自宅へ歩く。


そろそろ玄関が見えてくるだろう所で、新八は自宅の前にたたずむ人影に気付いた。



「…お、きたさん…?」
「よォ新八くん」

急いで自宅の前へ駆け寄れば、そこにいたのは数時間前に別れたばかりの沖田だった。
いつからそこにいたのかわからないが、先程見た時より頬は赤い。

「な、何してんですか!こんな寒い中!」
「新八くんをお誘いにあがりやした」
「え?」
「…ケーキ、一緒に食べやせん?」

そう言って、沖田は新八の前に先程買ったケーキの箱を差し出した。

「…え?あ、だって…このケーキ……」
「“好きな奴”と食べたいんでさァ……一応告白なんですがねィ」

寒さなのか、そうじゃないのか…沖田の頬は更に赤く、ケーキを持つ手は震えていた。

信じられない、といった表情をした新八だが、ちょっと前に拭った涙と違い、次は嬉しくて涙が溢れた。

「……寒いんで…中、入りません?」
「………それは俺のいい風に解釈していいんですかィ?」
「………は、い…」

新八の頬も更に赤く染まる。

そんな新八の頬に軽くキスを落とし、沖田はケーキを持ったまま新八にかぶさり、抱き締めた。


「最高のクリスマスプレゼント、貰えやした」
「僕も、です」







今日から二人は
幸せな恋人同士。

メリークリスマス。