「…」
暫く新八の髪を弄んでいた沖田は、意を決したように、ベッドに体重をかけた。
ギシリ。
古めのベッドが軋む。
沖田は仰向けで寝入っている新八の顔の両横に両手を置く。
ギシリ。
新八の顔に顔を近付ける。
緩く、僅かに開いた唇から寝息が聞こえた。
その唇に自分の唇を寄せ、一瞬だけ触れた。
想像よりも柔らかなその感触に、頭がクラリとして、また触れたくなった。
(酔ってるみてェ)
少しずつ、触れるだけのキスを繰り返す。
それも段々物足りなくなって、完全に唇を塞いでみた。
触れては離れのキスとは違い、新八の唇から、ぬくもりと感触とがダイレクトに届く。
「ん…ッ」
呼吸のし辛さに、新八が身じろぐ。
が、キスに夢中になっていた沖田は気付かず、また何度もキスを繰り返していた。
「う…?」
新八が目を覚ました、が、視界は何だか茶色っぽいフサフサに覆われ、口の辺りには何かがくっつき、むにむにと動いている。
「ちょ、何…ッ!」
慌てて自分の上の物体をはがして見ると、沖田の整った顔が少し赤らみ、どことなくうっとりとした表情で自分を見下ろしていた。
「お、沖田さん…」
唇が熱い。
自分はずっと彼にキスされていたのだと察して、新八の顔に熱が集まる。
「キス、嫌でしたかィ?」
混乱したままの新八に、沖田が少しうわずったような声で尋ねた。
「え、」
眠くて良くは分からなかったが、何だかひどく温かくて、気持ち良かったのは覚えていた。
だが、混乱した頭ではそれらの情報が整理出来ず、黙って沖田を見上げているしか出来なかった。
「新八が好きなんでさァ。友達とかじゃなくて、こういうのするような」
再び顔が近付き、新八は思わず目をギュッと閉じた。
「逃げないんで…?」
息がかかる距離で、低く聞こえる声。
恐る恐る目を開ければ、沖田の綺麗な顔が見えた。
「新八が俺を好きになってくれたら、俺ァアンタのもんになる。ね、それじゃあダメですかィ?」
(まるで犬みたい。拾って欲しくてしっぽ振って…ああ、何考えてるんだろ、僕)
「沖田さんが、僕の?」
「そう」
「全部?」
「全部」
話している間も、新八の顔中にキスを降らせる沖田がなんだか可愛くて、新八は思わず沖田にキスを返していた。
「…!」
「じゃあ、沖田さん、僕のですね」
本当に酔ってるみたいだと新八は感じていた。
恋の自覚なんて、あっけないもんだなぁとやたら他人事のように思う。
そう、自分はとっくに彼が好きだったのだ。
ただ、彼のようには出来なかっただけ。
笑う新八を力いっぱい抱き締めると、やわやわと抱き返してくる新八の腕を背に感じた。
深く重なる唇が熱くて、堪らなかった。
この腕も熱も皆君にあげるから、だから、
一緒に恋に溺れましょう。
終
お題配布元
確かに恋だった
礼
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